事故から15年 線路高架化に時間がかかる理由 東武線の「竹ノ塚」踏切除却まであと一歩

竹ノ塚駅付近で連続立体交差事業が進行し上下急行線の高架化完了 踏切事故から15年

記事まとめ

  • 東武スカイツリーラインの竹ノ塚駅付近で、踏切除去のための連続立体交差事業が進行
  • 2005年に踏切を横断していた4人が電車にはねられ死傷するという痛ましい事故が発生
  • 事故から15年を経て、複々線のうち上下急行線の高架化がようやく完了する

事故から15年 線路高架化に時間がかかる理由 東武線の「竹ノ塚」踏切除却まであと一歩

事故から15年 線路高架化に時間がかかる理由 東武線の「竹ノ塚」踏切除却まであと一歩

工事が進む竹ノ塚駅付近の高架橋(画像:東武鉄道)。

東武スカイツリーラインの竹ノ塚駅付近で、踏切除去のための連続立体交差事業が進行中です。事故から15年、複々線のうち上下急行線の高架化がようやく完了しますが、なぜ連続立体交差事業には長い時間を要するのでしょうか。

「開かずの踏切」対策であえて手動制御だった

 東武鉄道の東武スカイツリーライン(伊勢崎線)竹ノ塚駅(東京都足立区)付近で、上りの優等列車が走る急行線が2020年9月26日(土)から高架線に切り替わります。下り急行線は既に2016年5月に高架化しており、複々線のうち急行線部分の高架化が完了することになります。今後は駅舎の建設と、主に普通列車が走る緩行線部分の高架化に着手し、2021年度の踏切除去と2023年度の事業完成を目指して工事を進めるとしています。

 この区間が高架化される契機となったのが、2005(平成17)年3月15日に竹ノ塚駅南側の「伊勢崎線第37号踏切」で発生した、踏切を横断していた4人が電車にはねられ死傷するという痛ましい事故でした。この踏切は緩行線2本、急行線2本に加え、駅の南西にある東京メトロ竹ノ塚検車区につながる連絡線の計5本の線路を横断しており、ラッシュ時は頻繁に列車が行き交うため「開かずの踏切」として知られていました。東武鉄道は当時、踏切の遮断時間を短縮するためにあえて踏切を自動制御化せず、踏切保安係がタイミングを見計らって手動で開閉する運用をしていましたが、係員が列車の接近を失念したまま遮断機を上げてしまったことが事故の直接的な原因でした。

 足立区は地元住民の強い要望を受け、事故から6年後の2011(平成23)年3月、竹ノ塚駅を含む西新井〜谷塚間約1.7kmの高架化を都市計画決定し、翌2012(平成24)年に着工しました。鉄道の高架化や地下化による踏切除去(連続立体交差事業)は、それまで東京都が主体となって行われてきましたが、東京都は多くの事業を抱えることから、順番を待っていては着工が遅くなってしまうとして、初めて特別区が主体となって実施することになりました。それでも事故発生から事業化の決定まで6年、着工から踏切の除去まで9年の時間を要しています。

なぜ連続立体交差事業には長い時間がかかるのか

 連続立体交差事業には、踏切の除去による交通渋滞と踏切事故の解消、線路により分断されていた市街地の一体化、新たに生み出される高架下用地の活用など数多くのメリットがあるにもかかわらず、実行が困難であったり、長い時間がかかったりするのはなぜでしょうか。

 ひとつは予算上の制約です。竹ノ塚駅付近の連続立体交差事業では、約1.7kmの高架化に要する総事業費は約540億円で、東武鉄道が16%、東京都と足立区が84%を負担しています。都市側の負担分の2分の1についてはガソリン税・自動車重量税などを財源とした国からの補助によって賄われますが、財源には限りがあることから、事業を進める上で最大の制約となります。

 また沿線住民との合意形成にも時間を要します。連続立体交差事業自体は住民にとっても非常に有益である一方、用地確保のために立ち退きが発生する他、高架化による日照権の侵害や騒音の拡大、あるいは地下化による地下水への影響など、環境問題に発展することも少なくありません。実際、小田急小田原線の高架化をめぐっては、地下化を要望する沿線住民が事業認可の取り消しを求めて国を提訴する事態に発展しました。こうした事態を避けるためには、事業化の前段階として都市計画決定や環境影響評価、事業手法の確定などの準備作業を行うことになっています。

連続立体交差事業 JR・私鉄問わず東京都内あちこちで進行中

 もうひとつが鉄道を運行しながら線路を切り替えなくてはならないという工事上の制約です。竹ノ塚駅の工事の場合、まず駅の一部を取り壊して下り急行線を高架化し、次に駅舎を地下に移設して上下緩行線と上り急行線を仮線に移設。そして、空いたスペースに高架橋を建設し、下り急行線を高架化しました。この後、高架駅を建設し、上下緩行線と駅舎を移設して高架化を完了します。これらの工事は鉄道を運行しながら行うため安全上、本格的な工事は夜間しかできません。

 また竹ノ塚駅付近の場合、鉄道用地に比較的余裕があったので、最低限の用地買収と道路の付け替えで工事を行うことができましたが、通常は仮線に切り替えるための用地を線路に沿って取得する必要があり、その取得に時間を要するケースもあります。広い用地を確保できない場合、上下線を一度に高架化することができず、線路をひとつずつ切り替えながら工事を行わなくてはならないため、工期が長くなってしまうのです。

 近年、東京近辺で行われた連続立体交差事業を見ても、JR中央本線の三鷹〜立川間約13.1kmの高架化では事業完了まで18年間、京急電鉄の京急蒲田駅(大田区)付近約6.0kmの高架化では16年間、京王電鉄京王線調布駅付近約3.7kmの地下化では12年間と、いずれも完成まで非常に長い時間がかかっていることが分かります。

 1959(昭和34)年以降、都内では連続立体交差事業にともない合計395か所の踏切が除去されてきましたが、依然として1000か所を超す踏切が残っています。現在、東京では竹ノ塚駅付近の高架化の他に、京王線の笹塚〜仙川間、京急本線の泉岳寺〜新馬場間、JR埼京線の十条駅(北区)付近など、7区間で連続立体交差事業が進行中です。鉄道と道路の安全を求めて、地道な取り組みが続きます。

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