自衛隊ヘリの「アシ回り」どう決まる? 雪でもないのにスキー装着のワケ

自衛隊ヘリの「アシ回り」どう決まる? 雪でもないのにスキー装着のワケ

スキーを履いた陸上自衛隊のAH-1S対戦車ヘリコプター。スキッド(着陸装置)に平板のようなものが増設されている(柘植優介撮影)。

雪積もる山岳地から洋上の海面まで、ヘリコプターは様々な所で運用できるよう発展してきました。とはいえ、それらの場所で運用するためには相応の装備が不可欠な場合も。なかには、雪山でもないのにスキーを履いて飛ぶこともあります。

航空機にスキーを履かせる意味

 人間は積雪地の移動にかんじきやスキーを履くことがありますが、飛行機(固定翼機)やヘリコプター(回転翼機)もスキーを装着することがあります。

 理由は人間と同様で、そうすることにより雪面などで離着陸しやすくなるというメリットがあるからですが、飛行機とヘリコプターでは若干、ニュアンスが異なります。飛行機は離着陸時に滑走する必要があるため、まさにスキーのような意味合いが強いものの、ヘリコプターは垂直離着陸のため、滑走というよりも沈み込みを抑えるために装着します。

 よってヘリコプターの場合は、スキーのように滑るというよりは、かんじきを履くイメージといえるでしょう。スキーを装着することで接地圧を低減できるため、雪面以外でも使用されることがあります。最近では御嶽山噴火(2014年)の災害派遣時に、降り積もった火山灰の上へ降りるため、車輪式のCH-47J「チヌーク」輸送ヘリやUH-60JA「ブラックホーク」多用途ヘリが使用し、捜索活動に寄与したことがあります。

 このヘリコプターに用いる接地圧低減のための、いわゆるスキー、運用者によって呼び方が異なるようです。ヘリコプターを自衛隊で最も多く運用しているのは陸上自衛隊ですが、部隊によって「スノーシュー」「雪ゾリ」「スキー」と呼び名の傾向が違います。

スキー着けるか否かは運用環境の違い

 しかしながら、陸上自衛隊と同じくヘリコプターを多用する海上自衛隊や海上保安庁では、スキーを付けた機体はほとんど見られません。おそらく、これら2機関のヘリコプターは、基本的に基地や艦上での運用を想定しているのに対し、陸上自衛隊は野外(野戦)での運用も考慮しているからだと思われます。

 ちなみに航空自衛隊のヘリコプターは、運用こそ海上自衛隊と同じく基地を拠点にするものの、積雪の多い山頂に位置するレーダーサイトなどで離着陸する必要性から、スキーを履きます。こんなところにも運用環境の違いが表れているといえるでしょう。

 スキーの装着は着陸装置の車輪方式、スキッド方式により難易度が変わります。車輪方式の場合は車輪も使えるようにしつつ装着するので構造が少し複雑で装着に1日から2日ほどかかるのに対し、スキッド方式の場合は半日ほどで装着できるそうです。

 なお日本国内の車輪方式のスキーで少し変わっているのが自衛隊の保有するUH-60Jです。この機種ではホイストによるレスキューも考えられているので、スキーを折り畳むことができます。

水に浮くヘリコプター 驚きの構造とは

 地面や雪面と違って水面に着水する場合、浸水沈没というリスクが伴います。そのため、常時離着水可能な、すなわち積極的に水面に降り離水できる仕様なのか、それとも非常時に救助が来るのを水面で待つだけ、すなわち1回きりでよいのかにより、機体構造やフロートシステムに違いが出てきます。

 日本国内で積極的に着水できる機体として代表的なのが、陸上自衛隊や航空自衛隊で使用するCH-47J「チヌーク」ヘリコプターです。陸上自衛隊や航空自衛隊では湖や近海で離着水訓練を実施しています。

 アメリカ軍では着水したのち後部扉を開いてゴムボートの出し入れなども行っており、さながら強襲揚陸艦のようです。

 一方、積極的に着水するのではなく、あくまで非常時に、最終手段として着水できれば良いという際に用いられるのが、膨張式のフロートです。

 代表的なのは海上保安庁のヘリコプターで、全機種においてフロートを装備しています。海上保安庁ではフロートを「emergency float」略して「エマフロ」と呼んでおり、そこからもあくまでも緊急時を想定したものであることが伺えます。取り付け方法は機体サイズに余裕のある場合は機体に内部に収容するか、スキッドに取り付けます。

 なお陸上自衛隊のヘリコプターでも、沖縄配備のUH-60JAは洋上飛行が多いため、緊急時を想定して膨張式のフロートが装備されています。また要人空輸用のEC-225LPヘリコプターにも安全性を高める目的から装備されています。

 ヘリコプターは垂直離着陸できる航空機ですが、滑走路を必要としないぶん、様々なところに降りられるよう進化もしているのです。

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