ANA「紙の時刻表」なぜ今やめる? その理由とは フクザツな胸中も 担当者に聞くウラ話

ANA「紙の時刻表」なぜ今やめる? その理由とは フクザツな胸中も 担当者に聞くウラ話

ANAの飛行機(恵 知仁撮影)。

ANAが冊子型の「時刻表」をやめ、オンラインに移行します。なぜ今このような決断をしたのでしょうか。プロジェクトの中心となった担当者を直撃。業務を進めるうえでの葛藤や、新型コロナの影響など、裏話を聞きました。

きっかけは「355日前から航空券を購入できるようになったこと」

 ANA(全日空)が紙媒体での「時刻表」を、2020年12月1日〜2021年1月31日の掲載期間で終了し、2021年2月上旬から、ANAアプリやスマートフォンから利用できるオンライン時刻表へ移行します。海外では一般的になりつつある時刻表のオンライン化ですが、日本では先進的な取り組みとなります。

 なぜこのタイミングで、約66年の紙時刻表の歴史に幕を閉じ、オンライン化に踏み切ったのでしょうか。プロジェクトの中心となったANAのマーケティング室レベニューマネジメント部の木下さおりさんと近藤美穂さんに話を聞くことができました。

――どうして紙の時刻表からオンラインに移行することになったのでしょうか?

木下さん:きっかけのひとつとしては、航空券の購入が出発の355日前までできるようになったことです。最近は、1年ちかく先までお客様が航空券を購入できるようになったにもかかわらず、冊子型の時刻表では直近2か月ぶんのダイヤまでしか公開されませんでした。またANAの場合は、需要に応じ使用する飛行機の機種などを変更することがあります。こういった機材の変更などの情報をタイムリーかつ正確に時刻表に反映できるようにしたい……というのがオンライン化の狙いです。

 プロジェクトのなかでANAをご利用のお客様を対象に行ったアンケートでも、「スケジュールを確認する際には、ウェブやアプリを利用する」という意見が多く、冊子型の時刻表については、ご利用のお客様がとても少なく、なかには存在を知らない方もいました。私たちも「時刻表はANAの商品カタログでとても大切なものだ」と入社以来、教育を受けていましたので、このプロジェクトを担当すると決まったときには、冊子型時刻表を廃止していいのか」という寂しさや迷いもありましたが、「お客様にとって最新の正しいものを提供する」という観点から、オンラインシフトしていく方向になりました。

近藤さん:冊子時刻表の作成部署であるレベニューマネジメント部のダイヤチームを中心に2019年夏ごろから議論を始めました。「冊子時刻表はどうあるべきか」を含め、メンバー間でさまざまな意見をかわし、お客様にどのようにダイヤ情報をお伝えするかを、時間をかけて議論を重ねました。

「オンライン時刻表」の強みとは?

――紙の時刻表のニーズは、現在どのようなところがあるのでしょうか?

近藤さん:かつては駅をはじめ、さまざまなところに置かれていたのですが、現在の入手経路は、空港や旅行代理店など限られたところです。ときには、地上係員がお客様対応する際に使用することもあるようですが、いまでは、空港の地上係員はiPadで最新の時刻情報をもとにお客様の対応することが一般的です。

――オンライン時刻表はどのような強みがあるでしょうか?

木下さん:先述のこれまでの冊子型時刻表以上にタイムリーに反映できる」というのはもちろんですが、ポイントとしては「お客様へのわかりやすさ」を重視したところでしょうか。パッとお客様が見たときに、冊子型時刻表をご覧になっていた方にとっても、親和性の高いものとなっています。

 また、自宅からほぼ同じ距離に複数の空港があるようなお客様が「どこから乗ればいいのか」と迷われた際にどのような選択肢があるかを地図から選ぶこともあるほか、乗り継ぎ便を使われる方もいらっしゃいますので、地図上で選んで、どのように飛んでいくのかを検索できる「ルートマップ機能」を追加したのもポイントです。

近藤さん:オンライン時刻表は、スマートフォンから利用していただくことも想定しています。パソコン、スマートフォンそれぞれに適したデザインに仕上げているというのも特徴です。「ルートマップ機能」は、ANAのネットワークを視覚的に感じていただけるつくりとなっています。「目的地が決まっていないけれど、どこに行こうか考えている……」といったお客様が、時刻表から渡航地に思いを馳せて行き先を決めるといった使い方もできるのかなと思います。

コロナとの関係は? 実はあった葛藤や苦労

――オンライン時刻表の立ち上げに、新型コロナウイルス感染拡大などの影響はあったのでしょうか?

木下さん:先ほどもお話しましたが、時刻表をオンライン化させるというプロジェクトは、新型コロナがきっかけではありません。ただ、新型コロナの感染拡大につれて、結果的には、衛生面の観点から冊子型よりはオンラインの方が接触回避につながる……といったメリットも出てきました。

近藤さん:冊子時刻表からオンライン時刻表への移行を決断しましたが、このコロナ禍で、オンライン化の流れはより加速していると実感しています。

――時刻表をオンライン化させるときの苦労などはありましたか?

木下さん:このオンライン時刻表は多言語対応しているのですが、外国語は、文字数が多くなり長くなってしまうなど、実際にオンライン化をするには、小さなことから大きいことまで数多くの調整も必要になります。また、ウェブでの「空席照会」などと差別化しながら、多様なニーズに応えるようにしなければなりませんでした。

近藤さん:お客様にとって利便性の高い時刻表にするためにデザインなど情報の見せ方を考えるなかで、冊子時刻表に慣れ親しんだ部分もあって、新たな視点で考えてみるという、切り替えは少し苦労しました。

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 なお、インタビューに答えてくれた2人によると、オンライン時刻表では「実は、印刷して持ち運びすることも前提に、その機能をつけたうえで、レイアウトもきれいに収まるようデザインしています」と、“紙派”へのケアもされているといいます。

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