地下鉄に乗り入れなくなった関東大手私鉄車両 想定しながら乗り入れてない車両まで6選

地下鉄に乗り入れなくなった関東大手私鉄車両 想定しながら乗り入れてない車両まで6選

多摩線を走行する小田急電鉄1000形電車(2020年、伊藤真悟撮影)。

東京メトロや都営地下鉄に乗り入れる大手私鉄では、自社で乗り入れ対応可能な車両を用意しています。しかし、いまでは地下鉄に乗り入れなくなった車両や、乗り入れを想定しながらも乗り入れたことがない車両が存在します。

乗り入れなくなった理由はさまざま

 2021年3月現在、相模鉄道を除く関東の大手私鉄は東京メトロや都営地下鉄に乗り入れており、それぞれの会社で地下鉄への直通運転に対応した車両を保有しています。

 しかし、いまでは地下鉄に乗り入れなくなった現役車両があるほか、そもそも乗り入れを想定して製造しながらも乗り入れることがなかった車両も存在します。その理由はさまざまです。ここでは主だった車両を挙げていきます。

後継車両の登場で乗り入れなくなった例

 地下鉄乗り入れ用として使用したものの、後継車両が登場したことで乗り入れを終え、いまでは自社線内で使用している例です。

小田急電鉄1000形電車

 小田急電鉄の1000形電車は、営団地下鉄(現・東京メトロ)千代田線乗り入れ用の9000形電車に代わる車両として1988(昭和63)年に登場した車両です。小田急初のステンレス車両で、VVVFインバータ制御方式を本格的に採用した車両でもあります。

 同年3月22日より小田急線内での営業運転を開始、1989(平成元)年3月27日より千代田線との乗り入れを開始。翌年の1990(平成2)年3月27日のダイヤ改正で9000形の地下鉄乗り入れが終了し、1000形のみが千代田線に乗り入れるようになりました。

 当初、千代田線に乗り入れる1000形は、小田急線内での分割・併合を考慮した6両+4両の編成でしたが、1992(平成4)年から1993(平成5)年にかけては10両固定編成も登場しています。ちなみに、1991(平成3)年には1000形のワイドドア車も登場していますが、こちらは千代田線乗り入れ用のATC(Automatic Train Control=自動列車制御装置)は搭載しなかったため、千代田線へは乗り入れていません。

 1000形に統一された千代田線乗り入れ車両でしたが、小田急電鉄では千代田線乗り入れ車両の10両固定化を行うため2007(平成19)年に4000形電車を導入。同年9月29日より千代田線への乗り入れを開始し、1000形の6両+4両の地下鉄乗り入れは終了。さらに4000形の増備により1000形の10両固定編成も2010(平成22)年に乗り入れを終了し、1000形は現在、小田急線内(一部は箱根登山鉄道)で使用されています。

 大手私鉄ではありませんが、JR東日本の車両にも同様な例があります。それが常磐線各駅停車用として投入した209系1000番台です。こちらも後継車両のE233系2000番台が登場したことで余剰となり、中央線快速電車用に転用されています。

ホームドア非対応で乗り入れなくなった例

 昨今、ホームドアの導入が各鉄道会社の駅で進んでいますが、これにより地下鉄に乗り入れなくなった車両です。

東武鉄道9000型電車(第1編成)

 東武鉄道9000型電車は、営団地下鉄(現・東京メトロ)有楽町線乗り入れ用として製造した車両です。

 9000型の第1編成は1981(昭和56)年11月に試作車として登場しました。東武初のステンレス車両です。当時はまだ有楽町線と直通運転を行っていなかったため、同年12月28日から東上本線内で営業運転を開始しています。1987(昭和62)年8月25日の有楽町線営団成増(現・地下鉄成増)〜和光市間の開業にあわせて量産車(第2編成〜第7編成)が登場し、同日より第1編成も含めて有楽町線への乗り入れを開始しました(その後、1991〈平成3〉年には9000型第8編成、1994〈平成6〉年には9050型電車を2本増備)。

 9000型と9050型は、2008(平成20)年6月14日の東京メトロ副都心線開業に伴う直通運転に向けて、2006(平成18)年から順次対応工事を行いました。しかし、試作車の第1編成はその対象から外されました。

 というのも、第1編成は他の9000型や9050型とドアの位置が若干異なるため、副都心線のホームドアに対応できなかったからです。このため副都心線開業後は有楽町線のみ乗り入れ可能となりましたが、2010(平成22)年に有楽町線でもホームドアの設置が始まっため地下鉄への乗り入れを終了。9000型第1編成は東上本線の池袋〜小川町間のみで使用されています。

 ちなみに、有楽町線用に投入された営団地下鉄07系電車もドアの位置が7000系電車や後継の10000系電車と異なることから、副都心線へは乗り入れができず、有楽町線へのホームドア設置に伴い東西線へと転属しています。

乗り入れ自体をやめてしまった例

 別の地下鉄路線との乗り入れを開始したことにより、それまでの路線との乗り入れをやめてしまった車両です。

東急電鉄1000系電車

 東急電鉄1000系電車は、東急電鉄東横線から営団地下鉄(現・東京メトロ)日比谷線に乗り入れていた7000系電車を置き替えるため、1988(昭和63)年から1990(平成2)年にかけて8両編成8本が東横線用に投入されました(その後、東横線・目蒲線兼用、池上線用車両も製造)。

 車体長20mで4ドア車の車両が席巻する東横線ですが、1000系は9000系電車と似たスタイルながら7000系と同様に日比谷線車両にあわせて車体長18mの3ドア車となっているのが特徴です。1988年12月26日より日比谷線への乗り入れを開始。7000系は1991(平成3)年6月3日で日比谷線への乗り入れを終了しています。

 以降、東急電鉄による日比谷線乗り入れ車両は1000系に統一されましたが、2013(平成25)年3月16日に東横線が副都心線へ乗り入れを開始するのに伴い、東横線と日比谷線との乗り入れは終了。日比谷線乗り入れに使用していた1000系は3両編成に短縮のうえ1500番台として転用改造、池上線と東急多摩川線に転じました。余った中間車の一部は先頭車改造などを行い、福島交通や一畑電車などの中小私鉄に譲渡しています。

 日比谷線では朝ラッシュ時の混雑緩和のために03系電車や乗り入れ車の東武鉄道20050型電車で車両の前後2両が5ドアとなった車両が登場しましたが、1000系では5ドア車は登場することはありませんでした。

 日比谷線自体も18m車8両編成から20m車7両編成となり、同線に乗り入れている東武鉄道では70000型電車と70090型電車を導入。それまで使用していた20000型電車や20050型電車、20070型電車は転用改造のうえ20400型電車となって宇都宮線などで使用しています。最初の「後継車両の登場で乗り入れなくなった例」に含めて良いかもしれません。

一度も地下鉄に乗り入れたことがなかった例

 ここからは、地下鉄乗り入れを想定・考慮しながらも実際に乗り入れることがなかった車両です。

■京王電鉄9000系電車(8両編成)

 2000(平成12)年に登場した京王電鉄9000系電車は、6000系電車の置き換え用として導入した車両です。8000系電車に次ぐステンレス車両でVVVFインバータ制御方式を採用。前面の真ん中には非常用貫通扉を備えます。

 都営地下鉄新宿線に乗り入れていた6000系も置き換えることを想定し、2004(平成16)年までに8両編成8本が製造。6000系や7000系の2両編成との連結を可能とし、都営新宿線への乗り入れを想定していました。

 しかし、当時の都営新宿線で使用していた東京都10-000形電車はVVVFインバータ制御方式ではありませんでした。インバータの制御器で電力変換を行う際には高調波のノイズが発生します。これにより都営新宿線のATCに障害が起きると想定されたため、9000系電車の8両編成は都営新宿線用のATCを搭載せず、乗り入れることはありませんでした。

 その後、都営新宿線では2005(平成17)年にATCを更新するとともに、東京都10-300形電車がVVVFインバータ制御方式で登場。京王電鉄も都営新宿線用のATCを搭載した9000系10両編成を同年から投入して都営新宿線に乗り入れを開始しましたが、現在でも9000系の8両編成には都営新宿線用のATCは搭載されていません。

■小田急電鉄2000形電車

 小田急電鉄2000形電車は、前述の1000形電車をベースに1994(平成6)年から2001(平成13)年にかけて製造した車両で、1995(平成7)年3月4日より営業運転を開始しました。

 外観は1000形と似ていますが、車体側面のドアの幅を1.3mから1.6mに広げ(運転台直後のドアは1.3m)、小田急電鉄の通勤車両で初めてバケットシートを採用したのが特徴です。

 2000形は8両編成で登場しましたが、車体の幅は1000形と同じで地下鉄千代田線乗り入れ用の保安装置が搭載できるように準備工事を行っていました。中間に2両を組み込んで千代田線用の保安装置を搭載すれば乗り入れが可能だったのです。

 しかし、2000形は最初に新宿発着の各駅停車を6両から8両に増強することが目的で、2000(平成12)年以降に増備の車両は2600形電車8両編成の置き替えが目的です。このころはすでに千代田線乗り入れ車両は1000形で統一されており、2000形は10両化されることはありませんでした。

西武鉄道の車両にも地下鉄に乗り入れたことのない車両が

 西武鉄道でも地下鉄乗り入れを想定しながら、いまだに乗り入れたことがない車両が存在します。

■西武鉄道6000系電車(第1編成、第2編成)

 西武鉄道6000系電車は、池袋線から西武有楽町線を介して地下鉄有楽町線への乗り入れ車両として1992(平成4)年に第1編成と第2編成の10両編成2本を製造、同年6月1日から池袋線で営業運転を開始しました。

 6000系は西武鉄道初のステンレス車両でVVVFインバータ制御方式を本格採用。初の10両固定編成でもあり、車体はそれまでの「西武イエロー」とはイメージが異なるブルー帯となったのが特徴です。

 6000系はその後、第3編成から第11編成まで増備され、1994(平成6)年12月7日、西武有楽町線の練馬〜新桜台間が単線で開業したことで西武有楽町線と地下鉄有楽町線との乗り入れを開始しました。ただし、このときは第1編成から第7編成までは営団ATCを搭載せず、地下鉄へは乗り入れていません。

 1998(平成10)年3月26日には池袋線から地下鉄有楽町線への乗り入れを開始。それまでに6000系は第17編成までとアルミ車体の6000系50番台7本を増備しましたが、第1編成から第7編成は変わらず営団ATCを搭載しませんでした(新製時は営団非搭載の編成もあり。後に6050系50番台を1本増備)。

 6000系は2006年度から2008(平成20)年6月14日開業の副都心線に向けての対応改造工事を順次実施。この改造工事で第3編成から第7編成も地下鉄乗り入れ対応となりましたが、第1編成と第2編成は改造されることなく新宿線系統で使用しています。

 6000系の第1編成と第2編成は先行試作車であることから改造対象から外れ、地下鉄乗り入れることなく、前面がシルバーメタリックで幕式の行先表示器という登場時の姿を保っています。

 ちなみに、西武鉄道の2000系電車は新宿線の地下急行線での走行を想定して前面に非常用貫通扉を設置して登場しています。

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