鉄道で一挙導入「デジタル障害者手帳で運賃割引」 課題ある紙の手帳

鉄道で一挙導入「デジタル障害者手帳で運賃割引」 課題ある紙の手帳

スマートフォンに表示された障害者手帳アプリ「ミライロID」のデモ用画面(2021年3月25日、柘植優介撮影)。

スマホを見せるだけで障害者手帳と同等の割引サービスなどを受けられるスマートフォンアプリ「ミライロID」。この度、全国約130の鉄道会社で一挙に認可されます。従来の紙の手帳は、障がい者にも事業者にも大きな負担でした。

ミライロID =「障害者手帳の電子化」

 障がい者向けのスマートフォンアプリ「ミライロID」が、2021年3月13日より、全国の鉄道会社84社(JR各社含む)で導入され、近日中に使用可能な鉄道会社が全国で130社近くまで拡大する見込みです。これを受け3月25日(木)、西武池袋線の練馬駅で、アプリの紹介を兼ねた利用方法の説明会が開催されました。

「ミライロID」とは、株式会社ミライロ(大阪府大阪市)が2019年7月にリリースしたもの。ユーザーは、障害者手帳の情報、福祉機器の仕様、求めるサポートの内容などをミライロIDに登録し、手帳と同じように使うことができます。公共機関や商業施設など、ミライロIDを本人確認書類として認めている事業者においては、障害者手帳の代わりに提示することで、割引などが受けられます。

 これが今回、全国の鉄道へ一挙に広がることになりました。

 株式会社ミライロの垣内俊哉社長の説明によると、現在、国内には964万人の障がい者がいるといいます。障害者手帳による運賃割引は1952(昭和27)年から始まったものの、それを受けるためには手帳類を常に持ち歩かなければならず、紛失や個人情報の漏洩リスクが常時つきまとっていたとのこと。

 実際、障がい者が公共交通機関や各種サービスを利用する際、割引を受ける方法は各企業へ一任されていることから、これまでは割引を利用する度に、障害者手帳の現物提示を求める企業がほとんどでした。提示する際は、割引に必要な箇所以外のところも披露する形になるため、個人情報を事業者などに見られるという心理的負担があったそうです。

 またこの障害者手帳の確認は、事業者にも大きな負担になっていたようです。というのも障害者手帳や療育手帳の形状や様式は、265種類と多岐にわたっていたからです。窓口で対応する職員によっては初めて目にするフォーマットのものもあり、確認に時間がかかることがあるそうです。

なくさないようにしないと…けど使用頻度は高い障害者手帳

 2019年7月のミライロIDのリリース以降、スマートフォンによる掲示は徐々に広まり、2021年2月末時点で885の事業者まで導入が広がっています。ただ、2021年2月にミライロIDユーザー271名が回答したアンケート調査では、「障害者割引をよく利用する場所」として最多の179名が回答したのが「公共交通機関」だったのだとか。

 こうした経緯もあり、この度、鉄道会社の理解と協力により大幅に導入が進んだと垣内社長は明かします。

 会場となった西武池袋線の練馬駅では、実際に障がいを持つ人が、窓口で職員にスマートフォンの画面を見せ、割引の切符を購入する様子が披露されました。実演した視覚障がいを持つ人は次のように話します。

「障害者手帳は、一度発行されると更新がないため、なくさないよう気を付けていなければならない一方、持ち歩く頻度も高いものです。視覚障がい者にとってもスマホは必需品になっていますから、これを見せるだけで済むというのは、心理的にも物理的にも楽になると思います」

 別の身体障がいを持つ人は、「障害者手帳を出さなきゃ、となるよりも携帯を出す方が動作はスムーズです」「障がい者同士のネットワーク、いわゆる口コミは結構あります。ミライロIDは、登録はしていたけど使ったことはなかったので、今回の実演を機に使っていこうと思います」などと話しました。

 なお、西武グループは2019年7月よりミライロIDを導入しており、西武鉄道や西武バス、西武ハイヤーを皮切りに、約3年のあいだで西武園遊園地や近江鉄道、伊豆箱根鉄道、箱根 芦ノ湖遊覧船など、さまざまな分野で使えるようになっているとのことです。

 ちなみにミライロIDは、民間で初となるマイナポータルとの連携により、アプリユーザーが希望する場合は、マイナポータルAPIから取得した情報も、ミライロIDに登録することが可能。2022年6月には療育手帳も実装を予定しているとのことで、将来的に利用者数、対応事業者の拡大が見込まれています。

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