いろいろズレてる? 顔が左右「非」対称な列車たち 全ては考え抜かれた結果

いろいろズレてる? 顔が左右「非」対称な列車たち 全ては考え抜かれた結果

貫通扉(非常扉)の位置に着目すると、東京メトロ7000系電車(右)は進行方向右に寄っているが、10000系電車(左)は中央にある(児山 計撮影)。

ライト類や表示器など、鉄道車両の前面すなわち「顔」には様々なパーツがあります。一見左右対称に配置されているようですが、よく見ると左右非対称の車両も。どういった理由で非対称になるのでしょうか。

運転士の立場では、窓は大きい方がよい

 鉄道車両の前面、すなわち「顔」には運転席(乗務員室)の窓やライト類、行先表示器などが付いています。それらは一見、どの車両も左右対称に配置されているように思うかもしれませんが、細かく見てみると、例えば窓の大きさが違うなど、左右非対称な点も多くあります。どのような理由なのでしょうか。

 乗務員室は運転士にとって業務を遂行するための職場です。仕事の能率を上げるためにオフィスの環境を改善するように、運転士がより安全運転に注力できるよう、乗務員室も日々改良されています。

 運転士が機器類を効率的に操作するためには、運転台はある程度広い方が有利です。また、前方を注視するには窓柱や貫通扉(連結した際に車両間を通り抜けるための扉。非常扉を兼ねる場合も)にさえぎられない幅の広い窓が望ましいという考えが生まれます。

 そこで貫通扉を左右どちらかに寄せ、運転台のスペースを拡大するデザインが考えられました。先頭車同士を連結する場合は、貫通幌で通路を構成する必要から扉は中央になくてはなりませんが、そうでなければ扉の位置は必ずしも中央である必要はありません。

 例えば大阪市交通局(現・大阪メトロ)の10系電車や営団地下鉄(現・東京メトロ)の6000系電車などは、貫通扉を進行方向右側にオフセットした左右非対称の前面形状とすることで、運転士の視界を拡大し、機器の配置にゆとりを持たせた設計となっています。

旅客サービスの観点から左右非対称になった車両も

 営団地下鉄は一貫して、6000系以降の新車を左右非対称の前面形状でデザインしてきましたが、民営化され東京メトロになって最初の新車である10000系電車は、貫通扉を中央に戻し左右対称のデザインとしました。これは車両故障の際、救援車両と連結した時に車両間の移動を安全に行うためですが、千代田線用に新造された16000系電車は第6編成以降が、前方視界確保の観点から左右非対称に設計変更されています。このように前面の形状は、何を重視するかで左右対称になったり非対称になったりします。

 また、貫通扉が中央にある車両でも左右非対称の顔を持つ例として、西日本鉄道5000形・6000形・6050形電車が挙げられます。西鉄では運転士の視界を向上させるため、運転士側のみ窓を拡大しました。このほか引退した車両では、連結を考慮して貫通扉を中央に配置しながらも、搭載機器の関係で左右非対称になった大阪市交通局50系電車や京王電鉄6000系電車があります。

 実は左右非対称の前面形状は、業務用の理由だけでなく、旅客サービスの観点から生まれたデザインもあります。名古屋鉄道5700・5300系電車やJR西日本205系電車1000番台は、運転台の後ろから乗客がワイドな前方展望を楽しめるよう、進行方向右側の窓が大きく造られています。

 ただ205系に関しては、乗務員の視界を広げるために運転台側の窓を大きくしたタイプと、旅客サービスのために右側の窓を大きくしたタイプとがあります。同じ左右非対称でもコンセプトが異なるうえ、それらの車両が同じ路線で運用されている点もユニークです(2017年10月までは阪和線、それ以降は大和路線と奈良線で見られる)。

ヘッドライト類は左右対称が原則だが…

 このほか観光列車の中には、塗装を左右非対称にして車両に個性を持たせているものもあります。展望席を備えた伊豆急行の2100系電車「リゾート21」を嚆矢に、2021年現在はJR九州の特急「指宿のたまて箱」に使われるキハ47形・キハ140形などが挙げられます。

 さて、紹介してきた前面形状が左右非対称の車両でも、ヘッドライトなどの標識灯は基本的に左右対称の位置にあります。これは、かつて鉄道車両製造のガイドラインとなっていた「普通鉄道構造規則」で、標識灯の取り付け位置は「車両中心面において対称の位置に設ける」とされていたためです。

 現行の「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」には、上述のような一文は記載されていませんが、標識灯をあえて左右非対称に設置する理由も特にないため、ほとんどの車両はたとえ前面形状が左右非対称であっても、標識灯は左右対称に取り付けられています。

 その中で数少ない例外を挙げるとすれば、大井川鐡道のC11形蒸気機関車227号機「きかんしゃトーマス号」かもしれません。この車両は原作のトーマスに倣って、前部標識灯が進行方向右側に取り付けられています。ほかにもトーマスの目つきによっては「見た目」が左右対称になったり非対称になったりするため、大変ユニークな車両といえるでしょう。

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