車はどれだけ“重く”なったか 自動車税や高速料金見直しの焦点 軽で1トン超 重いEV

車はどれだけ“重く”なったか 自動車税や高速料金見直しの焦点 軽で1トン超 重いEV

軽自動車のN-BOXと、スポーツカーのロードスター。モデルによっては重量で大差ないケースも(画像:ホンダ/マツダ)。

自動車税や高速道路料金の見直しが議論されるなか、道路に影響を及ぼす「車体重量」がその焦点のひとつになっています。この数十年で、クルマはかなり重くなりましたが、背景には何があるのでしょうか。

道路には切実な影響を及ぼす「車体重量」

 2021年10月22日、東京都の税制調査会が令和3年度の答申を発表しました。そこで提案されたのが、自動車税の「エンジン排気量基準」から、「CO2排出量基準」と、「車体重量基準」もしくは「走行距離基準」への速やかな移行です。
 
 CO2(二酸化炭素)排出量基準は、燃費性能を目安に税額を決めると解釈できます。また車体重量基準には、走行中にCO2を排出しないEV(電気自動車)や燃料電池車にも車両重量をもとに課税する仕組みを作ろうという狙いもあります。さらに同答申では、「コンパクトカーと軽自動車の燃費性能や車体重量の差がほとんどないのに、税負担が2倍近く離れている」という不合理性も指摘されています。

 他方、国土交通省の委員会では軽自動車の高速料金の見直しが検討されています。ここでも「軽自動車とコンパクトカーでは、燃費も重量もほとんど同じ」という点が、見直しにおける根拠のひとつとなっています。

 こうした話題の根底にあるのは、「環境や道路に与える負荷」で考えるという姿勢です。冷静になって考えれば、「環境に悪いクルマの税負担を大きくする」のは理解できる方針ですし、そのために排気量よりも、燃費性能によるCO2排出量や、道路を傷める車両重量を基準にするのは、当然のことのように思えます。ちなみに道路に与えるダメージの大きさは、国土交通省の発表によると高速道路の場合、最大で軸重の12乗に比例するとか。重さが2倍であれば、なんと4096倍も負担が大きくなる計算です。

 そこで問題となるのが、クルマの燃費性能と車両重量、とりわけ車両重量でしょう。なぜなら燃費性能の方は、ハイブリッドカーの普及もあり、過去20年で日本車は驚くほど性能を向上させてきました。「とんでもなく厳しい」とされている欧州の95g/kmの燃費規制も、日本風にいえば24.4km/L。日本車には、それらを軽々とクリアする車種が数多く存在しています。

 しかし車両重量に関しては「昔よりも軽くなった」なんて話は耳にしたことがありません。

1t超えも 軽くなくなった軽自動車

 マツダが2021年冬に「990kg」の特別仕様の「ロードスター」を発売するとアナウンスしています。これは「1989年にデビューした初代ロードスターと同じ重量を、最新型でも実現する」というモノ。いってみれば「約30年前と同じなのは、すごいでしょ」ということですが、逆に捉えれば、クルマは昔よりもはるかに重くなっているといえるでしょう。

 軽自動車でいえば、現在のベストセラーカーであるホンダ「N-BOX」の車両重量は890~1020kg。軽自動車でも1t前後の車両重量となっているのです。一方、コンパクトカーのベストセラーであるトヨタの「ヤリス」は、最軽量の1リッターエンジン車で940~970kgと、やはり大差ありません。ただし、N-BOXは軽自動車の中でも最も背が高く、両側スライドドアがあり、軽自動車の中でも横綱級に重い車種です。

 では、軽そうな軽自動車はどうでしょうか。スズキの現行「アルト」は、背が低く、軽量さを売りにしていますが、その車両重量は650~700kgです。アルトのライバルであるダイハツ「ミライース」も650~740kg。もう少し背の高いスズキ「ワゴンR」が790~820kgですから、アルトとミライースは軽自動車においても最軽量といえます。

 しかし、歴史を振り返れば、昔はもっと軽かったのです。1979(昭和54)年にデビューした初代のアルトは、543ccのエンジンを搭載しながらも、車両重量は545kgと、今より100kg以上も軽いものでした。

 さらにさかのぼれば、1960年代に大ヒットした富士重工(現スバル)の「スバル360」は、ネーミング通りの360ccエンジンを搭載し、車両重量はわずか385kg。同じく1960年代に人気を集めたマツダの「R360クーペ」も車両重量は380kg。1960年代前半の軽自動車は、驚くほど軽かったのがわかります。

もっと重量アップしている登録車

 もう少し大きな登録車の重量はどうなっているのでしょうか。古くから続くベストセラー車種、トヨタの「カローラ」と「クラウン」で振り返ってみましょう。

 まず、初の本格的国産車として1955(昭和30)年に誕生した初代クラウンは、1453ccのエンジンを搭載し、車両重量は1210kgでした。1971(昭和46)年登場の4代目、通称「くじらクラウン」は、2リッターエンジンを搭載して、車両重量は1365kg。2003(平成15)年に登場した12代目の大ヒットモデル、通称「ゼロクラウン」は2.5リッターと3リッターエンジンを搭載して1550~1610kgでした。世代を重ねるごとに重量が増し、2018年登場の最新型15代目のクラウンは、2リッターターボと2.5リッター、3.5リッターのハイブリッドで、車両重量は1720~1900kgとなっています。

 カローラを見てみると、1966(昭和41)年デビューの初代が1077ccエンジン搭載で、車両重量が690~710kgでした。レビン/トレノの名で知られる1983(昭和58)年登場のAE86型クーペは、車両重量が940~960kg。バブル期に大ヒットした1987(昭和62)年の6代目が1.3~1.6リッターエンジンを搭載して、車両重量890~1020kgでした。やはり新しいモデルほど重くなっており、最新のカローラは1.8リッターエンジンで、車両重量1250~1440kg。55年前の初代から、なんと500kg以上も重くなっています。

 こうしたクルマの重量増の理由は3つ挙げられます。

 ひとつは、車体やエンジンの大型化です。同じ軽自動車でも、規格の変更によりエンジンが360ccから550cc、660ccと大きくなり、それにあわせて車体も拡大、重量も増加してきました。カローラやクラウンも、車体やエンジンが時代とともに大きくなり、それにあわせて重くなっているというケースです。

課税は必至? 重い「EV」

 そして、もうひとつの重量増の理由は、安全性です。かつての日本は「交通戦争」と形容されるほど、交通事故による死者の多い時代がありました。日本車の普及は、1950年代後半に始まり、60年代から70年代にかけて大きく伸長しましたが、それにあわせて交通事故、またその死亡者数も激増しています。具体的には、1959(昭和34)年に1万人を突破し、ピークとなる1975(昭和50)年には1万6765人を記録したほどです。

 そうした不幸な交通事故を防ぐために、自動車メーカーはクルマの衝突安全性能を高めていき、それにあわせてクルマの重量は増加していきました。交通安全の啓蒙などとともに、そうしたクルマ自体の安全性向上の努力もあり、2020年は、記録の残る1948(昭和23)年以来、最も少ない2839人となっています。

 最後に挙げる重量増の理由は、電動化です。ハイブリッド車は、エンジンだけでなく、モーターと駆動用バッテリーが追加されています。当然、それでクルマは重くなります。たとえば、2021年11月に発売されたコンパクトSUV「ライズ/ロッキー」のハイブリッド仕様は、エンジン車よりも90kgほども重量が増しているとか。

 また、EV(電気自動車)は、搭載する電池が多いため意外なほど重量がかさみます。日産「リーフ」の場合は1490~1680kg。自動車のカテゴリーとしてはカローラと同等であるものの、車両重量は200kgほどもプラスになっています。さらに、日産の新型EV「アリア」の車両重量は1920kgで、全長約4.6mのミッドサイズSUVとしては、かなりの重さです。似たようなサイズのトヨタ「RAV4」は、エンジン車が1570~1630kg。ハイブリッド仕様でさえ1670~1700kgですから、アリアはそれよりも、おおよそ300kgほども重くなっています。

 もっと快適に、もっと安全に、もっと燃費を良く! というニーズに応えて、クルマはどんどん大きく進化し、その結果、どんどん重くなってきたという歴史をたどってきたのです。

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