なにが世界一? JAL「気前良すぎるエコノミークラス」誕生秘話 いかにも日本人な工夫も

なにが世界一? JAL「気前良すぎるエコノミークラス」誕生秘話 いかにも日本人な工夫も

JAL「スカイワイダー」が搭載されているボーイング777-300ER国際線仕様機(2021年12月、乗りものニュース編集部撮影)。

JALは世界の航空会社のなかでも、国際線エコノミークラスに強みを持ちます。「世界一」にも輝くその座席は、どのように生まれたのでしょうか。開発の中心人物に誕生秘話を聞きました。

まずは名の通り「広さ」がウリ

 世界にあまたの航空会社があるなか、JAL(日本航空)が強みにしているもの、それが国際線エコノミークラスです。
 
 JALの国際線エコノミークラスは、英国の航空業界の格付け会社・スカイトラックス社から「世界一」の評価を2期連続で受賞。とくに機内食・サービスなどを含まない、シートの評価に至っては、2015(平成27)年から通算5度の「世界一」評価が与えられています。この評価は、航空利用者からの投票をもとにしたものとのこと。

 ここまで旅客を引きつけるJALのエコノミークラスとは、どのようなものなのでしょうか。

 JALの現行の主力エコノミークラスは「スカイワイダー」と呼ばれるもの。その名の通り、1席あたりの広さが一般的な国際線エコノミークラスより広いというのがウリです。たとえば、横9席(3-3-3列)配列が主流を占めるボーイング787の場合、JALのもの(JAL スカイスイート 787仕様機)では横8席(2-4-2列)を実現させ、1席あたり横幅+5cmのスペースを確保しました。

 これは、できる限り席を多く設置して1便あたりの収益を高めるエコノミークラスの基本的な考え方とは、ある意味正反対です。

 同社でこの仕様の開発に携わったJALの商品・サービス企画部の西垣淳太さんによると、足元のスペースについても「従来とくらべ最大約10cm程度広げた」とのことです。

 前後の足元スペース最大約10cmの拡張幅については「座っているときにお客様が(気兼ねなく)脚を組めたりですとか、(ほかの旅客が)通路へ出る際にいちいち立たなくても済むようにという快適性と、(席を減らすことによる)収益性のバランス、臨界点を見定めて決めていきました」と話します。

 ただ、“質重視のエコノミークラス”というコンセプトが決まったあとも、西垣さんは「完成までにメンバー一人ひとりが苦労しました」と話します。それは、標準的なエコノミークラスでは採用し得ないようなレイアウトゆえでした。

誕生までの苦労 広さ以外にも工夫が?

 西垣さんによるとJALの「スカイワイダー」は「座席メーカーにとっても初めての仕様もあるゆえ、たとえば安全性のテストも前例がなく、いろいろなテストをやる必要がありました」といいます。

「結果的に、想定より開発期間が必要になるなか、それをどれくらい圧縮できるのかなどを毎日のように考えました。最終的にはトータルの開発期間は変わっていませんが、テスト時間を多めにし、生産期間のピッチを上げるなど、時間の構成を工夫しました」とも。「そのおかげで安心してお客様に乗っていただける座席ができたので、努力した甲斐があったなと思いました」と話します。

 なお、「スカイワイダー」は広さ以外に、なんとも“日本らしい”工夫もあります。西垣さんによると「スカイワイダー」は、実は普通の座席よりも最初から1インチ倒しているとのこと。「日本の気質的に後ろの人を気にしてしまって倒しづらい」と乗客からの意見があり、ずっと座席を立たせ搭乗するスタイルでも、快適性を上げるためだそうです。

 一方で、「スカイワイダー」が最初からすべての面でパーフェクトなエコノミークラスであったかというと、そうではなさそうです。

高評価受けるエコノミークラス 担当者も10時間座り…

 JALのエコノミークラス「スカイワイダー」の開発に携わった西垣さんは「もっと最初からこうしておくべきだった」というポイントについて、次のように話します。

「実際に10時間座るテストもしたうえ、長時間座ることを前提に、硬めの座面にして安定性の確保を図ったのですが、導入後に『クッションが硬すぎる』とご意見をいただいてしまいました。その後座面を柔らかくするよう改良しています」(西垣さん)

 ちなみにクッションテストのとき「そんなことをする航空会社はないので工場を貸せません」とメーカーに断られてしまったそう。西垣さんは「ホテルの開発メンバーの部屋へ座席を運び込んで、仲良く(座って)一夜を明かしたこともありました(笑)」とそのときのことを振り返っています。

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 JALのエコノミークラスが「世界一」の評価を受けたことについて「受賞を目指していたわけではありませんが、(スカイワイダーを含めこのシートを搭載する)『スカイスイート』機材は、『ひとクラス上の最高品質』を掲げていたという意味で、お客様の評価で結果的に世界一に選ばれたのというのは、嬉しく思います」と西垣さんは話します。

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