ウクライナ「ドンバスの戦い」は本格的な戦車戦になるか ロシアの「力押し」有利な戦局に?

ウクライナ「ドンバスの戦い」は本格的な戦車戦になるか ロシアの「力押し」有利な戦局に?

ウクライナ領内に残されたロシア軍のT-72B3戦車(画像:ウクライナ軍参謀本部)。

ロシアとウクライナの戦いは泥沼の様相を呈しています。そのようななか、ウクライナ東部の平原地帯で大規模な戦車戦が起こる可能性も。実は過去にもこの地域で何度も戦車戦が起きたことがあるそうです。

平原地帯で始まる第2ラウンド

 2022年2月24日、ロシアは隣国ウクライナに侵攻を開始(筆者はこれをロシア第1次攻勢と仮称します)しましたが、戦争が長期化するにつれ、ロシア軍はいったん後退し戦力の立て直しを図り、4月18日前後に改めてウクライナの東部、ロシア国境から見れば西の外縁ともいえるドンバス地方での攻勢、いわゆる「ドンバスの戦い」を始めました。

 ロシア第1次攻勢の際、ウクライナ軍は歩兵携行式対戦車ミサイルや肩撃ち式地対空ミサイルを携帯した8〜10名の分隊規模の部隊を多数展開させ、建物や廃墟を利用した待ち伏せ攻撃を行うことで、ロシア軍の戦車や装甲兵員輸送車、攻撃ヘリコプターなどに大損害を与えました。このような「迎撃戦」成功の背景には、ウクライナ民間人らによるスマホなどでの情報提供に加えて、アメリカを始めとしたNATO(北大西洋条約機構)側の詳細な戦場偵察情報の提供があったとも言われます。

 こういった戦況が、首都キーウ(キエフ)攻略からロシア軍が目標を切り替えた理由のひとつになっているようです。ロシア軍はいったん後退して再編成のうえ、クリミア半島への「回廊」の打通を目指し侵攻地域をドンバス方面へ変更しました。

 しかし、この地方で激戦が繰り広げられるのは今回が初めてではありません。第2次世界大戦時、ドンバス地方では、ドイツ軍のIV号戦車やパンター中戦車などと、ソ連軍のT-34中戦車やKV重戦車などが、戦車対戦車の戦い、いわゆる「戦車戦」を繰り広げました。

 晩秋と初春の泥濘期さえ過ぎれば、なだらかな平原が多い同地方は、戦車にとって戦闘行動がきわめて行いやすい地形です。戦車の本質が当時と今でそれほど大きく変わっていない以上、現在でも戦車戦に適した土地であることは変わりません。

第2次大戦時と同じような状況になるか?

 ロシア第1次攻勢時は、ロシア軍に対して戦車をはじめとする機甲兵力の数で劣るウクライナ軍が善戦できましたが、ドンバスでは、彼我の戦車が真正面からガチンコでぶつかり合う「典型的な」戦車戦が行われているようです。

 また、このような戦場では、第2次世界大戦時と同様に、空からの対戦車攻撃が効果的なのも変わらないようです。このため、ウクライナは西側から供給されていた歩兵携行対戦車ミサイル「ジャベリン」や、対空ミサイル「スティンガー」などに加えて、T-72のような主力戦車(MBT)、機甲部隊に同行して「防空の傘」を提供できる自走式対空ミサイルや自走式対空機関砲、さらには、Su-25「フロッグフット」地上襲撃機や攻撃ヘリコプターなどといった「重兵器」の供給を求めているといえるでしょう。現代の大規模戦車戦に不可欠な重兵器となると、ウクライナはロシアに比べて数的に劣るからです。

 思い出されるのは、ドンバス地方が舞台となった第2次世界大戦時の独ソ戦における戦車戦です。数的には劣勢ながら戦術や個々の戦車の性能に優れるドイツ軍に対し、ソ連軍は、ドイツ軍よりはるかに大きな損害を被りながらも数的優勢を背景とした「力押し」で目的を達成するケースがたびたびありました。もしかしたら、今回のドンバスの戦いでも、同様のことが起きているかもしれません。

 なお、現在続いているドンバスの戦いは、ロシア第1次攻勢時のような「戦局」に関するニュースがあまり報じられていませんが、これは、彼我双方の報道規制もさることながら、メディアが入り込みにくいほど激しい戦いが繰り広げられている証拠のように思えます。だからこそ、その戦局の動きがいっそう気になるところです。

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