ロマンスカーVSEどんな車両? 元運転士に聞く 超デラックス特急ならではの気配り運転

ロマンスカーVSEどんな車両? 元運転士に聞く 超デラックス特急ならではの気配り運転

小田急電鉄の特急ロマンスカー「VSE」50000形電車(2009年10月、恵 知仁撮影)。

小田急電鉄の看板車両「特急ロマンスカー」。中でも運転席を2階に設け、客室を車体前面まで伸ばした展望席を持つ「VSE」「GSE」は人気でしたが、うちVSEが定期運行から引退しました。両車両を走らせた元運転士に思い出などを聞きました。

73年の歴史を持つ小田急「ロマンスカー」

 斬新な特急形車両を続々と投入し、鉄道友の会から「ブルーリボン賞」などを多数受賞している小田急電鉄の「特急ロマンスカー」。その歴史は1949(昭和24)年に投入された1910形(後に2000形に変更)から始まり、2022年で73年にもなります。

 ロマンスカーは、初代1910形の時点で喫茶カウンターを備え「走る喫茶室」と呼ばれるなど、サービスレベルの高さが魅力のひとつでした。その後も進化を続け、2022年に至るまで実に10車種ほどが登場しています。そのような中、2005(平成17)年に登場したのが、50000形「VSE」です。

「VSE」は、その後の「MSE」「GSE」へと引き継がれる岡部憲明アーキテクチャーネットワークの車体デザインを採用。ロマンスカー伝統である前面展望や連接車構造に加え、「走る喫茶室」サービスの復活、窓側に5度向けられた座席、簡易個室「サルーン」の設置など特別感のある車両だったこともあり、2021年に定期運行からの引退が発表されると、多くの惜しむ声が聞かれました。

 今回は、そのような「VSE」や、同じく展望車を備える最新型の「GSE」がどのような「乗りもの」だったのかについて、元運転士の梓 雅樹(あずさ まさき)さんにお話を聞きました。

運転士から見ても斬新な「VSE」

――「VSE」「GSE」は登場時に、小田急ロマンスカーのフラグシップと言うべき車両でした。運転士にとって、どのような印象を受ける車両でしたか?

「VSE」は、今までのロマンスカーとは一線を画す「スタイリッシュさ」と、「白い車体」「広い車内空間」が衝撃的でした。運転士としては「運転台に側窓がなく、外を確認するモニターが付いている」のは新鮮でしたね。

「GSE」は「LSE」(編注:7000形。前面展望席を備える)を置き換える車両という認識でした。ロマンスカーを象徴する車体色「ローズバーミリオン」と「運転台の広さ」には安心感がありました。「VSE」と異なり「運転台窓」が設置されていましたので、駅停車中にホームから手を振ってくださるお子さまに応えることができたなど、お客様との距離を近く感じられることを嬉しく思っていました。

――「VSE」には車体傾斜機構が備わっていますが、他車と運転感覚の違いは感じられましたか?

 車体傾斜は高速で曲線に侵入する際、特に効果がありました。2階にある運転席でも揺れが少ないと感じられました。

――「VSE」「GSE」ともに、運転台が2階にありますが、乗務時に他車との大きな違いは感じられますか?

 2階の運転席は見晴しが良好です。その一方で、運転台から見えにくい箇所が存在するため、駅進入時は特に注意を払って運転していました。

「周りの列車も遅らせない」配慮

――「VSE」は「走る喫茶室」と呼ばれるシートサービスを行っていましたが、特に揺れないための配慮はされていたのですか?

 揺れないことは車両を問わず意識しています。車内販売を行う列車、特にシートサービスを行う「VSE」では、曲線通過速度を抑え、急な加減速を行わないよう特段の注意を払っていました。

 なお、前後列車の運転間隔や、自身が運転する列車の次の駅までの運転時間を確認し、自列車だけでなく、周りの列車を遅らせることがないように、速度・操作に配慮した運転を心がけることが、揺れない運転操作につながると、先輩から教えていただきました。

――「VSE」「GSE」は停車駅の少ない運用が多いですが、停車駅が少ないと運転への意識は異なるのものですか?

 ロマンスカー乗務時は次の駅までの区間が長いため、周囲の列車の状況や運転時間など、事前に準備・把握することが多く、大変でしたが、やりがいを感じていました。

 なお、停車駅の少ないロマンスカーに限らず、運転をするときは常に、次の停車駅までに「○○駅で各駅停車を抜く」「運転時間が多くある」といったことを事前に確認し、お客様にとって乗り心地がよい電車であることを追求した計画運転をしています。

――お忙しい中、インタビューに応じていただき、ありがとうございました。

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「VSE」「GSE」とも往年の展望席を踏襲し、世代を問わず高い人気を博します。「VSE」は今後、イベント列車などとして運行し、2023年秋ごろ完全に引退する予定です。

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