硫黄島に次ぐ「訓練の島」に? 鹿児島「馬毛島」とは 防衛省がゼロから開発するメリット

硫黄島に次ぐ「訓練の島」に? 鹿児島「馬毛島」とは 防衛省がゼロから開発するメリット

硫黄島航空基地の滑走路を使って離発着訓練を行うアメリカ海軍のFA-18F「スーパーホーネット」戦闘機(画像:アメリカ海軍)。

種子島の西に浮かぶ無人島「馬毛島」に、いま防衛省・自衛隊が注目しています。この小島を訓練のための一大拠点にしようという計画ですが、“訓練の島”としては、東京からはるか南の硫黄島が知られます。なぜ馬毛島なのでしょうか。

使い勝手はいいけど遠すぎる硫黄島

 東京から南へ約1200km。ここには、陸の孤島かつ「まだ東京都」でもある硫黄島があります。

 第2次世界大戦末期、激戦地となった同島は、戦前こそ島民が生活していたものの、戦火が激しくなるとともに旧日本軍の一大防衛拠点となり民間人は退去、戦後は島全体が自衛隊および在日米軍の訓練施設として使用されています。そのため、一般人の立入は厳しく制限されていることから、元島民であっても年に一度の慰霊祭への参加以外では上陸できません。

 現在、硫黄島は防衛省の施設として海上自衛隊が管理しており、自衛隊とアメリカ軍が使用する以外は、太平洋を通過する旅客機の緊急着陸場所として指定されています。

 一方で、硫黄島特有ともいえる立地上の問題がありました。国内の航空自衛隊基地や在日米軍基地などから直線で約1200kmから1400kmも離れていたため、移動に時間と燃料を多く消費していたのです。

 特に山口県の岩国基地を拠点とするアメリカ海軍の固定翼艦載機部隊は、陸上における空母への模擬離着陸訓練を行う場合、はるばる硫黄島へと向かう状況が続いています。ほかにも、航空自衛隊などが実弾を使用した射撃訓練を行う際は硫黄島などを拠点に訓練しているため、移動だけで1日消費してしまうこの距離感に無駄があると以前から言われていました。

圧倒的な近さがメリットの馬毛島

 そういったなか、より本土に近く、使い勝手に優れた無人島として白羽の矢が立ったのが鹿児島から南へ約100km、種子島から西へ約10kmの位置に浮かぶ「馬毛島」です。防衛省は、訓練施設が少ない南西諸島における自衛隊の活動拠点兼訓練施設として、この小島を活用しようと動き出しています。

 そもそも馬毛島とは鹿児島県西之表市の行政区で、種子島や屋久島などから構成される大隈諸島の一部です。面積は8.20平方キロメートルと硫黄島の約3分の1程度の大きさですが、起伏の少ない比較的平坦な地形で、硫黄島の航空施設だけをもってきたかのような土地になっています。

 この島の定住記録は江戸時代にまで遡りますが、1944(昭和19)年の戦時中、一時的に無人島になりました。その後、住民が戻り1951(昭和26)年頃から馬毛島の開拓事業が行われたものの、水源に乏しく農業に適さない土地であること、害虫や鹿害が多く、まともな生活基盤を確保することができないという理由から、1980(昭和55)年には最後の島民が馬毛島を離れ、再び無人島化しています。

 過去には、様々な企業による土地の買収や不正経理による汚職事件の舞台になるなど、多くの問題が発生した馬毛島ですが、最終的には防衛省が取得を進め、硫黄島に替わる訓練施設の建設を進めることになりそうです。

航空基地にとどまらない馬毛島の改修計画案

 2022年4月には、防衛省が「航空自衛隊馬毛島基地(仮称)」の施設配置案を発表しています。建設される予定の施設は、基地としての運営に必要な「飛行場支援施設」、航空機の管理を行う「駐機場、燃料施設、格納庫」、そして不整地着陸や模擬艦艇発着訓練を行う「訓練施設」の3つです。

 ほかにも、海上自衛隊を始めとした各種艦艇が停泊可能な桟橋や係留施設、エアクッション型揚陸艇(LCAC)などの揚陸施設なども建設される予定です。なかでも艦艇が停泊できる係留施設や仮設桟橋などは、海流が速く島の隆起スピードも早い硫黄島では建設不可能な施設であり、馬毛島の特徴となるでしょう。また、横風用の滑走路も硫黄島にはありません。

 一方で、現在の航空写真で見ることができる滑走路のような跡地は活用されず、全く異なる場所に滑走路などが建設されることから、防衛省としては馬毛島をゼロから開発することにしているのでしょう。

 こうしたことから、近い将来、馬毛島施設の運用が開始された場合、従来、国内の他基地では実施できなかった訓練を実施することができる重要な施設として、馬毛島は使われることになります。一方で、市民団体による反対活動も継続されていることから、航空自衛隊の戦闘機部隊が展開可能な航空基地になるには、まだ時間がかかると考えられます。

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