エアバスの爆売れ空中給油機 何がいいのか? 米空軍も“今度は買う”になりそうな秘策も

エアバスの爆売れ空中給油機 何がいいのか? 米空軍も“今度は買う”になりそうな秘策も

ロッキード・マーチンが発表した「LMXT」のコンセプトCG(画像:ロッキード・マーチン)。

ロッキード・マーチンがエアバスの空中給油機A330-200MRTTをアメリカ空軍へ新型空中給油機として提案しています。世界中でシェアを伸ばすA330-200MRTT、何がいいのでしょうか。

ロッキード・マーチンとエアバスがタッグ 米空軍へ売り込み

 ロッキード・マーチンは2022年5月18日、アメリカ空軍の新たな空中給油機計画「KC-Y」へ提案している新型空中給油・輸送機「LMXT」の給油用ブームシステムを、アーカンソー州で製造する計画を発表しました。

 同社の前身であるロッキードは、4発レシプロ旅客機の「コンステレーション」や、ANA(全日空)も導入したL-1011「トライスター」などの旅客機を世に送り出してきましたが、現在のロッキード・マーチンは空中給油・輸送機のベース機として使用できる旅客機や、旅客機ベースの貨物機の開発と製造を行っていません。

 このためLMXTは一から新開発されるのではなく、ヨーロッパのエアバスの空中給油・輸送機「A330-200 MRTT(Multi Role Tanker Transport)」をベースに開発されます。

 A330-200 MRTTは、2022年4月の時点で1535機が製造されているベストセラー旅客機A330の長距離型A330-200をベースに開発された空中給油・輸送機です。原型機であるA330-200と部品の共通性が大きいため、整備や維持コストを低く抑えられるという長所があります。

 空中給油機として不要になった場合はA330-200旅客機に改造することができますし、逆にA330-200からA330-200 MRTTへの改造も可能です。予算が潤沢でないブラジル空軍などは、アズールブラジル航空から中古のA330-200を購入して、A330-200 MRTTに改造する計画を進めています。

 さらにA330-200 MRTTは、従来型のA310-MRTTにはなかった「フライング・ブーム」方式の空中給油にも対応しています。これは、MRTTから伸ばした給油用ブームを、給油を受ける航空機の給油口に接続して給油する方式。アメリカ空軍や航空自衛隊が採用しているものです。

かなりアドバンテージになっている「どっちの給油方式もOK」

 エアバスのおひざ元であるヨーロッパ諸国の空海軍機のほとんどは、給油機から垂らした給油用ホース先端の「ドローグ」に、給油を受ける航空機が「プローブ」を接続して給油する「プローブ・アンド・ドローグ」方式を採用しています。このため、エアバスがA310旅客機をベースに開発したA310-MRTTは、プローブ・アンド・ドローグ方式の給油装置しか備えていませんでした。

 しかしA330-200 MRTTは、最初の発注者となったオーストラリア空軍の要望もあって、フライング・ブーム方式の給油装置も標準装備としたのです。

 これにより、同方式をとるF-15やF-16を運用しているシンガポール空軍や韓国空軍へも、A330-200 MRTTの採用の道が開けました。また、アメリカ空軍や航空自衛隊などとの相互運用性の向上にも寄与しています。

 オーストラリア空軍のA330-200 MRTT(同空軍での呼称はKC-30A)は、2022年3月から4月にかけて来日し、航空自衛隊のF-2戦闘機との空中給油適合性確認試験を行っており、今後は所定の手続きを経て、KC-30AからF-2への空中給油が可能となります。

 機体の規模のわりに維持整備コストが安く、また方法次第では導入コストも抑えられる点に加えて、フライング・ブーム方式の空中給油装置を装備――こうしたこともあり、A330-200 MRTTは2022年5月の時点で、エアバスとの改造契約を締結していないブラジルを含めれば9か国とNATO(北大西洋条約機構)に採用されています。

 ヨーロッパだけでなくアジアや中東などでも成功をおさめたA330-200 MRTTが、世界で最も空中給油機を多く保有しているアメリカ空軍を次のセールスターゲットに据えるのは当然なのですが、実はA330-200 MRTTのアメリカへの挑戦は、今回が初めてではありません。

アメリカ空軍、次は買ってくれるかな?

 かつてエアバスとEADS(現エアバス・ディフェンス・アンド・スペース)は、KC-135空中給油機の一部を後継する「KC-X」計画に、ノースロップ・グラマンと組んでA330-200 MRTTを提案しています。2008年にはアメリカ空軍にKC-45Aの名称で採用が決まったものの、GAO(アメリカ会計検査院)から決定の見直しが勧告されたことから、採用は白紙撤回され、最終的にボーイングが提案したKC-46Aが選定されたのです。

 KC-45A(A330-200 MRTT)の採用を白紙撤回した理由として、アメリカ空軍はフライング・ブーム方式での給油実績が無いことを挙げていました。しかし、現在のA330-200 MRTTはフライング・ブーム方式での給油実績を十分に備えています。

 またエアバスはシンガポール空軍などと共同で、世界初の全自動フライング・ブーム方式空中給油システム「A3R」の開発を進めています。

 A3Rはシステムが起動すると、空中給油を受ける航空機の受油口にブームを自動的に接続。給油を受ける航空機の安定性の低下や給油機側の誤動作が発生した場合は、自動的に受油機からブームを切り離す仕組みです。実用化されれば空中給油の効率は大幅に向上します。

 A3Rの存在はアメリカ空軍にとっても魅力的であることは間違いなく、エアバスの目論み通りの性能を発揮できれば、「KC-Y」商戦が有利になるのはもちろんのこと、将来計画されている次世代空中給油機「KC-Z」への採用も見込めるのではないかと、筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

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