戦車の主砲大型化ふたたび? 対ロシアで求められる能力向上 独新型戦車の130mm砲より大きく?

戦車の主砲大型化ふたたび? 対ロシアで求められる能力向上 独新型戦車の130mm砲より大きく?

KF15「パンター」(画像:ラインメタル)。

ウクライナ侵攻以降、ロシアに対抗すべく戦車の能力向上が求められています。そうしたなか発表されたドイツの新型戦車は主砲に130mm砲を搭載。しかし、これより大きい砲が主流となる可能性もあり、主砲の大型化に再び注目が集まっています。

130mm砲搭載の新型戦車

 2022年6月13日から17日までフランスのパリで開催された世界最大級の防衛装備展示会「ユーロサトリ2022」で、ドイツの防衛企業ラインメタルが新型戦車KF51「パンター」を発表しました。ドイツ連邦軍などで使用されている「レオパルト2」戦車の車体に、ラインメタルが新たに開発した砲塔システム「フューチャー・ガン・システム」(将来砲システム)を組み合わせて開発されたものです。

 フューチャー・ガン・システムの最大の特徴は、主砲に52口径130mm滑腔砲を採用している点にあります。

 第二次世界大戦後、アメリカを盟主とする西側陣営と、旧ソ連を盟主とする東側陣営は東西全面対決に備えて戦車の高性能化にしのぎを削っていました。これに伴い戦車の主砲の口径も、西側陣営では90mmから105mmを経て120mmに、東側陣営では100mmから115mmを経て125mmへと大型化の一途をたどっています。

 その後も1980年代後半に西ドイツ(当時)で140mm滑腔砲、ほぼ同時期に旧ソ連でも135mm滑腔砲の研究開発が行われており、前者はレオパルト2の能力向上計画、後者は開発中止となった「オブイェークト195」への採用がそれぞれ検討されましたが、砲の大口径化に伴う砲弾の搭載数の減少が問題視されたことや、東西冷戦の終結により必要性が低下したことなどから採用は見送られ、その後は東西両陣営とも、主砲の長砲身化や砲弾の性能向上による戦車の攻撃力の強化は行ったものの、主砲の大口径化は見送ってきました。

 ドイツとフランスは、現在ドイツ連邦軍が運用しているレオパルト2と、フランス陸軍が運用している「ルクレール」戦車を後継する新型戦闘車両「MGCS」(Main Ground Combat System/陸上主力戦闘システム)の開発を進めています。このためKF51に採用されたフューチャー・ガン・システムが、MGCSの主砲に採用されるとの観測もあるようですが、筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は必ずしもそうはならないと思っています。

「レオパルト2+別の砲塔」も出展 独仏タッグのライバル

 MGCSの開発はラインメタルのライバルであるドイツの防衛企業KMW(クラウス・マッファイ・ヴェクマン)と、フランスの防衛企業ネクスターの合弁企業であるKMWネクスター・ディフェンス・システムズ(以下KMWネクスター)が担当しています。

 同社はレオパルト2の車体にルクレールの砲塔を組み合わせた技術実証車両の「EMBT」(Enhanced Main Battle Tank)を、2018年に開催された前回のユーロサトリで発表しており、今回のユーロサトリでもEMBTの改良型を発表しています。

 今回出展されたEMBT改良型のコンセプト模型は、砲塔の形状がフューチャー・ガン・システムとは異なっています。同社の担当者は「フューチャー・ガン・システムはEMBTの兵装の選択肢の一つではあるが、現時点で採用するかはまったく決まっていない」とも述べています。

本命は140mm砲か

 EMBTへのフューチャー・ガン・システムの採用が不透明な理由の一つは、ネクスターが自社資金で開発を進めている140mm滑腔砲「ASCALON」の存在もあると筆者は思います。

 前に述べたように、主砲を大口径化するには、砲弾の大型化に伴う搭載砲弾数の減少という問題があります。KF51は新開発の砲弾自動装填装置の中に20発、砲塔内に10発の砲弾を搭載できますが、レオパルト2の42発に比べて搭載数は大幅な減少を余儀なくされています。

 これに対しASCALONは、弾頭を薬莢の底まで埋め込んだテレスコープ弾を使用することで、全長を1300mm(1.3m)にまで抑えており、砲の大口径化に伴う搭載砲弾数の減少という問題をある程度解決しています。

 また、ネクスターが開発を進めている120mm精密誘導滑腔砲弾「120 N-LOS」と共通の技術を用いる精密誘導砲弾の開発も構想されており、この点でもフューチャー・ガン・システムより、先進的と言えます。

 EMBTが主砲にKF51と同じ130mm滑腔砲を採用するのか、ASCALONをベースとする140mm滑腔砲を採用するのかを、現時点で予測するのは困難です。しかし2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、ヨーロッパ諸国ではロシアの脅威に対抗するため戦車の能力向上が必要であるとの声が大きくなっています。ロシアの戦車戦力の強化の推移によっては、EMBTの主砲が140mm滑腔砲になる可能性は十分にあると筆者は思います。


※一部修正しました(6月30日10時21分)。

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