「防衛品は稼げない」払拭なるか 相次ぐ国内メーカー撤退→装備運用に懸念 国は新機軸の対策

「防衛品は稼げない」払拭なるか 相次ぐ国内メーカー撤退→装備運用に懸念 国は新機軸の対策

航空自衛隊のC-2輸送機。2022年はウクライナ支援やトンガ派遣などで活用されている(画像:航空自衛隊)。

日本の防衛装備品にとって重要なメーカーがまたひとつ、防衛関連の事業から撤退しました。同様に国内大手企業が撤退するケースが相次いでおり、装備品の運用への影響が懸念されています。なぜこうなってしまったのでしょうか。

「零戦の脚」をつくった企業も撤退

 油圧機器大手のカヤバ株式会社(KYB)が航空機器事業からの撤退を決定したことで、航空自衛隊のC-2輸送機の運用に懸念が生じているようです。2022年6月3日付の時事通信が報じました。

 カヤバは戦前に日本海軍の零式艦上戦闘機の着陸脚にも採用された「オレオ」と呼ばれる緩衝装置や、日本で唯一実用化されたオートジャイロの「カ号観測機」などを生産、戦後も航空機事業ではC-2のブレーキや、ボーイング777旅客機のアクチュエータなどの製造を手がけてきた企業です。

 しかし近年では、オレオの技術を活用した四輪車や二輪車の緩衝装置、建設用油圧機器などを事業の柱としており、2022年2月8日に開催された取締役会で、経営資本を柱となる事業に集中して競争力を強化するため、航空機事業からの段階的な撤退を決定していました。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各国が国民の行動を制限したことから、2020年から2021年にかけて旅客機の需要は大幅な減少を余儀なくされました。その後ボーイング737MAXやエアバスA320など、短〜中距離路線に使用される旅客機の需要は回復しましたが、同社がアクチュエータの製造を手がけていた777などの中型旅客機の需要は未だ回復に至っておらず、それが航空機事業からの撤退を決意させた理由の一つであると考えられます。

 これに対し防衛用航空機は、新型コロナウイルスや原油高、景気の悪化などの影響も受けにくく、安定した需要が期待できるはず。にもかかわらずカヤバが防衛用の航空機事業からも撤退した背景には、日本の防衛装備品調達のあり方と、防衛装備品の利益率の低さがあると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

「儲かりません」「輸出も進みません」

 欧米諸国などでは軍用機を調達する際、何年間で何機を調達するかを明確にした上で発注される事が多いのですが、日本では概ね5年間を見込んだ中期防衛力整備計画の期間中に何機、という形でしか明らかにされていません。これでは何年後まで生産ラインやサプライチェーンを維持しなければならないのかがわからず、企業は長期的な事業計画を立てにくくなります。

 また、日本の製造業の平均利益率は7.2%とされていますが、航空宇宙産業に携わる企業などで構成される民間公益団体、日本航空宇宙工業会の村山 滋会長(当時)は5月31日に行われた会見で、防衛用航空機の利益率が7.2%に達していないことを明らかにしています。

 こうした理由により、防衛事業から撤退する企業は増加しており、三井E&S造船、横河電機、AGC(旧旭硝子)といった大手企業が次々と手を引いています。これらの企業は事業を継承する企業が見つかりましたが、今後も撤退企業が増加すると、事業を継承する企業が見つからず、結果として航空機を含め、自衛隊の装備品の運用に支障をきたす可能性が高くなると思われます。

 装備品の調達計画の明確化や利益率の改善も喫緊の課題ですが、国内防衛産業基盤の維持と育成を図る上では、防衛装備品とその技術の海外への移転、すなわち輸出も避けては通れない道であると筆者は思います。

 日本政府は2014年4月に、防衛装備品の海外輸出を可能にする防衛装備移転三原則を制定しています。しかし、それから8年が経過した現在も、海外への防衛装備品の輸出実績は、2020年8月にフィリピンとの間で成立した三菱電機製の警戒管制レーダー1件しかありません。

海外への装備品アピールだけじゃない 防衛装備庁の新たな動き

 日本は防衛装備品の輸出を原則として禁じた、いわゆる武器輸出三原則により、長期に渡って防衛装備品の輸出をしてきませんでした。このため、日本企業の持つ技術力が海外で認知されておらず、それ故に競争力に乏しいことも、日本国内で開発された防衛装備品の輸出実績が増加しない理由の一つと考えられます。

 このため防衛装備庁は、6月にフランスのパリで開催された防衛装備展示会「ユーロサトリ2022」でレーダーなどの完成品をアピールする一方、海外の防衛企業の下請け受注を得ることで、国内防衛産業の維持・育成を図るための働きかけも開始しています。

 日本の民間航空機産業は、ボーイングやエアバス、エンジンメーカーのプラット・アンド・ホイットニーといった欧米企業の下請け事業によって業績を拡大し、技術力を世界に認知させてきました。

 海外の防衛企業の下請け事業は、US-2救難飛行艇などの航空機やレーダーなどの完成品輸出に比べて地味な印象を受けるかもしれませんが、日本の企業の技術力を世界に認知させ、業績の拡大に繋げる有効な手段だと筆者は考えますし、今後もその進展に注目していきたいとも思います。

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