揺らぐ戦車のカタチ メーカーが模索する未来の姿は? 「ユーロサトリ2022」を振り返る

揺らぐ戦車のカタチ メーカーが模索する未来の姿は? 「ユーロサトリ2022」を振り返る

ドイツのラインメタルが出品したKF51「パンター」、主砲は130mm砲(Carl Schulze撮影)。

鳴り止まない戦車不要論の傍ら、メーカーはその進化の糸口を探り続けています。ウクライナ侵攻のさなかパリにて開催された兵器展示会で提示された「未来の絵」を見ると、戦車の概念そのものが変化しつつあるようです。

戦車不要論再燃中 メーカーはどう見ている?

 戦車が実戦で使われるたびに、戦車の要/不要論が再燃します。ロシアによるウクライナ侵攻では、ネット上に投稿された戦車の残骸の映像が強烈な印象を与え、不要論が取り沙汰されてきました。そうした中、2022年6月にパリで開催された兵器展示会「ユーロサトリ2022」では、新型戦車のコンセプトが各メーカーから発表されました。

 戦車は発明されて以来、「走」「攻」「守」の3要素のバランスを取りながら進化し、20世紀末にはここに「IT」(情報技術)という要素が加わりました。しかし盛り過ぎて肥大化し、進化するのは限界点に達したともいわれています。

「ユーロサトリ2022」に出品された新型戦車のデモンストレーターはいかにも未来的なデザインで、第一印象は「主砲も砲塔もデカい」です。主砲が大口径、長砲身化し火力はパワーアップされたように見えますが、「攻」はむしろ低下傾向です。それは砲弾の収納数が減らされているからです。

 たとえばドイツのラインメタルが展示したKF51の主砲は130mm砲と、既存の戦車砲からひと回り大きくなっているものの、砲塔内の主砲弾収納数は20発です。これは現行戦車であるアメリカのM1A2「エイブラムス」、ドイツの「レオパルド2」、ロシアのT-14が42発、フランスの「ルクレール」が40発であるのに比べ、半分程度です。

 この数は、「対機甲戦における1会戦あたり戦車1両の使用弾数は平均36発」という、戦訓データの研究結果が基準になっています。肥大化した戦車はダイエットのため、「走」「攻」「守」「IT」の要素から「攻」を削ったのです。

戦車は「攻」を削ってなにを得た?

 KF51が主砲弾を減らしてまで搭載したのは、ドローンも迎撃できる7.62mm機銃を備えたNatterリモートウエポンシステム、乗員用の高機能外部視察サイト、そしてイスラエル企業UVision製徘徊型兵器「Hero-120」の4連装キャニスターです。車内にはHero-120などのUAVのオペレーター席も用意できるそうです。

 Hero-120は「徘徊型兵器」、すなわち、敵を捜索し必要があれば突入するという自爆型ドローンともいわれる類の兵器で、昨年アメリカ海兵隊が導入を決めたことで話題となりました。

 弾頭炸薬4.5kgで対戦車用にも使用可能、射程60km、飛翔時間最大60分、キャニスターから発射でき1発のキャニスター込みの重量は18kgとコンパクトになっています。電子光学/赤外線カメラを搭載し、昼夜を問わず使用可能で、電動モーター推進のため静粛性と熱源抑制に優れ、発見されにくいという特徴があります。

 KF51は、あえて戦車の宿敵との融合を提案したのです。

「レオパルド2」×「ルクレール」の衝撃から4年 EMBTは…

 独仏共同での次世代ヨーロッパ標準戦車開発を目的に発足した、ドイツのクラウスマファイ・ウエッグマン(KMW)とフランスのネクスタによる合弁会社KNDSは、EMBT(欧州主力戦車)を出展しました。

 同社は2018年の「ユーロサトリ」にて、ドイツ戦車「レオパルド2A7」の車体にフランス戦車「ルクレール」の砲塔を載せた合体戦車を出展して注目されましたが、これは独仏共同のシンボルであり、EMBTのベースではありませんでした。

 今回のものは、より本格的なデモンストレーターとなっています。車体は「レオパルド2A7」の改造流用のようですが、砲塔は新型です。車体や砲塔のあちこちにセンサーやアンテナを満載しているのが印象的です。乗員は2名から4名で、無人/有人プラットフォーム(後述)をネットワークで指揮統制できる専門のオペレーターを乗車させられるのが特徴です。

 砲塔はまた独特な形状をしており、目立つのはリモートウエポンシステムが2基搭載できることで、標準的な7.62mm機銃のほかに、ドローン対策として対空戦車顔負けの30mm機関砲を備えたARX30というリモートウエポンシステムも装備し、ひと昔前の多砲塔戦車のような体裁です。

地上戦にも無人兵器の波

 ロシアのウクライナ侵攻中に開催された「ユーロサトリ2022」で見えてきたのは、戦車はこれまでの対機甲戦ではなく、将来の有人/無人プラットフォームが動きまわるネットワーク化された戦場で、戦闘ユニットを指揮統制するコアの役割が期待されているということです。

 ここでいう「有人プラットフォーム」とは戦車など有人戦闘車輌や歩兵のことで、「無人プラットフォーム」はドローンやロボット戦闘車のイメージです。現在でもドローンや無人車に危険性の高い最前線のパトロール任務や砲兵の射撃観測などを担わせていますが、これを一歩進めて同じ小隊なり中隊なりの戦闘ユニットに戦車や歩兵とロボット戦闘車(RCV)を配備し、戦力として協同し戦闘行動する方法が各国で研究されています。

 今回の各社展示内容は、その役割分担を明確にして、有人プラットフォームは「走」「守」「IT」に特化し、無人プラットフォームに「攻」を移管しようというものであり、戦車の概念とはもう違うかもしれません。

 これら展示されたデモンストレーターは、メーカーや用兵側の「将来の夢」がいっぱい詰まった展示見本品ですが、昨今のウクライナの状況を見ているとハイテクとともに伝統的な「枯れた技術」も必要です。実戦は、メーカーや用兵側の想定通りには展開しないことも示唆しています。

 結局、未来の戦車はどこに行くのか、わからなくなります。しかしこれらSF未来的な戦車の残骸を想像したくないのは、誰も一致するところでしょう。

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