いよいよ開業「東京駅の新バスターミナル」 何が変わる? 利便性は? 全国で街の“核”になるBT

いよいよ開業「東京駅の新バスターミナル」 何が変わる? 利便性は? 全国で街の“核”になるBT

バスターミナル東京八重洲が入る東京ミッドタウン八重洲(右)。左側の大屋根が東京駅(成定竜一撮影)。

東京駅前の新バスターミナル開業で、利便性はどう変わるでしょうか。複数の再開発計画に“横串”をさして生まれる巨大なバスターミナルは、今後の街づくりにも大きな影響を及ぼしそうです。すでに全国で新設計画も始動しています。

日本最大級バスターミナルの“第一期”いよいよオープン

 2022年9月17日(土)、東京駅前に「バスターミナル東京八重洲」(以下、「BTY」)が開業します。2028年度の全面開業に向け3回に分け順次開業し、今回はその第一期開業という位置づけです。

 全面開業すると、専有床面積約2万1000平方メートル、乗降用20バース、待機用8バースを備える、高速バス中心のバスターミナルとしては国内最大級の規模になる予定です。そのうち第一期エリアは、乗降用に6つ、待機用に3つのバースと、発券窓口、待合ロビー、コンビニなどを備えています。

 BTYの構造はちょっと複雑で、東京駅八重洲口の向かいに建設される3棟の高層ビル、それぞれの地下に設けられます。最終的に、第一期エリアと第三期エリアは一体化され、第二期エリアは大通りや地下街を挟んで離れた施設となる予定です。その、事実上は南北2つに分かれた施設全体を、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)が整備し、京王電鉄バスが運営します。

高速バスの拠点が分散している東京駅前

 東京駅周辺には、乗車用11バース(降車は別)という大規模な八重洲南口の「東京駅JR高速バスターミナル」があり、ジェイアールバス関東とその共同運行先が中心に発着しています。また、八重洲側と丸の内側の路上に高速バス停留所が分散しているほか、徒歩5分ほどの「鍛冶橋駐車場」からも多くの高速バスが発着しています。

 このうち、八重洲側の路上停留所と鍛冶橋の発着便全てが、最終的にはBTYに移行する予定です。

 現在は、乗客は屋外でバスを待つ必要があります。歩道上に多数の乗客が並び、また車道にはバスが停車して円滑な通行を妨げることもありました。これらが、空調完備のロビーを備えたBTYに移行することで、バス待ち環境も道路環境も向上します。

八重洲のイメージ変わるかも

 また、東京駅の八重洲側は、会社勤めの人中心の「平日の街」というイメージがあります。しかし、再開発により、商業施設や高級ホテルなどが入居する「東京ミッドタウン八重洲」が開業し、その地下にBTY(第一期)が設けられることで、人の流れも変わりそうです。「八重洲」が一つの街のブランドとなり、京橋、銀座や日本橋方面との回遊性も高まることで、ショッピング客の来訪も増えることでしょう。

 BTYの整備にあたっては、有識者会議により、現停留所からBTYに移行する時期について、優先順位が振られています。おおむね、第一優先が路上停留所の便、第二優先が鍛冶橋の便です。ただし、路上停留所は昼行便が、鍛冶橋は夜行便が中心でピーク時間帯が異なるため、必ずしも優先順位の通りに移行するわけではありません。京成バスらの千葉県方面への路線全便と、鍛冶橋発着便の一部が先に移行する一方、東北急行バスらの路上発着便は当面そのまま、という具合です。

 BTYには、二つの大きな特徴があります。

 まず、東京駅正面という一等地に、それも、別々の再開発組合が建設する3棟のビルの地下に、「横串」を刺すように広い敷地を確保できたことです。高層ビルの中でも、地下1~2階は「稼げる」フロアですから、商業施設などに活用すれば、より大きな収益を望めるはずです。それでも実現したのは、URが持つ公的性格や、数々の再開発に取り組んだ実績による信頼があってのことだと考えられます。

 また、この地区は「都市再生緊急整備地域」に指定されています。同地域内で再開発事業を実施する際、バスターミナルのような公共施設を整備するなど公共貢献を行うことで、容積率などの規制の緩和が認められることがあります。大雑把に言えば、より高いビルを建てることが認められるのです。そのような制度をフル活用して、BTYと再開発ビルの建設が実現したと言えるでしょう。

 BTYのもう一つの特徴が、多数のバス便をさばく複雑なオペレーションです。

乗り入れ路線は「短距離」「長距離」…中間はない?

 BTYへの乗り入れ路線は、二つに大別できます。まず、頻発する君津、木更津、銚子など千葉県方面への短距離路線で、夕方には5分間隔で発車していきます。もう一つが、主に夜行の長距離路線です。北は青森、西は福岡への路線がありますが、圧倒的に便数が多いのが京阪神方面で、次に名古屋と仙台が続きます。

 意外なことに、「高速バス市場の本丸」とも言える、所要時間3時間前後の中距離路線はごく少数です。福島、いわき、静岡といった中距離路線は、お向かいのJRバスが得意としているからです。

 高速バスは一般的に、短距離路線は自由席制で、中距離と長距離が座席指定制です。自由席路線は乗客に並んで待ってもらう必要があるので、待機列のスペースが必要です。一方の座席指定制路線は、列を作る必要はありません。ただし、長距離路線は、複数のバス事業者が競合して運行しており、同じ時間帯に、別々の会社の同じ行き先の便が続々と発車します。ほぼ全員が事前にウェブ予約をしているので、予約した便をわかりやすく案内し、安心感を持ってバスを待ってもらうことが重要です。

 のりばのシーンを想像すると、夕方18時、19時台は、千葉県方面への短距離路線が中心に発車します。特に東京湾アクアライン方面は、木更津、君津、安房鴨川といった多様な行先に5分間隔で発車します。いずれの便も木更津金田バスターミナルを経由しますが、ここには大規模なパーク&ライド駐車場が併設されていて、自家用車と組み合わせた“高速バス通勤”が発達しています。夕方のBTYは、郊外の自宅へ帰る通勤客が列を作って電車を待つ、私鉄ターミナル駅のような雰囲気になるでしょう。

 夜になると、長距離の夜行路線が増えます。22時台は京阪神、23時台以降は名古屋と仙台への便が中心です。前述の通り、同じ行先の便が3本ほど連続したり、隣接のりばの便も同じ行先だったりすることも想定されます。乗客は、スマホに届いた予約確認メールと、出発便案内のデジタルサイネージとを見比べて、バス事業者名や便名を手掛かりに自分が乗る予定の便ののりばを知ることになります。

 ただし、バースの前にある待機列スペースは、自由席制路線のためのものです。座席指定制路線の乗客は、バス入線の案内があるまで、ロビー内で待つことになります。

全国でバスターミナル建設ラッシュが始まっている

 運営する側からみて難しいのは、発着便があまりに多いことから、自由席/座席指定の違いや方面の違いによって、バースを使い分けるような面積の余裕がないことです。同一のバースに、自由席の通勤路線と長距離夜行路線、さらに一部の到着便が混在することになりそうです。乗客の案内には相当神経を使うはずです。

 運営を担当する京王電鉄バスは、旧・新宿高速バスターミナルを長年運営し、「バスタ新宿」の運営にも深く関わっています。蓄積されたノウハウを活用し、安全かつ円滑に運営されることを期待します。

 さて、2016年の「バスタ新宿」開業以来、街づくりの分野で高速バスターミナルに注目が集まっています。国土交通省では、法改正も行って、全国9か所の交通ターミナルを整備する「バスタプロジェクト」を進めています(一部は路線バス中心のターミナル。事業化が決定していないものも含む)。東京の浜松町や渋谷、さらには新大阪など、大都市部において、自治体や民間のプロジェクトも相次いでいます。

 高速バス業界は、長らく、大都市の都心部における停留所不足に悩まされてきました。特に繁忙日の続行便(2号車、3号車)を設定できず、満席でお断りすることが増えたことがコロナ前の大きな課題でした。「バスタ新宿」の発着便数を見ると、コロナ前の8割弱にまで回復してきており、「バスターミナル新設ラッシュ」が高速バス市場の成長を後押ししてくれることを期待しています。

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