バス乗車時「どちらまで?」と聞かれる…行先申告制のバスなぜ存在?

バス乗車時「どちらまで?」と聞かれる…行先申告制のバスなぜ存在?

吉祥寺駅北口。手前の関東バス西10系統は先払いの均一運賃、奥の西武バス吉64系統は行先申告制(乗りものニュース編集部撮影)。

東京の路線バスには、「先払い」の均一運賃制と、「後払い」の区間運賃制がありますが、なかには乗車した際に「どちらまで?」と聞かれる「行先申告制の先払い」路線もあります。なぜこうも混在しているのでしょうか。

あっちの路線はすんなり乗車、こっちの路線は「どちらまで?」と聞かれる

 東京23区のすぐ西側、武蔵野市の吉祥寺駅は、地域における路線バスの一大ターミナルです。北口からは西武バスと関東バスが発着し、北の西武新宿線、同池袋線方面へ向かう様々な路線があります。
 
 ここから西武池袋線の石神井公園駅、大泉学園駅(いずれも練馬区)方面へ向かう西武バスは、運賃均一制の220円です。乗客は前扉からICカードをタッチしたり、現金を運賃箱に投入したりして、次々と乗り込んでいきます。しかし、大泉学園駅のひと駅西側、保谷駅へ向かうバスは、ちょっと違います。

 保谷駅行きのバスは、乗車時に乗務員から「どちらまで?」と聞かれます。乗務員はICカードリーダーを手でおさえており、行先を聞いて端末を操作、乗客はそこで初めてICカードをタッチして車内へ進めます。

 石神井公園や大泉学園方面では行先を聞かれることはないのに、なぜこのような違いがあるのでしょうか。

 西武バスによると、保谷駅行きは「運賃統一区間と、区間によって運賃が変わる区間を横断する路線」だからだといいます。

 というのも、東京23区内と武蔵野市・三鷹市は同じ料金圏に属し均一運賃制が適用されるのに対し、それ以外の多摩地域や埼玉県内では、別の運賃体系が適用されるからです。これは、国が定めた運賃の地区ルールに則っています。

 西武バスの23区内ならびに武蔵野市・三鷹市の路線は、前出の通り「先払い」の均一運賃220円ですが、2市以外の多摩地区ならびに埼玉県内の路線は基本的に乗車区間で運賃が変動する「後払い」を採用しています。この場合、中扉から乗車し、現金乗車であれば整理券を取る必要があります。

 これらの中間的な位置づけの乗車方法が、「行先申告制の先払い」路線というわけです。保谷駅は西東京市に位置しており、吉祥寺からのバスは武蔵野市・練馬区・西東京市をまたぐので、申告した行先により運賃が微妙に異なるケースがあります。

 東京23区内から多摩地区、埼玉県に路線網をもつ西武バスの場合、このような行先申告制の路線は、吉祥寺~保谷の吉63・66系統を含め、合計27系統もあるそうです。

後払いにしないのにはワケがある

 しかしながら、異なる運賃地区をまたぐ区間運賃の路線ならば、他の多摩地域の路線と同様、「後払い」を採用しても問題ないようにも思えます。なぜあえて「行先申告制の先払い」なのでしょうか。

「付近の路線バスを運行する他社とも運用が統一されることや、降車の多い終点到着時のラッシュに、前後ドアを開放できることからスムーズに対応できます」(西武バス)。

 行先申告制は、運賃地区の違いというルールに則りつつ、運行をスムーズにするひとつの工夫といえそうです。一方で、「ご利用に慣れていらっしゃらない方には複雑に感じられる仕組みであることや、誤収受のリスクが他より高い」(西武バス)といったデメリットもあるといいます。

 例外もいくつかあります。

 たとえば、吉祥寺駅から大泉学園駅方面へ向かう西武バス吉61-1系統の終点は、埼玉県新座市の「新座栄」ですが、乗車時に行先は聞かれず、乗り通しても220円です。西武バスによると、「練馬区にかなり近い停留所ということから運賃統一区間として扱っております」とのこと。

 また、関東バスが運行する吉祥寺駅~柳沢駅(西武新宿線 西武柳沢駅、西東京市)間の吉53系統も、西東京市内だけを利用する場合は180円なのですが、行先は聞かれません。西東京市内を走るのは終点付近のわずかな区間で、市内だけの利用はほとんどないことから、いちいち行先を聞かず、運賃箱に設置している案内板やバス停で運賃の違いを案内しているのだとか。これも、運行をスムーズにするひとつの工夫でしょう。

 このような「行先申告制の先払い」路線は、東京の他の事業者や、東京以外でも多々存在するものの、デメリットもあることから、ここ10年ほどで「後払い」に変更した事例もあります。

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