車のインパネ「ボタンだらけ」は悪なのか “ツルツル化”が進行 増えた機能と操作性どう両立

車のインパネ「ボタンだらけ」は悪なのか “ツルツル化”が進行 増えた機能と操作性どう両立

日産セレナのインパネ。エアコン操作の多くはタッチスイッチ。シフトレバーはボタン化するなどしている(画像:日産)。

クルマのインパネなど、操作系のシンプル化が進んでいます。増えていく機能に、いちいちボタンを増やしては、ボタンだらけになって見た目も悪い、かといってタッチパネルに収めては操作性しづらい--その落としどころを探ります。

クルマの機能増えすぎ? スイッチどうするか

 2022年11月、トヨタの新型「プリウス」と、日産の新型「セレナ」という注目の2台が、それぞれお披露目されました。そこで、ちょっと気になったのは、どちらも大きなセンターディスプレイを備えて、そこに数多くの操作系が集約されていたことです。

 セレナで言えば、エアコンの操作にもツルツルのタッチセンサーが採用されています。端的に言えば、物理スイッチがずいぶんと減っているのです。まるでガラケー(フューチャーフォン)からスマートフォンへ進化したかのように、クルマのスイッチ類も変化しているようです。

 実のところ、クルマのスイッチは、どのメーカーも頭を悩ます問題のひとつと言えるでしょう。なぜなら、近年のクルマは、先進運転支援システムやコネクテッド機能、エンターテインメント機能の進化にあわせて、運転手が操作する機能が増える一方です。平成の初めのころは、運転操作以外ではエアコンとラジオくらいしかなかったのが、今ではカーナビにオーディオ、スマートフォンとの連携、エンジン特性の変更、ACC(全車速域追従機能)にステアリングアシスト、周辺カメラ、メーターディスプレイの表示変更など、数多くの操作が運転手に求められています。

 機能が増えて、操作が増えれば、当然、操作のためのスイッチも増えるのが道理。かといって、スイッチを増やしまくれば、それらを覚えきれなくなるうえ、デザイン面でも煩雑になるものです。

 そこで、韓国ヒョンデの燃料電池車「ネッソ」は、開き直ってスイッチをズラリと並べてレトロ感を生み出しているのも、面白いアプローチです。逆にテスラなどは、極端なまでに物理スイッチを減らして、スタイリッシュなインテリアを実現しています。とはいえ、あまりにタッチパネルに集約しすぎると、いわゆる初見殺しで、慣れるまでが大変です。

 つまり、使いやすさと見た目の良さのバランスが焦点になるというわけです。

ボタン増やしたい! その「場所」は…

 そこで苦肉の策として、メルセデス・ベンツは2020年に、ステアリングのスポークを3本から2本増やした新世代ステアリングを「Eクラス」に導入します。スポークが増えただけボタンが配置しやすくなるというわけです。

 レクサスの新型「NX」では、ヘッドアップディスプレイでステアリングスイッチの操作方法を案内する「タッチトレーサーオペレーション」という機能が用意されています。手元を見なくても、いまどのスイッチに触っているかが案内され、操作を間違えることなく行えるようになります。

 近年に登場した新型車のインパネを見ていると、タッチ式と物理スイッチを使い分けるのがトレンドになっているようです。ディスプレイは大型化する一方ですが、すべてをディスプレイでのタッチスイッチにするのではなく、必要なものは物理的なスイッチを残すという方向です。

 たとえば、ステアリングには、オーディオとモニター表示、電話、そしてACCの設定のための物理スイッチを残します。

 センターディスプレイは大型化しますが、電源のオン/オフと音量調整のスイッチは残します。また、エアコンのスイッチも温度調整は物理スイッチとし、風向きなどはタッチ式に。ハザードのスイッチも物理です。

 それ以外の、ナビの操作、クルマの諸機能の調整、クルマの情報表示、エンタメ系はセンターディスプレイなどのタッチセンサーとします。

 ツルツル感が強い新型「セレナ」や、先進感の強い新型「プリウス」や日産「アリア」も、よくよく見れば、オーディオの電源スイッチが物理スイッチとして残っています。「アリア」はエアコンがすべてタッチ式になっていますが、「プリウス」と「セレナ」はエアコンの操作用物理スイッチが存在します。さらに日産「サクラ」は、ナビ用の物理スイッチも残っていますが、デザイン的にまっ黒にして目立たないようになっています。

 思えばスマートフォンも、スイッチをすべてなくしたわけではありません。小さくなっているものの、ボリュームとメインスイッチは残っているのです。同様にクルマも、タッチセンサー化を進めつつも、大事なスイッチは物理で残す、そんな方向性に進むのではないでしょうか。

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  • 2

    タッチパネル式は確かに近代的で、おしゃれな感じもしますが、運転中でも操作頻度の高いオーディオやエアコンはダイヤル式などの物理的機構のほうが、ブラインド操作が可能で安全です。1番の方がコメントしているように、使い慣れているスイッチ類でいいのではないかと思います。現在、私はホンダ・ヴェゼルに乗っていますが、エアコンの操作スイッチがタッチパネル式で実に操作しにくく危険性を感じています。

  • 1

    今まで使い慣れていた感覚でいいのでは? 無理にスリム化しても、触る箇所も少ない方がよい。 面倒くさいから。

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