次期戦闘機はやっぱり英主導か 日本より「技術的に勝っている」? ただトップは日本人に

次期戦闘機はやっぱり英主導か 日本より「技術的に勝っている」? ただトップは日本人に

航空自衛隊のF-2戦闘機。日英伊が開発する次期戦闘機はこれを置き換える(画像:航空自衛隊)。

日英伊の3国共同となる次期戦闘機の開発をめぐり、発注を行う共同研究機関が設けられること、その本部は英国に置かれることが報じられています。「わが国主導」を閣議決定した日本ですが、技術的に差があると見られているようです。

日英伊のGCAP「イギリス企業が日本企業より技術的に勝っている部分が多い」

 日本とイギリス、イタリアの3か国が共同で進める次期戦闘機の開発計画「GCAP」(Grobal Combat Air Programme/グローバル戦闘航空プログラム)が、少しずつ具体化へ近づいているのかもしれません。2023年9月26日付の読売新聞は日本政府関係者の話として、3か国が2025年秋を目標に、新戦闘機の機体に求められる要求項目などを策定し、その設計や製造などを担うJV(共同企業体)へ発注することなどを目的とする“共同開発機関”を発足させるための話し合いが行われていると報じました。

 GCAPは航空自衛隊が運用するF-2戦闘機と、イギリス、イタリア両空軍が運用するユーロファイター・タイフーン戦闘機を後継する新戦闘機を共同で開発する計画です。JVは三菱重工業やイギリスのBAEシステムズ、イタリアのレオナルドなどの民間企業が設立します。

 日本政府は2018年12月、F-2の後継機を開発するにあたって「外国との協力を視野に入れながら、わが国主導の開発に早期に着手する」という方針を閣議決定しており、読売新聞はこの方針を堅持するため、共同開発機関のトップに日本人が就任する方向で話し合いが進められていると報じています。

 他方、共同開発機関の本部はイギリスに置く方向で調整が進められているとも読売新聞は報じていますが、同紙はその理由として「イギリス企業が日本企業より技術的に勝っている部分が多いと指摘されており、イギリスに本部を置くのが妥当と判断したとみられる」としています。

 本当に「イギリス企業が日本企業より技術的に勝っている部分が多い」のか否かを判断する術を筆者(竹内 修:軍事ジャーリスト)は持ちませんが、イギリス企業が新戦闘機の開発に向けた新技術を続々と開発していることだけは確かだと思います。

すでに数歩先へ進めていたイギリス

 そもそもGCAPは、イギリスが進めていた新戦闘機「テンペスト」と、航空自衛隊F-2を後継する次期戦闘機の開発計画を統合したものです。

 イギリス政府はテンペストの開発・製造コストを抑えるには、イギリスの航空防衛産業がこれまで以上に生産性、効率性、持続性を向上させる必要があるとして、産業界にさらなるイノベーション(技術革新)などを求めていました。

 BAEシステムズやロールス・ロイスなどの企業や研究機関がテンペストの開発のために結成した「チーム・テンペスト」は、イギリス政府の要求を充たすべく、出来る限り紙の図面を使用せずにコンピュータ上で設計作業を行い、試験も可能な限り現実世界とコンピュータ上の仮想空間を融合させた「XR」(Extended reality/拡張現実)におけるシミュレーションで行う「デジタルエンジニアリング」を活用し、既存の戦闘機よりも製造行程を自動化する方針を明確にしていました。

 BAEシステムズはその方針を実現するため、2020年に同社の航空機開発・製造の拠点であるランカシャー州ウォートンへ、テンペストの開発・製造を行う「インダストリー4.0」ファクトリーを開設しています。

 数百万ポンドを投資し、40社以上の企業や学術研究機関の協力を得て先進的製造技術を集約したこのファクトリーはデジタルエンジニアリングを活用する設計・開発施設と製造工程の自動化に寄与する産業用ロボットを取り入れており、テンペストのコンセプト形状の設計と試験は、デジタル空間上で行われています。

 GCAPで開発される新戦闘機の開発作業は日英伊の3か国で分担されることになると思われますが、3か国で行われた作業の成果を持ち寄って一つの戦闘機を開発するための場所としては、インダストリー4.0ファクトリーが最適なのではないかと筆者は思います。

部品は3Dプリンターで そのメリットとは?

 BAEシステムズは2022年7月にイギリスで開催されたファンボロー・エアショーで、テンペスト関連の展示を集めた「テンペスト・ショーケース」というコーナーが設けていました。このコーナーではインダストリー4.0ファクトリーで使用されている産業用ロボットや、実用機への適用を視野に入れた3Dプリンター製の部品の試作品なども展示されています。

 3Dプリンター製部品の活用は、開発・製造コストの低減にも寄与しますが、BAEシステムズの担当者は、「最大のメリットは、運用期間中の戦略環境や戦闘様相の変化に対応するための仕様の変更に迅速な対応が可能であること」だと述べています。

 長い運用期間が予想され、日英伊や他の導入国がある程度独自に改良できる戦闘機とするためには、3Dプリンター製部品の活用は不可欠であると言えるでしょう。

 前出の読売新聞の記事は、「日本国内で機体を組み立てるには大型の施設を整備する必要があり、政府は、国内の生産体制の検討も急ぐ方針」であると報じていますが、単に大型の施設というだけでなく、デジタルエンジニアリングや3Dプリンター製部品の活用など、これまでの国産航空機とはまったく異なる思想に基づいた生産施設と体制を構築する必要があると思いますし、それらの技術では確実に日本(とイタリア)をリードしている企業の多いイギリスに新戦闘機の共同開発期間の本部を置くことは合理的であると筆者は思います。

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