チョバムアーマーとは? 複合装甲とは? 機密のヴェールで覆われた「戦車装甲」の世界

チョバムアーマーとは? 複合装甲とは? 機密のヴェールで覆われた「戦車装甲」の世界

ボービントン戦車博物館の「チャレンジャー1」。世界で初めて複合装甲の採用を公表したFV4211試作戦車は、その後「チャレンジャー1」として制式化された(柘植優介撮影)。

「複合装甲」とは戦車などに使用される、複数の素材を組み合わせて防御力を高めた装甲のことです。一部は「チョバムアーマー」と呼ばれますが、ところで「チョバム」とはなんなのでしょうか。また、最新の複合装甲にも迫ります。

宇宙世紀にもその名が聞こえる「チョバムアーマー」とは

 1989(平成元)年に発売されたOVA(オリジナルビデオアニメ)『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』は、ビデオテープとDVD合わせシリーズ累計約50万本を販売し、OVAとして大ヒットしたアニメですが、そのなかに登場する「ガンダムNT-1/アレックス」が装着する増加装甲の名称が「チョバムアーマー」といいました。

 実はこの「チョバムアーマー」、現実世界にも同名のものが実在し、アメリカのM1「エイブラムス」戦車や、イギリスの「チャレンジャー1」戦車などに用いられており、戦車に用いる「複合装甲(後述)」の代名詞的存在です。前述の「ガンダムNT-1/アレックス」のものは、名称こそ現実の「チョバムアーマー」が由来のひとつではあるもののまったくの別物、という設定だそうです

 なお、現実世界の「チョバムアーマー」は、あくまでも複合装甲の一種であり、すべての複合装甲を指すものではありません。そもそも「複合装甲」とは、複数の素材を組み合わせた装甲全般を指す名称で、鋼鉄よりも強い合成樹脂や、カーボン複合材、ガラス繊維(グラスファイバー)、セラミックなど異なる物質を使用して、鋼鉄だけよりも高い防御力を生み出すものです。

 では「チョバムアーマー」とは何かというと、これはイギリスが開発した初期の複合装甲のことを指します。

 1960年代初頭、アメリカやイギリスでは、鉄よりも固いセラミックを用いた装甲について研究がなされており、イギリスの研究拠点である陸軍軍用車両技術研究所(MVEE)は、当時ロンドン近郊のサリー州チャートシーにあるチョーバムという町にありました。

 そして「チョバム」とは、「チョーバムで開発されたからチョバムアーマー」というのが、冗談のような本当の話です。1971(昭和46)年、FV4211試作戦車の発表とともに最先端の装甲技術として公表されると、その名は一躍、世界中で知られるようになりました。

最新の複合装甲は「チョバムアーマー」とはまったくの別モノ

 一方、複合装甲そのものはアメリカやイギリスだけでなく、当時ソ連などでも研究されており、実はソ連のほうが先に実用化していました。

 ソ連の複合装甲は、1968(昭和43)年より運用を始めたT-64A戦車において初めて採用されています。しかしソ連はこの最新鋭技術をひた隠しにしたため、世界で初めて報道発表した「チョバムアーマー」が、世界的に複合装甲の代名詞のように広まったというわけです。

 ただし、技術は日進月歩です。ごく初期の複合装甲である「チョバムアーマー」はすでに旧式化しており、2020年現在、英語でも複合装甲のことは「コンポジットアーマー」と呼ぶ方が一般的です。

 1990年代以降、主流なのが「拘束セラミック装甲」と呼ばれるものです。チタンなどで構成された角型ケースの中に、セラミック素材を高い圧力をかけて封入したもので、ブロック構造なのが特徴です。これを戦車の車体や砲塔など必要な部分に配置していく形を採ります。

 実際のところは、複合装甲については各国とも第一級の国家機密のため、構成素材および生産技術ともにほとんどの点で真相は不明ですが、「チョバムアーマー」を始めとした従来の複合装甲が各種素材の板からなるのと比べると、複合装甲とひと括りにしても実はまったく違う構造だといえるでしょう。

 なお2020年現在、この拘束セラミック装甲を量産できる技術を持っているのは、日本を含めて5か国ほどだといわれています。

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