高速バス 新型コロナで需要減退 いまできることは何か 業界・乗務員のいまと今後

高速バス 新型コロナで需要減退 いまできることは何か 業界・乗務員のいまと今後

運行中のJR高速バス。乗客数は大きく落ち込んでおり、空席が目立つ(2020年4月、中島洋平撮影)。

新型コロナウイルスの影響で、高速バスは運休や減便が相次ぎ、乗客数も大幅に落ち込んでいます。この影響は、早くも2020年1月から始まりました。バス業界はいまどのような状況に置かれ、また、この難局をどう乗りきるのでしょうか。

バス業界の新型コロナの影響は1月から

 新型コロナウイルスの感染拡大は、高速バス業界にも大きな影響を与えています。4月17日(金)時点での影響や、これまでの経緯をまとめます。

 現在、高速バスのうち、長距離夜行路線についてはほとんどの便が運休しています。首都圏〜京阪神でいうと、ふだんは最大で1日に200往復近くの便が運行していますが、数往復のみに減っています。また、高速バスの多くを占める短・中距離の昼行路線(おおむね同一都道府県内、あるいは2、3の都道府県にまたがる路線)は、減便のうえで運行している路線が多く、便数はおおむね半分程度になっていると見られます。また、運行している便についても、乗車率が下落しています。

 バス業界の「異変」は、1月下旬に始まりました。同月27日、中国が国外への団体ツアーを禁止したことで、おもに中国発のツアーを請け負っていた貸切バス事業者の仕事が一気になくなります。翌28日には、国内の日本人で初の新型コロナウイルス感染者が、中国発のツアーを担当した貸切バス運転手であったと発表されました。これをきっかけに、国内の旅行会社が企画するバスツアーや、町内会などの団体旅行のキャンセルが始まり、一般的な貸切バス事業者にも影響が出始めました。

 貸切バス事業者のうち、おもに中国発のツアーを請け負う会社は小規模なところが多く、事業停止に追い込まれた会社もあります。

 2月下旬になると、高速バスにも影響が出始めました。政府が、27日に大型イベント自粛を、28日に小中高校の休校を要請したのをきっかけに、国内の出張や旅行といった移動の自粛が始まったのです。

帰省シーズンのひとコマが「東京脱出報道」に その背景

 もともと高速バスは、全国で毎日およそ1万5000便が運行され、航空国内線を上回る、のべ1億1000万人の利用があります。おもに「地方の人の都市への足」として、有名店でのショッピングやコンサート参加など、都市ならではの消費活動に向かう利用が多く見られます。

 さらに、2月後半から3月にかけては、学生の春休みにあたります。テーマパークなどへの旅行や帰省、進学や就職にともなう転居に向けた移動などが集中し、若年層の比率が大きい長距離夜行路線は、特に高い乗車率を見込める時期です。しかし、2月29日には東京ディズニーリゾート、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが臨時休園に入ったこともあり、急速に乗車率が下落しました。

 3月下旬には、一部のメディアで「若者が続々と高速バスで東京を“脱出”して帰省している」と報じられました。この時期はもともと相当な繁忙期です。運休便が増加していたため、数少ない便に乗客が集中し、その便に限っては乗車率が高いというシーンもありました。そのため、全体では例年比で7割から8割減少していたとはいえ、「続々と」というような報道が続いたのです。しかし、4月に入ると、もともと移動が減少する傾向にあるうえ、国による緊急事態宣言もあり、高速バスの利用はさらに落ち込みました。

 この間、各事業者は様々な対応に追われました。共同運行会社間で運休・減便の協議や、予約済みの乗客への連絡などです。運休の際は、原則として7日前までに国へ届出が必要ですが、今回は多くの路線で柔軟な対応が進み、即日運休となった路線もありました。

 高速バス事業者のなかには、路線バスを兼業する大手もある一方、高速バス専業、あるいは高速バスと貸切バスを中心に行う事業者もいます。前者では、高速バス担当の乗務員も一時的に路線バスへ乗務するなどの対策が行われています。しかし後者では、高速バスの運休は、即、乗務員の仕事がなくなることを意味します。

4月以降も運行/運休 バス会社はどうしているのか

 4月1日、国による緊急対策の一環として、雇用調整助成金の特例措置が決まりました。事業縮小を余儀なくされた企業が、一時的な休業などを行うことで雇用を維持した場合、国が助成金を出す制度です。新型コロナウイルスの影響による場合は、その対象や金額などが拡大されました。これにより、もともと業務量が減っていた貸切バス事業に加え、高速バスを運休して乗務員を一時的に休業させても、基本給を支払えることになりました。

 ただ現実には、この特例を適用しても、乗務員にとっては残業手当などのぶんの収入が減ると同時に、事業者にとっても給与と助成金の差額が「持ち出し」になります。また助成金の対象日数にも限界があります。それでも、高速道路料金や燃料費などを支払いつつ赤字で運行を続けるより、運休することで企業としての経営体力を温存し、雇用を維持することを多くの事業者が選択しました。

 前述の通り、現在、高速バスの長距離夜行路線についてはほとんどの路線が運休しています。出張などの利用が多い中距離の昼行路線は減便して運行していますが、乗車率は下落しています。通勤にも使われるような短距離路線では、需要の減少は緩やかですが、国により在宅勤務の徹底が働きかけられているなか、今後は減少が進むと考えられます。

 運行を続けている路線では、「出勤、出庫時に乗務員の検温を行う」「運行後、車内の手すりなどを消毒する」「車内に乗客用の消毒液を設置する」などの取り組みが行われており、公式サイトにて写真入りで取り組み内容を公開する事業者が増えています。車内の換気についても注目が集まっており、「エアコンの外気導入モード(自動換気装置)を使用する」といった取り組みを紹介している事業者もいます。

高速バス乗務員の雇用維持は絶対に必要 今後予想される大きな問題とは?

 私鉄系など老舗の高速バス事業者は、営業所(車庫)の土地を自社で所有する例が多いものの、新規参入事業者には借地で営業するところも多く、毎月、賃料が発生します。車両のリース代については国の政策で支払いが猶予される見込みですが、今後は営業所の維持費用などが課題になります。

 また、高速バスの乗務員は相当のスキルが求められるため、「厳しいときはクビを切り、需要が戻ったら新たに採用しよう」というわけにはいきません。雇用の維持は絶対に必要です。問題が長期化するようであれば、従来とは異なる雇用維持策が必要となりそうです。たとえば、労使で合意のうえ、バス事業者の正社員という立場のまま、期日を明確にしたうえで、人手不足が顕在化しているほかの業種で働いてもらう、といった取り組みです。ただ、これには様々な調整が必要になるでしょう。

 あと少し時間がかかりそうですが、無事に事態が収束すれば、その時には需要喚起策が求められます。これまで「ふっこう割」というような名称で行われた災害後の観光需要復旧策では、宿泊料金に対する補助制度がありました。新型コロナウイルス収束後の対策においては、鉄道、航空や高速バスといった公共交通による長距離移動も対象とするのは、高速道路や観光地の渋滞を避ける意味でも重要です。それに備え、多くの事業者で集中的に研修を実施し、乗務員のスキルアップや担当できる路線数の増加に努めています。

 なお、高速バスではなく地域の路線バスでも、減少幅は高速バスより小さいものの、乗客数が減っています。しかし、地域公共交通としての役割から、簡単に減便や運休することもできません。今後は、地域公共交通維持のあり方が大きな問題となりそうです。

関連記事(外部サイト)