インド洋東部で日米共同軍事訓練 なぜ米大使館までプッシュ? 注目すべき理由は…

インド洋東部で日米共同軍事訓練 なぜ米大使館までプッシュ? 注目すべき理由は…

アンダマン海で共同訓練に臨むアメリカ海軍の「ガブリエル・ギフォーズ」(写真前)と海上自衛隊の「てるづき」(画像:アメリカ海軍)。

自衛隊とアメリカ軍による共同訓練は年間を通し、規模の大小問わず多数が実施されています。そうしたなか、さして大規模でもなく珍しい内容でもない訓練について、なぜか在日米大使館がSNSで紹介し、一部界隈がざわめきました。

在日アメリカ大使館もプッシュ アンダマン海で日米共同訓練

 2020年4月2日(木)、インド洋の東に広がるアンダマン海において、海上自衛隊の護衛艦「てるづき」とアメリカ海軍の沿海域戦闘艦(LCS)「ガブリエル・ギフォーズ」が共同訓練を実施しました。

 日米が共同訓練を実施すること自体は何ら珍しいことではありませんし、今回の訓練内容も、指定された位置へ的確に艦を移動させる「戦術運動」と、お互いに通信でやり取りを行う「通信訓練」という、いわば共同訓練での定番のようなものです。

 しかし、こと今回の訓練に関しては、海上自衛隊とアメリカ太平洋艦隊がそれぞれプレスリリースを行ったのみならず、在日アメリカ大使館までも自身のTwitterアカウントで訓練の実施を日本語で紹介したのです。もちろん、大規模な訓練であればこれは何ら珍しいことではありませんが、すでに説明したように今回の訓練は内容や規模も特段珍しいものではありません。

 異例のプッシュの理由はどこにあるのでしょうか。

新しいこと尽くしの「ガブリエル・ギフォーズ」

 この訓練については、注目すべきふたつのポイントがあります。

 ひとつは、アメリカ側の参加艦艇が「ガブリエル・ギフォーズ」であるという点です。この艦は2019年9月に、日本を含めたインド太平洋地域を担当するアメリカ第7艦隊へ前方展開したばかりで、今回が海上自衛隊と実施した初めての共同訓練だったことに加え、その第7艦隊に前方展開した艦艇としては初めて、艦対艦ミサイル「NSM」を装備しているのです。

「ガブリエル・ギフォーズ」は「LCS(沿海域戦闘艦)」という種類の艦艇で、任務に合わせて装備(ミッションパッケージ)を変更することにより、小型武装船への対応から対潜水艦機雷戦まで、幅広い任務に対応できる特徴を有しています。その一方で、たとえば中国やロシアのような本格的な海軍力を持つ国の軍艦と対等に渡り合うには、武装が貧弱という弱点がありました。

 そこでこうした弱点を克服するべく、2018年にアメリカ海軍は敵の軍艦を攻撃するための対艦ミサイル「NSM」をLCSに順次、搭載していくことを決定しました。NSMは、敵のレーダーに探知されることを避けるために海面スレスレを飛行する、いわゆる「シースキミング」という飛翔方法で敵艦に接近し、エンジンルームや艦橋といった特定の場所を攻撃できる能力を持つ対艦ミサイルです。

 そして、このNSMをLCSで最初に装備することになったのが、この「ガブリエル・ギフォーズ」なのです。

訓練海域にも大きな意味

 もうひとつのポイントは、今回、訓練を実施した海域がアンダマン海であるということです。アンダマン海はマレー半島とインドのアンダマン・ニコバル諸島に囲まれた海域で、南東にはマラッカ海峡、その先には南シナ海が位置していることから、世界の海上交通にとっての要衝となっています。

 実は近年、海上自衛隊は、南シナ海よりもさらに西に位置するこのアンダマン海やインド洋などでの活動を活発化させてきています。

 たとえば、海上自衛隊は2017年以来「いずも」型護衛艦を中核とする部隊を、毎年インド太平洋方面に長期間派遣し、各国海軍との共同訓練や親善訪問を行っているほか、2019年5月にはその派遣の一環として護衛艦「いずも」「むらさめ」とインド海軍のフリゲート「サヒャドゥリ」がアンダマン海で共同対潜訓練を実施しています。

 今回の日米共同訓練も、こうした同海域での海上自衛隊の活動強化の一環と見ることができます。しかし、なぜ海上自衛隊はこの海域での活動を強化しているのでしょうか。

理由はやっぱり中国

 その理由は、やはり中国の海洋進出です。

 2020年4月現在、中国が海洋進出を強めているのは周知の事実ですが、その範囲は何も東シナ海や南シナ海にとどまっているわけではありません。実はこのアンダマン海やインド洋での活動も活発化してきています。

 中国が海洋進出を強める理由のひとつは、原油に代表される天然資源を運ぶ海上交通路「シーレーン」を防衛することです。天然資源に関する中国の対外依存度は非常に大きく、もしシーレーンが何らかの理由で閉ざされてしまえば、中国経済は大混乱に陥ってしまいます。

 そこで現在、中国はこのシーレーンが通過するミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、パキスタンに次々と港湾設備を整備し、いざとなれば海軍を速やかに展開する体制を整えているわけです。この中国の動向は俗に「真珠の首飾り」戦略と呼ばれています。

 こうした動向に対抗するべく、日本はこの海域での活動を活発化させ、日本のプレゼンスを高めようとしているわけです。今回の日米共同訓練も、規模こそ小さいものですが、その参加艦艇、そして場所を踏まえて考えると、その意義は極めて大きいといえるでしょう。

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