新型コロナ禍中に積極活動 強襲揚陸艦「アメリカ」 日本も他人事ではないその理由は?

新型コロナ禍中に積極活動 強襲揚陸艦「アメリカ」 日本も他人事ではないその理由は?

2020年4月10日、東シナ海での日米共同演習にて。強襲揚陸艦「アメリカ」に着艦するF-35B。写真奥は海上自衛隊の護衛艦「あけぼの」(画像:アメリカ海軍)。

優れた組織はいかなる事態に陥っても乗り切れるようバックアップを用意しておくものです。アメリカ海軍は主力の原子力空母が運用不能に陥ると、強襲揚陸艦が活動を活性化させました。実はこれ、日本もダイレクトに関わってくるお話です。

太平洋に展開中の米空母2隻で新型コロナウイルス確認

 2020年に入って世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス、その影響は名実ともに世界最強の海軍であるアメリカ海軍にも及んでいます。アメリカ海軍によれば、4月27日(月)時点までに同軍内で約1300名の軍人を含む合計1536名が新型コロナウイルスの検査で陽性を確認されています。

 なかでも深刻な被害を受けているのが、2020年1月から太平洋方面に展開していた空母「セオドア・ルーズベルト」です。4月末現在、グアムに寄港中の同艦では全乗員に対する検査が実施され、その結果955名の陽性が確認されたほか、1名が死亡しています。さらに、日本の横須賀に前方展開している空母「ロナルド・レーガン」でも、これまでに16名の乗員の陽性が確認されています。

 このように、新型コロナウイルスの影響によりアメリカ海軍の即応性に若干の不安が感じられるなかで、まるでその不安を払しょくするかのように活動を活発化させている艦艇があります。それが、インド太平洋方面に前方展開している強襲揚陸艦「アメリカ」です。

存在感を強める強襲揚陸艦「アメリカ」

「アメリカ」は、2019年12月に日本のアメリカ海軍佐世保基地へ配備されたばかりで、就役も2014(平成26)年と、現在アメリカ海軍で運用されている艦艇のなかでは最新鋭の強襲揚陸艦です。

 その特徴は何といっても航空機の運用能力で、ヘリコプターや戦闘機など30機近い航空機を搭載できます。さらに、従来の強襲揚陸艦よりも格納庫のスペースが拡張されたため、航空機のより柔軟な運用が可能です。

 しかし、その一方で従来の強襲揚陸艦に存在したウェルドック(LCACのような上陸用の舟艇などを搭載するスペース)が廃止されたため、たとえば戦車や装甲車のような大型車両を沖合から上陸させる能力は有していません。

 この「アメリカ」は、2020年1月末に佐世保基地を出港して以来、インド太平洋地域において長期間の積極的な展開活動を実施してきました。そして、それは新型コロナウイルスがアメリカ海軍の活動に支障をもたらすようになって以降も変わりません。

 4月10日(日)には東シナ海で海上自衛隊の護衛艦「あけぼの」と、そして4月21日(木)には南シナ海でオーストラリア海軍のフリゲート「パラマッタ」と、それぞれ共同訓練を実施しました。

 こうした共同訓練を実施することで、アメリカ海軍は、このような状況下でも即応性を維持し、この地域におけるプレゼンスを示し続ける姿勢を明確に示す狙いがあったのではないかと筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は考えます。

最新鋭ステルス戦闘機F-35Bを運用可能 海上自衛隊も他人事ではないワケ

 現在、日本を含む極東に展開するアメリカ海軍艦艇のなかで、この「アメリカ」が唯一、有している能力があります。それがアメリカ海兵隊の最新鋭ステルス戦闘機F-35Bの運用能力です。

 F-35Bは垂直着陸/短距離離陸(STOVL)能力を有している機体で、空母のように機体を射出するためのカタパルトや、着艦時に機体をひっかけるアレスティングワイヤーなどを装備していない「アメリカ」でも運用することができます。通常、「アメリカ」は6機程度のF-35Bを搭載しますが、必要とあればヘリコプターなどの搭載数を減らし、最大で20機程度のF-35Bを搭載できます。

 しかし裏を返せば、今回の新型コロナウイルスで大きな被害を受けた空母「セオドア・ルーズベルト」のように、もし「アメリカ」がなんらかの形で活動することができなくなってしまった場合、このF-35Bを運用できる艦艇は、極東には1隻も存在しなくなってしまいます。

 そこで注目されるのが、海上自衛隊のいずも型護衛艦です。いずも型は今後、段階的な改修を経て、F-35Bの運用能力を持つことになっていますが、そこで搭載されるのは航空自衛隊のF-35Bで、そうすれば太平洋側の警戒監視や島しょ防衛にも役に立つという見方ばかりが注目されがちです。

 しかし、もう少し視野を広げると、たとえば「アメリカ」が活動できない状況下でいずも型がアメリカ海兵隊のF-35Bを受け入れ、さまざまな海域を航行すれば、日米双方の練度向上につながるだけではなく、日米同盟にとってこれ以上ないアピールにもつながります。

「空母化」という言葉だけが独り歩きしがちないずも型護衛艦の改修ですが、今回の騒動でその意義に関する別の見方が垣間見えてきます。

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