2階建ての東海道線215系 少ない活躍のワケ 快速アクティーからも消え その功績と教訓

2階建ての東海道線215系 少ない活躍のワケ 快速アクティーからも消え その功績と教訓

「おはようライナー」で新宿に向かう215系。2020年6月現在はライナー以外の定期運用を持たない(2014年11月、児山 計撮影)。

着席人数を増やすべく、先頭車両以外オール2階建てとなった215系。乗客の評判も上々でしたが、快速アクティーからも外されて以降、ライナー以外の定期運用がありません。なぜ終日走らず、量産もされなかったのでしょうか。

定員増の215系 2階席など評判は上々 しかし……

 1980年代から90年代にかけ人々の通勤距離が延びてくると、「快適通勤」への対応が課題となりました。特に東海道本線は、東京から約60km離れた平塚駅付近から混雑が激化するため、着席保証列車の「湘南ライナー」が設定されました。

 わずか300円(のちに500円)の追加で着席通勤が可能とあって、湘南ライナーは大好評を博したため、より座席数を多くすべく2階建て車両として登場したのがJR東日本の215系です。

 215系は10両編成を組み、両先頭車を除く8両が2階建て車両で、座席定員は10両で1010名。東海道本線を走った近郊形の211系が10両で706名なので、座席数が約4割増加しています。

 215系は4編成が製造され、通勤時間帯の湘南ライナー、おはようライナーの運用に投入。座席こそ4人掛けのボックスシートですが、ラッシュ時は座席の快適性よりも座席数が重視され、乗客の評判はまずまず。日中は快速アクティーなどで使われましたが、こちらは2階席を中心に評判は上々でした。しかしこの快速アクティーの運用で問題が発生しました。

ネックになった乗降時間 役割はライナーや臨時列車のみに

 当時運行していた211系は、1300mm幅のドアが1両当たり片側3か所ついていましたが、215系は1000mm幅のドアが片側2か所。一度に乗り降りできる人数が1両当たり9人から4人に減少してしまいました。そのため乗降時間が大幅に伸びてしまい、行楽客で混雑する快速アクティーをはじめとした列車では、遅延が頻発しました。

 2001(平成13)年からは湘南新宿ラインに投入されましたが、こちらも2004(平成16)年で撤退。その後は平日のライナー運用のみとなり、休日は中央本線の臨時列車「ホリデー快速ビューやまなし」に使われる程度となってしまいました。

 215系の利点は座席が多いこと。一方で欠点は乗降時間がかかることです。ライナーはグリーン車を除いて立席の設定がないため1駅当たりの乗車人数が少なく、都心駅では降車のみ、郊外駅では乗車のみという利用形態です。そのため車内動線の乱れもなく、215系の欠点はそれほど顕在化しません。しかし、駅ごとに乗り降りが発生する普通や快速列車では、少ないドアと狭い通路を行き来する乗客で乗り降りに時間がかかってしまい、ダイヤ乱れの原因となりました。

 結果として215系は、乗降時間に大きな影響を与えないライナー列車や臨時列車といった役割に限定されてしまいました。また、ライナーとして走る車両もほかの特急形車両を有効活用することで対応したため、215系は10両編成4本の製造にとどまりました。

「満員電車ゼロ」へのハードルは高く

 快適通勤は多くの利用者が望むところであり、鉄道会社もそれを目指してさまざまな施策を導入しています。かつて東京都知事が「満員電車ゼロ」の公約を掲げたとき、2階建て電車のイメージパースが発表されました。

 しかしこれを走らせるには、電力設備や橋梁、トンネルやホームなどすべてを造り直す必要があり、不可能とは言わないまでも莫大な投資が必要で現実的ではありません。

 それでは215系は満員電車ゼロへの救世主になるかというと、乗降時間が伸びてしまう設計ではそれも難しいと言わざるを得ません。1本の列車がホームを長時間占有すると、後続の列車はホームに入れません。つまり停車時間が延びがちな215系では、走らせられる列車本数が減ってしまい、結果として輸送力が落ちてしまいます。

 むしろこれまでの通勤輸送の改善には、乗降時間の短縮を重視し、一度に多くの乗客が乗り降りできる多扉車やドア幅の広いワイドドア車などを投入したり、列車本数を増やすために複々線化を推進したりしてきました。同時に着席需要に対しては、ライナーの運転で対応するのが現実的な解でした。

 通勤輸送の抜本的改革は車両だけでは解決できず、インフラ全体の見直しからしなくてはならないのです。

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