現存唯一 昭和レトロ消防署に眠る戦前生まれの消防車 走る日は来る? 現行型との共通点も

現存唯一 昭和レトロ消防署に眠る戦前生まれの消防車 走る日は来る? 現行型との共通点も

高輪消防署二本榎出張所の車庫で現役の消防車と並ぶ、ニッサン180型消防ポンプ自動車(2020年7月、柘植優介撮影)。

東京都港区の高台にある昭和レトロな面影の消防署、そこには太平洋戦争前に作られた消防車も残されています。再び走る日は来るのでしょうか。現用の消防車を見比べてみると意外な共通点もありました。

昭和レトロな消防署に残る古風なボンネット型消防車

 2020年3月に開業した山手線の新駅、高輪ゲートウェイ駅の近くに、昭和レトロな面影を残す消防署、東京消防庁の高輪消防署二本榎出張所があります。1933(昭和8)年に建てられ、都内現役の消防署として最古の歴史を有しますが、その1階に展示されている「ニッサン180型消防ポンプ自動車」も、かなりレトロなものです。

 ニッサン180型消防ポンプ自動車は、本格的な国産消防ポンプ自動車の第1号といわれ、二本榎出張所に展示される車体は1941(昭和16)年に製作されたものです。大田区の蒲田消防署などで使用されたのち、終戦直前の1945(昭和20)年5月に高輪消防署(二本榎出張所の前身)に配置され、それから東京オリンピックが開催された1964(昭和39)年10月まで、約19年間にわたってこの地で使われていたそうです。

 日産自動車のWEBサイトによると、ベースのニッサン180型トラックは、1941(昭和16)年2月にニッサン80型トラックの改良型として誕生したと記されているため、二本榎出張所の車体は、同年に消防車として製作された貴重なものであることがうかがえます。

最新の消防車にも受け継がれている消防装備の数々

 ニッサン180型消防ポンプ自動車の隣には、現用の平成生まれの消防車が並び、外観を見比べると両車のあいだには明らかな時代の差を感じます。しかし署員の方の話では、約80年という年月を超えて、両車の装備にいくつかの共通点が見られるそうです。

 最初に見せてくれたのは、斧や鳶口(とびぐち)、ハンマーなどです。これらは形状や素材こそ変わっているものの、2020年現在でも装備のひとつとして消防車に積まれ、火災現場ではドアをこじ開けたり、壁や天井に穴を開けたりするのに使われるそうです。

 またホースの先端につけるノズル(水口)もいくつか種類がありますが、その一部は80年前のものと同じ形状だそうです。

 こういったもの以外にも、ハシゴやホース、ホースカー(ホースを運ぶためのリヤカー)なども両車に共通した装備です。素材や形状は進化を続けていますが、これらの基本的な役割は変わっていないのかもしれません。

博物館から里帰り レトロ消防署とレトロ消防車がセットに

 このニッサン180型消防ポンプ自動車は前述の通り、1964(昭和39)年10月に退役し、いったんは新宿区四谷にある東京消防庁の消防博物館で屋内展示されていました。しかし2013(平成25)年の高輪消防署開署80周年記念式典のときに、地域住民の要望もあり、二本榎出張所となったこの場所へ里帰りしたそうです。

 なお、四谷の消防博物館で展示されていたころから、タイヤやシャシーの経年劣化を防ぐために車体をジャッキで支え、負荷がかからないような状態が維持されています。

 エンジンはかかるのか聞いたところ、「整備すればかけられるようになるかもしれないが、実際にはかけたことはない」とのこと。ある試算によると、足回りを直すだけで70万から80万円近くかかるそうで、エンジンを直して自走できるようにするには500万円以上かかるのではないかということでした。

 それだけの予算をかけて自走可能なレベルにまでレストアするのは難しいかもしれませんが、高輪消防署や地域の歴史を伝える「生き字引き」ともいえる存在です。

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