救急車なのにバリバリ悪路OK! 陸自特有の事情も絡んだ戦闘用アンビュランスとは

救急車なのにバリバリ悪路OK! 陸自特有の事情も絡んだ戦闘用アンビュランスとは

陸上自衛隊の1 1/2t救急車(柘植優介撮影)。

陸上自衛隊の車両は、悪路走破性も重要なため、トラックなども専用のものが多く使われています。救急車も不整地に強い専用のものがありますが、悪路走破性だけでなく収容人数も多いという特徴があります。

「1 1/2t救急車」災害派遣で頼りになるタフなヤツ

 災害派遣などで目にすることもある自衛隊の救急車。なかでも、陸上自衛隊しか装備していない車両が「1 1/2t救急車」です。

 海上自衛隊や航空自衛隊が保有する救急車は、街なかの消防署や病院、医療センターなどが運用する、いわゆる一般的な救急車と同じです。しかし陸上自衛隊は、野戦も念頭に置いているため、救急車であっても一定レベル以上の悪路走破性が要求されます。そこで、自衛隊専用トラックをベースしたオリジナルの救急車を開発し、調達しているのです。

 とはいえ1 1/2t救急車の特徴は悪路走破性だけではありません。同車は乗車定員11名、収容担架数も4床です。一般的な自治体消防の救急車、いわゆる「高規格準拠救急車」が乗車定員7名もしくは8名、収容担架(ストレッチャー含む)数が基本的に1床なのと比べると多いです。

 この乗車定員には救急隊員3名も含まれるため、その数を引くと、高規格準拠救急車は患者および付添人として4名から5名しか乗せられませんが、陸上自衛隊の1 1/2t救急車も同様に運用要員は3名なので、差し引けば8名と、一度に運べる患者や付添人の人数は倍近くなります。

 なぜここまで多いかというと、戦闘などで大量の負傷者が出ることを想定しているからです。戦争では一度に数百人、数千人単位で死傷者が出ることがあります。それを想定し、陸上自衛隊においても大量に傷病者が発生した際にどう対処すべきかを訓練しています。だからこそ、救急車も収容人数を重視した作りにしているのです。

 そのため、陸上自衛隊の1 1/2t救急車の内部は2段式で、2段2床で4床収容できるようになっています。また、この上段部を支柱から外すことで、着座した姿勢での負傷者収容が可能になり、この状態ならば片側4名ずつ座ることで8名収容可能です。

1 1/2t救急車の足回りはトヨタ「メガクルーザー」と共通

 1 1/2t救急車は、前述したように悪路走破性を重視しているため、足回りを含めたコンポーネントは高機動車のものを流用しています。

 高機動車とは、陸上自衛隊が調達中の大型4輪駆動車で、アメリカの「ハマー」に似た車両です。一時はトヨタ「メガクルーザー」として市販もされていました。

 1 1/2t救急車は、高機動車が標準装備する4WS(4輪操舵)がなく、小回りはそこまで利かないものの、タイヤ空気圧自動調整システム(CTIS)は装備しており、グランドクリアランスも広くとられているため、災害派遣などで路面がひび割れた所や浸水エリアであっても、ある程度は走破できます。

 車内装備品も、高規格準拠救急車ほどではないものの、患者監視装置(バイタル監視装置)や体外式除細動器(AED)、人工呼吸器、輸液ポンプ、ショックパンツ(加圧式血圧改善装置)、酸素ボンベなどを搭載しており、それ以外の医療器具も状況に応じて設置することが可能です。

 一方で、「やはり自衛隊車両」といえる装備もあります。そのひとつが窓のロールカーテンです。これは、最前線などで敵に見つからないよう、車内の明かりを外に漏らさないためのもので、さらに室内灯も通常の蛍光灯だけでなく目立ちにくい赤灯の2種類を備えています。

 しかし乗り心地や公道走行時の性能などでは、やはり一般的な高規格準拠救急車の方が優れているため、使い勝手などの面から駐屯地医務室や自衛隊病院などには、あえて一般の救急車が配備されていることもあります。

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