空襲の傷あと残る「旧日立航空機変電所」 保存に向けたふるさと納税も募集中

空襲の傷あと残る「旧日立航空機変電所」 保存に向けたふるさと納税も募集中

空襲の傷あとを残す「旧日立航空機変電所」

 東京都東大和市の公園に、あちこち穴だらけになった鉄筋コンクリートの建物が文化財として保存されています。戦時中の空襲により傷だらけになった「旧日立航空機変電所」です。

 戦争の傷あともそのままに、1993年(平成5)まで現役の変電所として使われた建物は、戦災遺産として恒久保存に向けた資金を「ふるさと納税」で募集しています。

 東京都の中央部北側に位置する東大和市。西武拝島線・多摩モノレールの玉川上水駅近くにある都立東大和南公園の一角に、あちこち穴だらけになった痛々しい姿の建物が建っています。これはかつて、日立航空機株式会社立川工場の変電所として建てられたものです。

 都立東大和南公園一帯は、かつて東京瓦斯電気工業(現在のいすゞ自動車や日野自動車)の航空機部門が1939(昭和14)年に分社独立した日立航空機の立川工場でした。1928(昭和3)年に国産初の航空機用エンジン「神風」を開発した東京瓦斯電気工業は、エンジン生産を拡張・強化するため1938(昭和13)年、東大和市(当時は北多摩郡大和村)に立川工場を開設します。

 その敷地北西部に建てられたのが、現在も残っている変電所です。高圧線から送られてくる電気を変圧し、工場内へ送る役割を果たしていました。

 立川工場は、最盛期に1万4000人もの従業員を擁する日立航空機の主力エンジン工場として操業を続け、1944(昭和19)年には月産350基の生産体制となっていました。

 生産されていたエンジンには、海軍の対潜哨戒機「東海」や九三式中間練習機(赤とんぼ)、陸軍の九八式直接協同偵察機や一式双発高等練習機などに採用されていた「天風(ハ13/ハ23)」、陸軍の九五式練習機(赤とんぼ)などに採用された「神風(ハ12/ハ21)」などがあります。

 戦時中、ほかの軍需工場と同じく、日立航空機立川工場もアメリカ軍による空襲の目標となりました。航空機はエンジンがなければ飛べないため、立川工場のようなエンジン工場は、特に重点的な攻撃目標としてリストアップされていたのです。

 特に大きな被害をもたらしたのは、1945(昭和20)年の2月と4月に行われた計3回の空襲。

 2月17日にはF6F戦闘機など空母艦載機部隊50機による爆撃と機銃掃射、そして4月19日にはP-51戦闘機の機銃掃射、24日にはB-29による爆撃があり、工場の従業員や勤労動員されていた学生、周辺住民など計110名以上が亡くなったといいます。

 特に4月24日の空襲では100機以上ものB-29が来襲し、1800発あまりの爆弾を投下。これにより、工場施設の8割が破壊されました。その中で、奇跡的に全壊しなかったのが、この変電所建物です。

 全壊しなかったとはいえ、建物表面には12.7mm機銃の弾痕や、爆弾の破片による穴がいたるところに残されています。ここへの空襲は工場施設を破壊するため、人家を焼き払うことを目的とした焼夷弾ではなく、通常の爆弾が使用されました。


 戦後、日立航空機は政府(陸海軍)からの戦時補償債務を処理するため、東京瓦斯電気工業(新)を設立して再出発。産業用エンジンやポンプなどを生産する会社として生まれ変わり、小松ゼノアを経て現在はスウェーデンの機械メーカー、ハスクバーナ(HUSQVARNA)傘下のハスクバーナ・ゼノアとなっています。

 その中で、この変電所建物は空襲の傷跡もそのまま、内部の機器を更新しながら現役の変電所として使用され、都立公園を整備するため、1993(平成5)年に変電所を含む工場の一部敷地を東京都が買い上げるまで役目を果たし続けたのです。

 建物は役目を終えましたが、戦争の歴史を物語る建物を失いたくないとの要望が市民から寄せられ、東大和市は1995(平成7)年10月1日付で市の文化財に指定。保存することになりました。

 壁面に残る弾痕は、空襲の苛烈さを雄弁に語っています。外階段の壁面を貫通したものもあり、機銃掃射がかなりの低高度、至近距離から行われていたことが推測されます。

 空襲の主な目標だったであろう第一工場に面した南側正面に比べ、背後の北面や側面にはあまり被害が見られません。アメリカ軍機が南から来襲したのと、北と西に近接して建っていたトランス室やボイラー室が、盾のような役割を果たしていたようです。

 東大和市教育委員会では、2019(令和元)年5月に「旧日立航空機株式会社変電所保存の基本方針(改訂版)」を策定。築80年以上を経て経年劣化が進む変電所建物を後世に残すため、原形保存を優先しつつ、耐震補強や屋上防水改修などの補修を行い、一般公開していくとしています。

 この事業にかかる費用は、概算で総額1億3000万円程度。かなり大きな額です。そこで、市民を含めた多くの人々に関心を持ってもらうことも念頭に、東大和市は費用を「ふるさと納税」として寄附金を募集しています。

 寄附は、ふるさと納税のポータルサイトから行うオンライン申し込み(クレジットカード決済可)のほか、東大和市の総務総務管財課用地管財係に寄附申込書を提出(窓口・郵送・FAX)する方法があります。

 また、変電所建物に隣接する東大和市ロンドみんなの体育館、東大和市学校給食センター隣の東大和市ロンド桜が丘フィールドに設置された3つの飲料自動販売機では、売り上げの一部が市に寄付されるようになっています。

<出典・引用>
東大和市公式サイト ふるさと納税募集ページ

(咲村珠樹)

関連記事(外部サイト)