アメリカ海兵隊が新型水陸両用車「ACV1.1」をついに正式発注

アメリカ海兵隊が新型水陸両用車「ACV1.1」をついに正式発注

海から上陸するACV1.1

 2018年6月20日(現地時間)アメリカ海兵隊は、現用のAAV7に代わる水陸両用兵員輸送車としてBAEシステムズの「ACV1.1」の採用を決定、まずは1億9800万ドルで30両分の低能率生産を開始することになりました。さらにオプションとして204両分の発注がなされ、総額12億ドルという大規模なものとなります。

 これまでアメリカ海兵隊で運用してきた上陸用の水陸両用兵員輸送車、AAV7は1971年から配備が始まった年代物で、近代化改修をしながら使い続けていますが、いかんせん基本設計の古さは否めず、海兵隊としては次世代の上陸作戦用兵員輸送車の採用を長年模索してきました。いくつかの計画が出ては消え……を繰り返してきたのですが、2015年に「ACV(Amphibious Combat Vehicle=水陸両用戦闘車)1.1」計画が始まり、各メーカーに提案要求がなされていました。

 この提案要求に応募したのがBAEシステムズとイタリアのIVECOの合同チームと、SAIC(サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル・コーポレーション)とシンガポールのSTキネティクスの合同チーム。BAEシステムズ/IVECOはイタリア軍などに採用されている8輪装甲車「SuperAV」をベースにした改良版を、そしてSAIC/STキネティクスは、シンガポール軍ですでに運用されて実績のある8輪装甲車「テレックス(Terrex)」の改良版、テレックス2を提案していました。

 各種テストの結果、アメリカ海兵隊はBAEシステムズ/IVECOの候補を仮採用とし、2017年に16両の試作車を発注。そこから更に15か月に亘って様々な状況で使用し、採用の可否を審査してきました。そしてこのたびの正式発注となったのです。

 採用されたACV1.1は全輪駆動の8輪装甲車で、全長7.92m(水上航行用波除版展開時8.8m)、全幅3.1m、全高2.8m。最低地上高0.45mで、不整地を走破するのに重要な前方アプローチアングルが49度、後方デパーチャーアングルが43.5度となっています。空虚重量は26トン(全備重量30.617トン)で、貨物積載量は3.3トン、3名の乗員のほか13名の人員を輸送可能。アルミ製の車体で防弾性能が劣っていたAAV7と違い、装甲は超硬スチールモノコック。耐地雷座席も装備しています。また、C-130に積載して空輸も可能です。

 イタリアFPT社製のCursor16インタークーラー付きディーゼルターボエンジン(6気筒16リッター・最高出力700HP/515kW・最大トルク3000Nm)を搭載し、トランスミッションはアリソン4800SPの前進7段、後進2段。最高速度は地上(舗装路)で時速105km、水上で6ノットと、水上航行時の速度はAAV7の7ノットより遅くなっています。最高登坂角は60度、横方向では30度の角度まで許容します。最大65cmまでの段差を乗り越えることが可能で、幅2mまでの塹壕を通過可能。最小回転半径は10.2mとなっています。


 車両の製造はアメリカのカリフォルニア州、サウスカロライナ州、ミシガン州、ミネソタ州、ペンシルバニア州のほか、イギリスのスタッフォードにあるBAEシステムズの施設で行われます。最初の配備部隊は第1遠征海兵軍(I MEF)を予定しており、受領しての訓練開始は2020年の第4四半期、実戦体制に入るのは2023年を予定しています。

 しかしながら、AAV7は1000両を超える勢力を維持しており、全てを置き換えるのには時間がかかりそうです。AAV7は少なくとも2035年までは現役にとどまる予定とされています。

 日本は新編された水陸機動団用にAAV7を60両弱調達しましたが、三菱重工による国産水陸両用車の開発も続いています。アメリカ海兵隊のACV1.1正式発注により、これからの動向が注目されます。

Image:BAE Systems/CNH Industrial/USMC

(咲村珠樹)

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