今話題のアニサキス、見つけた時の対処法は?魚のプロに聞いてみた

今話題のアニサキス、見つけた時の対処法は?魚のプロに聞いてみた

アニサキスイラスト(イラストACより)

 スーパーで購入した鮭の切り身から線虫(アニサキス)が出てきたという衝撃映像がSNSを通じ話題となり、人々の関心を集めています。このアニサキス、度々ニュースなどでも紹介されていますが、もし見かけてしまったらどう対処したらいいのか、築地市場で魚屋を営んでいる魚のプロ中のプロに聞きました。

■ まずアニサキスって何?

 アニサキスについての基礎知識。アニサキスとは魚介類に寄生する寄生虫。しばしば「アニサキス症」という食中毒を引き起こします。この「アニサキス症」は、魚介類に寄生している幼虫を生の状態で摂取する事により、激しい腹痛や嘔吐などの症状を引き起こします。生きた寄生虫が胃や腸の粘膜に食いついて、時には腸閉塞や穿孔(穴が開く事)を引き起こす事も。処置としては、胃内視鏡で除去したり、穿孔が疑われるなど重症な状態では開腹手術で除去し、処置を行う事もあります。

 このアニサキスの多くは第3幼虫という状態で魚介類に寄生しています。稀に加熱したアニサキスを食べてしまった後にアレルギーを発症する事もありますが、青魚のアレルギーと併発する事も多く、その鑑別は難しいとされています。

【図.魚に寄生するアニサキス幼虫】
左上: スケトウダラの肝臓に寄生するアニサキスの幼虫(リング状のもの)
左下: スケトウダラから取り出したアニサキスの幼虫。体長は2〜3cmで、肉眼でも十分に見える。活発に運動する(が写真では動きは分からない)。
右上: サバの身に寄生するアニサキスの幼虫。矢印の先端が虫体を示すが、肉眼で確認するのは容易ではない。
右下: 右上写真の矢印部分のサバの身を切り出し、顕微鏡下にアニサキスの幼虫を確認した。
(「国立感染症研究所 アニサキス症とは」より)

■ アニサキスから身を守る為に。魚のプロに聞く

 ではこのアニサキスから身を守る為にはどうすればよいのか。「株式会社阿部水産」社長の阿部智朗さんに伺いました。

 「アニサキスは魚の種類にもよりますが、多くの魚種に寄生の可能性があります。流通する未冷凍の魚介類に存在している可能性があります。」魚の種類によって異なるという事ですが、全ての魚介類にアニサキスは存在している可能性が高いと考えた方が良い様です。

 特に、サバ、タラ、スルメイカなどで見る事が多く、サバではハラワタから目視される事も多いという話。アニサキスは目で確認する事ができる大きさなので、阿部さんは見つけ次第包丁で切って処分し、寄生していた周辺部位は取り除いているそうです。

 アニサキスはマイナス20度で24時間冷凍するか、60度以上の温度で1分以上加熱する事で死滅させる事ができます。この為、「刺身用」として流通しているものは一度冷凍したものか加工したものになるそうです。阿部さんも、「サーモンは入荷の段階でフィレになって刺身用という商品では、アニサキスは見たことはないです。」との事。この事から、話題となった鮭の切り身は加熱用として冷凍処理が施されていないものという事が分かります。

 阿部さんのお店では「刺身用」として売られているものでもアニサキスなど異常がないかをダブルチェックで確認し、切り分けたものはその日のうちに食べる様にと購入客に話しているそうで、やはり鮮度は大事という話。また、魚を酢やわさびなどに漬けてもアニサキスに対しては効果はないそうです。

■ 「生」ブームの落とし穴と、魚の美味しい食べ方

 昨今、「生○○」がブームで、魚も何でも刺身にして食べたがる風潮があると阿部さんは言います。しかし、全ての魚が刺身に向いている訳ではありません。テレビ番組で釣った魚をその場でさばいて刺身にして食べるシーンもありますが、それが生ブームを生む一方、アニサキスを見落とす落とし穴にも繋がります。

 魚の調理法には刺身の他に、煮る、焼く、干して食べるなど多彩な食べ方があります。「干物は取れてすぐに腹をとって開いたりしますし、調理は加熱になるので、かなり安全、そして旨味が増してますから、なんでも刺身でというのではなく、干物など昔ながらがとても美味しいということを多くの方に知ってもらえれば、より安全にお魚を感じてもらえるかと思います。」と阿部さんが話している様に、生よりももっと魚の旨味を感じる食べ方を、魚の種類によって使い分ける事が大事と言えます。

 今はスーパーなどで手軽に切り身を買う事ができる一方で、鮮魚担当の人や魚屋さんといった、いわゆるプロの目を持つ人から直接話を聞く事ができる機会が少なくなっています。野菜も種類によって食べ方を変えます。魚も、種類ごとに美味しい食べ方ができるのです。機会があったら、鮮魚のプロに話を聞いてみるのもいいかもしれませんね。

<引用・参考>
国立感染症研究所 アニサキス症とは

<記事化協力>
株式会社阿部水産(Twitter:@abehiro13/HP:http://abe-suisan.com/company)
東京都中央区築地6-27-1 築地魚河岸N-19
※一般小売りは場外店のみ。

※初出時より生食用の流通説明についてつぎのように変更いたしました「一度冷凍したものか加工したもの」。

(梓川みいな)

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