毎年死者が出る「餅」との正しい付き合い方

正月に餅による窒息事故多発 スライス切り餅やサイコロサイズの角切り餅を推奨

記事まとめ

  • 餅による窒息は、高齢者だけでなく子どもにも起こる可能性があるという
  • 高齢者は口腔内の水分が少ない状態で餅を丸のみしてしまい、詰まらせてしまうことも
  • 「餅を食べない」という選択肢や、スライス切り餅、角切り餅などを筆者は勧めている

毎年死者が出る「餅」との正しい付き合い方

毎年死者が出る「餅」との正しい付き合い方

消費者庁ポスターより

 による窒息死は毎年地方ニュースで報じられるにとどまり、大きく報道される事は多くありません。しかし、毎年1月に突出して起こっている餅による窒息。高齢者だけでなく子どもにも起こる可能性があるこの事故をどうすれば防げるのか、考えてみたいと思います。

■ 食物類による窒息事故は1月が一番多い

 高齢者の窒息事故で一番多い月は1月ですが、1年を通してその割合は実に30%にも及びます。多くは餅によるもの。男女比では男性の方が女性の2倍以上という統計が出ています。消費者庁も、「お正月の餅の窒息に注意」と、高齢者の餅による窒息事故についてのデータを公表し、注意を呼び掛けています。

 お正月は朝からお雑煮などにして餅を食べる習慣が根付いていますが、高齢者は唾液が出にくくなる人も多く、噛む力も衰える事で、口腔内や食道の水分が少ない状態で餅を丸のみしてしまう事があります。その結果、餅を詰まらせてしまう事があります。また、小児でも、口いっぱいに食物を頬張る傾向がある子どもだと窒息のハイリスク群といえます。よく噛まないで頬張った結果、無理やり飲み下そうとしてのどに詰まってしまう事故も多発するようです。

■ 「餅を食べない」という選択肢も

 お正月恒例だから、と、餅を食べる人も多くいますが、この様な窒息のハイリスクがある人にとって、危険な食べ物である事は間違いありません。思い切って、餅を食べさせないという選択肢も考慮したほうがいいかもしれません。でも、やっぱり餅を食べたい、という人もいるかと思います。この場合、どのようにすれば窒息事故を予防する事ができるでしょう?

■ 餅を食べる前にやっておくべき事

 高齢者は体内の水分が若い人よりも1〜2割少なく、体重に対して50%ほどです。特に寝起きは寝ている間に冬場でも汗をかく事で、脱水傾向になりがち。その状態で餅を食べると、カラカラののどに餅が張り付いて窒息します。そこで、高齢者に勧めたい脱水・窒息予防の方法を幾つかご紹介します。

・夜中にトイレに起きた時にコップ1杯の水分(ポットなどの白湯で十分)を摂る
・寝起きにまず白湯を飲む、食事の時は汁物から口を付ける。
・なるべく声をしっかり出して喋る、お口の体操や発音練習で口の動きを良くしておく。(北原白秋の「五十音」の音読がお勧め。この方法は老人介護施設等の食事前の口腔トレーニングにも使われています。)

この3つは脳卒中などの後遺症で体にマヒが残り、嚥下障害がある人に特に行って欲しい方法です。高齢になるとともに飲み込む力も落ちますが、マヒが残っている事でのどの筋肉にもマヒが及んでいてさらに飲み込む力が弱っている場合があります。しっかり水分を摂ってから食事をする事で唾液が出やすくなり、発声練習でのどの筋肉も解れて飲みこみやすくなります。口をしっかり動かしておくことで、噛む時の力も発揮しやすくなります。水分でもむせる人は、市販のとろみ添加剤でとろみを付けるとむせにくくなります。

■ 食べる餅の選び方も大事

 消費者庁でも、餅を小さく切っておくなど勧めていますが、筆者がお勧めしたいのは、しゃぶしゃぶ用などに売られているスライス切り餅。薄くスライスしてあるので、数秒で柔らかくなります。このスライス切り餅はさらに半分くらいのサイズにしておくと、口の中で丸まっても大きな塊にはならず、雑煮など汁ものと一緒に食べれば、噛む力が弱い人でものどに詰まりにくくなります。

 また、サイコロサイズの角切り餅も最近お餅売り場で見かけるようになりました。こちらも、切る手間が省け、一つずつ食べる事で口の中で大きな塊になりにくいので食べやすいです。小さい子どもの口にも合う大きさですが、しっかりよく噛まないと小さくてものどに貼り付いてしまう事があるので、汁ものや飲み物と一緒によく噛んで食べるように見てあげてください。

 なお、余ったスライス餅は、乾燥させた後、油で揚げて塩を振ると、かきもちになってサクサクと美味しくなるので餅を持て余す事があればこちらもお試しください。

 帰省で大勢が集まるお正月、高齢者も子どもも安心して食を楽しむために、家族一人一人が気を付けて事故のない様に過ごしましょうね。

<引用・参考>
消費者庁 御注意ください高齢者の窒息事故!(PDF)
脳卒中の言語リハビリテーション – 家庭で効果を上げるには – | 脳 | 循環器病あれこれ | 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス

(梓川みいな/正看護師)

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