エアバス 水素燃料で二酸化炭素を排出しない「15年後の旅客機」モデル3種を発表

エアバス 水素燃料で二酸化炭素を排出しない「15年後の旅客機」モデル3種を発表

エアバスが発表した「ZEROe」コンセプト機3種(Image:Airbus)

 エアバスは、飛行時に二酸化炭素を排出しないという「未来の旅客機」構想に基づくイメージモデル3種類を2020年9月21日(現地時間)、フランスで世界初公開しました。それぞれ別々の形態で二酸化炭素の排出量ゼロを目指しており、15年後の2035年に就航できることを目指すとしています。

 現在、航空機の飛行時に大気中へ放出している二酸化炭素は多く、地球温暖化の要因として環境負荷が高いとされています。多くの航空会社が加盟するIATA(国際航空運送協会)や、各国が加盟するICAO(国際民間航空機関)では、航空機からの二酸化炭素排出量を削減する取り組みを続けており、航空機メーカーも各自で様々な取り組みを進めています。

 現在、ほとんどの航空機が使用している化石燃料は炭化水素(CH)が主成分であり、これを燃焼(酸素と化合)させる以上、二酸化炭素や一酸化炭素の発生は避けられません。そこでエアバスが発表した「未来の旅客機」では、脱炭素を図るため、燃料として水素を想定しています。

 エアバスのギョーム・フォーリーCEOは「これは民間航空分野における歴史的な瞬間であり、業界がこれまで経験した中で、最も重要な転換点においてエアバスが主導的な役割を果たすことを意図しています。今回公開したコンセプトは、ゼロエミッションを実現する未来に向け、大胆なビジョンを推進するという私たちの野心を示すものです。私は合成燃料(バイオ燃料)とともに、民間機の主要な燃料に水素を採用することで、航空機が気候変動に与える影響を大幅に削減する可能性があると強く信じています」とのコメントを発表し、水素燃料の将来性を強調しました。

 今回エアバスが発表した3種類のコンセプトモデルは、どれも「ZEROe(ゼロイー)」という名前となっています。これはゼロエミッション(ZERO-emission)を意味したもの。

 現在のジェット旅客機に最も近い形状をした「ターボファン」デザインは、120席〜200席クラスで航続距離3600km程度の大陸横断路線に就航できるものを想定。ジェット燃料ではなく、水素を燃料とした改良型ガスタービン(ジェット)エンジンを使用し、胴体の圧力隔壁後方に液体水素タンクを設けます。

 外見上の特徴は、主翼端に付けられた巨大なレイクドウイングチップ。これにより、主翼端に発生する誘導抗力を最小化し、飛行時の燃費改善を目指します。

 100席クラスで、1800km以上の航続距離を想定した「ターボプロップ」デザインは、同じく水素を燃料とする改良型ガスタービン(ターボプロップ)エンジンで飛ぶプロペラ機。短距離路線に最適なオプションであるとしています。

 もっとも未来的な形をした「ブレンデッド・ウイング・ボディ」デザインは、その名の通り主翼と胴体が一体化(ブレンド)されたもの。200席クラスを想定しており、航続距離など基本性能は「ターボファン」デザインと共通としています。

 主翼と一体化されたことで、非常に幅広な形状となった胴体は、自由度の高い客室のレイアウトや水素燃料タンクの配置が可能。ちょっと残念なのは、景色を楽しめる窓際の席が少なくなりそうな点でしょうか。

 これらのコンセプトデザイン3種に共通する水素燃料は、燃焼させると発生するのは水(水蒸気)となり、二酸化炭素や一酸化炭素を発生させません(空気中の窒素が燃焼時の高温で酸素と化合し、窒素酸化物が発生する可能性は残る)。

 フォーリーCEOは重ねて「水素を主要燃料とするには、これまでの航空エコシステムからの決定的な転換が必要です。政府や産業界のパートナーからのサポートなくして、この再生可能エネルギーと水素の利用拡大という、航空業界を持続可能なものとするチャレンジは実現できません」と語り、エアバス単独の取り組みだけではなく、もっと幅広い協力関係が必要だとしています。

 水素を燃料とする取り組みは各方面で続けられていますが、水素は取り扱いが非常に難しく、その分子の小ささもあってタンクから漏れやすい上、金属タンクの材質をボロボロにしてしまう「水素脆化」という現象を克服する必要があります。2010年7月、九州大学と産業総合技術研究所の水素材料先端科学研究センターが、ステンレスに多量の水素を侵入させると逆に疲労強度特性が向上することを発見し、水素燃料タンク実現への糸口が見つかりました。

 また、水素は燃焼速度(化学反応の速度)が非常に速く、マッハ5以上で飛行するスペースプレーン用として研究されている、スクラムジェット(超音速燃焼ラムジェット)エンジンの燃料としても期待されています。航空機用の水素燃料が実用化できれば、宇宙飛行も少し手軽なものとして実現するかもしれません。

 ただ、ちょっと気になるのが、水素燃料のジェットエンジンは、大量の水蒸気を排出すること。すぐに周りの空気に冷やされて湯気になってしまうでしょうが、空港や滑走路に湯けむりが漂う……という、温泉地のような光景が当たり前になるかもしれません。

<出典・引用>
エアバス プレスリリース
産業総合技術研究所 プレスリリース「水素で金属材料の強度が向上」
Image:Airbus

(咲村珠樹)

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