本物のティラノサウルスは「人間よりも足が遅い」…『ジュラシック・パーク』の“嘘だらけ”な恐竜の生態に迫る

本物のティラノサウルスは「人間よりも足が遅い」…『ジュラシック・パーク』の“嘘だらけ”な恐竜の生態に迫る

本物のティラノサウルスは「人間よりも足が遅い」…『ジュラシック・パーク』の“嘘だらけ”な恐竜の生態に迫るの画像

 毎週日曜日、夜8時から放送中の『岡田斗司夫ゼミ』。7月8日の放送では、映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』の公開を記念して、恐竜に関する特集が行われました。

 岡田斗司夫氏は、この放送の中で『ジュラシック・パーク』シリーズが映画やアニメなどのあらゆる恐竜描写に与えた影響を紹介した上で、劇中に存在する様々な嘘について解説しました。

岡田斗司夫氏

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ティラノサウルスのリアルさは口元を見ればわかる

岡田:
 なんといっても『ジュラシック・パーク』シリーズにおける最大の嘘というのは“ティラノサウルス”なんですよ。まあ、嘘が入っているという意味では、今、売られている恐竜のフィギュアでも全部そうだし、ティラノサウルスの復元図とか、映像とかでも、全部、同じ嘘をついてるんですけども。

 じゃあ、何が嘘かと言うと「歯が剥き出し」なんですよね。歯が剥き出しになっている復元図は、だいたい嘘だと思ってください。これね、カッコいいんですよ。

 人間って、歯が剥き出しになってないじゃないですか。ちゃんと“唇”というのがありますよね? この唇というのは何のために付いているのかというと、唾液がダラダラと外へ溢れないために付いてるんですよ。

 「唇がなかったら、人間というのは1日当りだいたい1.5Lの水分を失う」と言われています。人間が1日生きるのに必要な水分量が1.5Lですから、もし唇がなかったら、人間というのは摂取した水分を延々と垂れ流していくことになり、生き残れなくなってしまいます。

 ティラノサウルスに関してもそれは同じはずなのに、ところが、ほとんどの復元図では、牙を剥き出しにしちゃうんです。なぜかというと、ワニが牙を剥き出しにしているからです。

 でも、ワニというのは基本的に水中にいる動物だから、牙を剥き出しにしててもいいんですよ。いつでも水分を補給できるから。ところが、地上にいる爬虫類というのは歯を剥き出しにしていてはいけない。そんなことはみんな知っているんですけど、この方がカッコいいから剥き出しにしちゃうんです。

 もちろん、博物館によっては、置いてある復元図にちゃんと唇がついていて、牙が隠れてるんですけども。やっぱり、そういう絵は人気がないので、みんな、ついついこの歯のある方を出してしまうんです。

追いかけるのではなく頭脳戦で狩りをしていた

 あとは、『ジュラシック・パーク』シリーズに出てくるティラノサウルスは、いつも全力疾走で走ってますけど、本物は走れません。そんなスピードは出せないんです

 ティラノサウルスというのは、最大でも、だいたい時速12〜15kmくらいの速度しか出せなかったと言われています。つまり、人間が全力疾走するよりも、ちょっと遅いくらいの速度です。

 正直言うと、この時代にティラノサウルスが食べていたであろう、トリケラトプスみたいな草食恐竜って、軒並みティラノサウルスよりも足が速いんですよ。なので、走って追いかけたとしても、絶対に追いつけないんですね。

 じゃあ、どうやって捕食してたのかというと、実はティラノサウルスって“頭脳戦”が得意だったと言われているんですよ。

 これを見てもわかる通り、正面から見た場合でも両目共、見えてますよね。つまり、ティラノサウルスというのは物を立体視することが出来るんです。

 そして、このフィギュアでは強そうに見せるためにあえて鼻梁(びりょう)の幅を広く作っているんですけど、実際はこの幅がもっと狭くて脳がわりと巨大なんです。つまり、脳が巨大で立体視も出来るということで、「かなり頭が良かったのではないのか?」というのが、現代のティラノサウルス像なんです。

 なので、「草食恐竜がいるところにギリギリまで隠れてて、油断しているところにひょっこり出てきて、ガブッと食べる」というのが、ティラノサウルスの狩りのやり方であって、どちらかというと、オオカミとかそういう生物に近かったのではないかと言われてます。

映画では絶対に描けない恐竜たちのリアル

 もう1つ、『ジュラシック・パーク』シリーズで描かれないこととしては、育児をするどころか、ティラノサウルスというのは、“共食い”が大好きなんです。「草食恐竜が見つからなかったら、お互いを食う」という悪魔のような生物なんですよね(笑)。

 あとは、これも映画では描けないんでしょうけども。ティラノサウルス対トリケラトプスという戦いが、映画の中によく出てくるじゃないですか。まあ、戦っていたこと自体は本当なんですけれども、映画なんかでよくあるように、お互い正面から対峙した場合、ティラノにはほぼ勝ち目がないんですよ。

 というのも、トリケラトプスのような四足の草食恐竜って、さっきも言ったように、移動がメチャクチャ速いんです。なので、正面からぶつかると、ほぼ確実にあっという間に角で突き刺されて負けてしまうんですね。でも、「ティラノサウルスがトリケラトプスを食った」という化石はいくらでも残っているんです。

 では、どうやってティラノがトリケラトプスに勝つのかというと、さっきも言ったように、森の茂みの中からひょっこり出てきて、いきなり首の付け根に噛み付くわけですね。

 ティラノサウルスって、トリケラトプスの首の付根にある靭帯とか柔らかい腱が、もう大好きなんですよ。なので、トリケラトプスを食べる時、ティラノサウルスは、まず首の付根に噛み付いて殺します。その後、鼻の頭の辺りをガッと噛んで、ものすごい力で首を引きちぎります。そして、その後で、胴体の方には見向きもせずに、ちぎり取った首の内側をガツガツと美味しく食べるということをよくやっていたみたいです。

 それを示すかのように、首が引きちぎられたトリケラトプスの化石というのが、結構、見つかっているんですよ。まあ、でも、こんな凄惨なシーンは、しばらくは映画ではやらないだろうなと思います(笑)。

短すぎる前足の意外な使い道

岡田:
 あとは『ジュラシック・パーク』での嘘というと、「ティラノサウルスは吠えない」というのがありますね。なぜかというと、ティラノには声帯がないんですよ。

 まあ、「ブオォー」みたいな音は出したかもわからないんですけど。少なくとも「ギャオォー!」なんて吠えることは、声帯自体がないのでありません。

 他にもティラノサウルスというと、この小さい前足が何のために付いていたのか、いまだによくわかってないんですね。あまりにも役に立ちそうもないから、昔は「この前足は、交尾をする時にメスが逃げないように捕まえるためなんじゃないか?」なんて言われてたんですよ。

 でも、研究が進むに連れて、この前足についている爪が、かなり頑丈であることがわかってきた。なので、今度は「これは、獲物の腹をナイフのように引き裂くためにあるんだ」と言われるようになりました。

 ところが、獲物の腹を引き裂くにしては短すぎるんですよね。これじゃあ、獲物には届かないだろう、と。

 ということで、最近の学説ではどうなのかというと。ティラノサウルスって夜、寝る時に腹ばいで寝るんですけども、その姿勢から体を起こす時に、よっこらしょっと、体を支えるためだけに使ったらしいとされています。

 その根拠としては、これまで発掘されたティラノサウルスの成体の化石って、鎖骨部分の骨折がやたら多いんですよ。つまり、よっこらしょと起き上がる時に、体重が前足の部分に掛かる。この時にタイミングを間違えたから、鎖骨がボキボキ折れてしまった、ということです。

 まあ、鎖骨に限らず、ティラノサウルスの化石というのは、だいたい、どこかを骨折しているんですよ。こういう所からも、もう生物としては限界のサイズだったというのがわかりますね。

なぜ映画の恐竜描写には嘘が混ざるのか?

 今、話したように、「歯は剥き出しではない」とか、「本当は歩くことしかできなかった」ということは散々わかっているはずなのに、なぜ間違った復元図が残り続けているのかというと。

 やっぱり、恐竜学者の人って“趣味人”が多いからなんですよ。ここが、恐竜学というのが他の学問と一番違うところだと思うんですけども。元々、「子供の頃からティラノ好きだ」とか、「トリケラトプス好きだ」とか、「プロントサウルス好きだ」という人が、恐竜学者にはやたら多いんです。

 そんなふうに、子供の頃に憧れて入ってきてるもんだから、復元図を描く時も、やっぱり、ちょっとでもカッコよくしてしまうし、ちょっとでも「みなさん、カッコいいでしょう?」って感じにしちゃうそうなんですよね。

 なので、「本当はティラノサウルスの動きが遅かった。走れなかった」と言われても、「いやいや、歩くと入っても、一歩一歩の歩幅が長いから本当は速かったんだよ!」みたいに反論する人がめちゃくちゃ多いんです。

 ここらへんの恐竜の嘘に関しては、「嘘をつく」というよりは、「愛するあまり、ちょっと盛ってしまう」みたいなところがあると思ってください。

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#238表 岡田斗司夫ゼミ【恐竜大特集】『ジュラシック・パーク』など恐竜映画から、実際の恐竜誕生や滅亡、発見や研究まで、すべて語ります!(4.50)

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