『未来のミライ』は細田守版『千と千尋の神隠し』!?「どちらも主人公との交流で呪いから解放される」映画評論家が類似点を指摘

『未来のミライ』は細田守版『千と千尋の神隠し』!?「どちらも主人公との交流で呪いから解放される」映画評論家が類似点を指摘

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●映画評論家の岡田斗司夫氏が登場。
●細田守監督作品『未来のミライ』について考察。
●岡田氏は同作を『千と千尋の神隠し』を逆変換した作品である」とまとめた。

 毎週日曜日、夜8時から生放送中の『岡田斗司夫ゼミ』。7月22日の放送では、パーソナリティの岡田斗司夫氏が、20日に公開された細田守監督の劇場アニメ作品である『未来のミライ』について「『千と千尋の神隠し』を逆変換した作品である」と発言し、その考えに至った経緯を語りました。

岡田斗司夫氏

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『未来のミライ』は「良い声の人が普通のことを話してくれる」ような映画

岡田:
 “噂通り”というか、『未来のミライ』という作品は、僕にとっては、映画館で見ている時には、あんまり面白くなかったんですね。

 よく「育児経験をしていない人が見てもわからない。子育てをしたことがある人間が見れば面白い」とか言われているんですけど、そんなことも全然ないんですよね。僕は育児経験者ですから。

 育児経験という意味では、エピソードとか表現が、あまりにも在り来たりというか、凡庸なんですよ。

 例えば、「下の子が生まれると上の子供が赤ちゃんぽくなっちゃう」とか、「父親の育児は実は役に立たない」みたいに。どれも、このネタで育児雑誌でコラム漫画を連載しても通用しないよ、みたいな雑談レベルの話なんです。だけど、作画に関しては、もうめちゃめちゃ良いんですよ。

 なので、良い声の人が普通のことを話している感じとでも言うんですかね? 「良い声だから聞いていられる普通の話」というのが、劇場で見た時の正直な感想だったんですね。だから、すごくビックリしたんですよ。

 細田アニメなんだから、もうちょっと何かあると思っていたんですけど、そういった新しさもカッコよさがどこにもなかったんです。ただ、見終わってから半日くらい経って「ああ、こういうことがやりたかったのか」というのは、ちょっとわかったような気がするんです。

細田守監督のやりたかったことは『千と千尋の神隠し』?

 この『未来のミライ』というのは、細田版『千と千尋の神隠し』なんですよ。千と千尋の神隠しというのは、「千尋という女の子が異世界に行って、いろんな人のしがらみや呪いとかを解除してあげる」という話なんです。

 主人公が呪いにかかったような体なんですけども、実は、他人に掛けられたいろんな呪いを解除してあげたことで、最後には親の呪いも解除して帰っていくというような話なんですね。

 ポイントがあるとすると、「千尋が異世界に行くことになった理由もルールもない」というところ。迷ってたらとりあえず着いちゃったんですけど、ここも今回の『未来のミライ』にも似てますね。

『千と千尋の神隠し』
(画像は千と千尋の神隠し | Amazonより)

 つまり『未来のミライ』というのは、千と千尋の神隠しを逆変換した作品なんですよ。

 例えば、“異世界に行く”のではなく、“向こうの世界が来る”。あとは、千と千尋の舞台となる湯屋は縦にすごく長い建物なんですけど、未来のミライでは、斜めに階段がある高さのある構造の個人住宅として置き換えています。

 何より、未来のミライというのは、血縁関係にある人達が過去や未来からやって来て、主人公の男の子と交流したり、話し合うことによって、呪いとかコンプレックスから解放されるという話なんですね。そういうふうに見ると、何が作りたかったのかというのがわかりやすいんです。

『未来のミライ』
(画像は未来のミライ | Amazonより)

くんちゃんとの触れ合いで癒やされるそれぞれのコンプレックス

岡田:
 例えば、映画の中に、ひいひいじいちゃんというイケメンが出てきます。彼がオートバイを修理しているところに、“くんちゃん”という主人公の男の子が実体化するんですね。

 ひいひいじいちゃんには「戦争で足を痛めた」というコンプレックスがあったんですけども、くんちゃんを馬とかバイクに乗せて走らせた時、くんちゃんが「お父さん」って言うんですね。これは、くんちゃんの勘違いなんですけど、そう言われた時、ひいひいじいちゃんは絶妙な顔をするんです。

 これ、どういうことかというと、くんちゃんから「お父さん」と言ってもらったことによって、やっと「自分もやっぱり、こんなふうにお父さんと呼んで欲しいんだ」と気がついたということなんです。

 そして、その結果「自分は足が不自由だから、もう一生、結婚は出来ない」というコンプレックスがあったところから、「あ、俺、本当は子供が欲しいんだ。じゃあ、気になっていたあの女の子に、思い切ってプロポーズしよう」ということになる。たぶん、くんちゃんが現れなければ、あそこで血筋は途絶えていたわけですね。

『未来のミライ』
(画像は『「未来のミライ」予告3』より)

 あとは、くんちゃんのお母さんが「本当は弟と仲良かったよ」と説明するシーンがあるんですけど、劇中には仲が良かったようなシーンが全然ないんですね。ということは、「仲が良かったと思いたかった」というふうに解釈することもできる。現にお母さんの家に行った時にも、弟は全然出てこないんですよ。

 たぶん、お母さんには「もっと弟と思い切り遊びたかった」というコンプレックスがあったんですよね。この“コンプレックス”という言葉は、ここでは劣等感だけではなくて、いろんな思いがこんがらがって、ほどけなくなっているという、心理学的な使い方でコンプレックスという言葉を使ってますけども。そんなお母さんのコンプレックスを解放してあげているんです。

『未来のミライ』
(画像は『「未来のミライ」予告3』より)

 星野源が声優を演じた父親だけは、ちょっと複雑なんですよ。

 お父さんは、「子供の頃、自転車に乗れずに諦める」ということになっていたんですけど、大人になってから、諦めずに自転車に乗る自分の息子の頑張りを見て、「自転車に乗れなかった過去の自分のあの悩みには意味があったんだ」「今、自分の息子を見ることで癒やされているんだ」と気がつく。

 つまり、いろんな出来事の交差点に、この主人公の男の子はいるんですね。

やりたいことを素直にぶつけた方が良かった

 こういうふうに作っていると、「この映画は千と千尋の神隠しですよ」っていうのがバレないんですよ。でも、それで面白くなるとは限らないんですよね(笑)。

 今回、細田さんは、こういった“そこそこ難しいこと”をやろうとしてるんですけども、やっぱり、エピソードが弱いんじゃないかと思うんですよね。

 こういう言い方も失礼ですけども、たぶん、もうちょっと素直に「何が元ネタで、実はこの作品に思い入れがあって、俺だったらそれをこう作るんだ!」っていうことを言い切っちゃった方が良かったような気がするんですけどね。

 これでは「新しさもなければ面白さもない」と思ってしまいました。

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