薬莢を使わない『G11』アサルトライフルはなぜ実用化されない?「射撃性能アップ」「コストが安い」良いことづくめのはずだったケースレス弾の歴史

薬莢を使わない『G11』アサルトライフルはなぜ実用化されない?「射撃性能アップ」「コストが安い」良いことづくめのはずだったケースレス弾の歴史

薬莢を使わない『G11』アサルトライフルはなぜ実用化されない?「射撃性能アップ」「コストが安い」良いことづくめのはずだったケースレス弾の歴史の画像

 近代兵器の開発競争はとどまるところを知らず、なかでも銃の開発の歴史は、より強く、より早く敵を制圧するために進化を遂げてきた歴史と言っても過言ではないでしょう。

 常に新たなアイディアが持ち込まれる中で、「銃につきものである“薬莢”をなくせば、飛躍的な性能アップが望めるのでは?」そんな設計思想に基づいた“未来の銃”が存在するのをご存知でしょうか?

 今回紹介するオスガ71さんが投稿した『迷銃で撃て! H&K G11 【迷列車派生シリーズ】』という動画では史上最強のライフルになるはずだったヘッケラーアンドコッホ社の“ケースレス銃”G11にまつわる知られざる歴史について解説を行います。

迷銃で撃て! H&K G11 【迷列車派生シリーズ】 注目するのは薬莢の問題

 パレットM82A1、M134ミニガン、FN2000、M16A1。これらの銃の共通点はお分かりでしょうか?

 今回注目するのは、薬莢です。

 薬莢というのは、弾丸を打ち出すための火薬の入れ物みたいなものです。

 1800年代に発明されたこの機構は、弾丸の大量生産や、装填速度の向上に大きく貢献。現代の銃火器の礎を築きました。

 でも、この世の中、いいことずくめではない。薬莢でもそれ特有の問題が起こるのです。すぐ次の弾を撃つために、使用後の薬莢は速やかに排出しなければなりません。この排出した後の空薬莢の処理が面倒なのです。

 内部で火薬が爆発した直後の薬莢の温度は、かなり高い。体の露出している部分、特に顔、特に特に眼球に当たったら大変どころの話ではありません。

 さらにアサルトライフルや機関銃など、大量に弾丸をばら撒く銃火器は排出する薬莢で地面が埋まり、これに足を取られて……なんてことも起こりえます。ギャグマンガのような話ですが、戦場でやらかしたあかつきには、銃弾によるツッコミを容赦なく加えられます。

 戦場における薬莢のデメリットについて「自衛隊いたとき射場で手首に当たって身に染みたわ」「服の中に入ってきたら…もう地獄」といった実体験をコメントで語る視聴者も……。

G11の開発のきっかけは「邪魔なものならなくせばいいじゃない」

 いろいろと軍人を悩ませてきた空薬莢。1970年代、当時の西ドイツから、次世代自動小銃の開発を頼まれたヘッケラーアンドコッホ社は、これに一つの答えを出します。邪魔なものならなくせばいいじゃない

 とかいう単純な発想だったのかどうかは分かりませんが、ヘッケラーアンドコッポ社は、無薬莢弾またの名をケースレス弾を用いる自動小銃の開発に乗り出します。

 そして、冷戦が終わろうとしていた1989年。ついにその銃は姿を表します。

 「Heckler&Koch G11 アサルトライフル」

 次世代のアサルトライフルを目指したような、従来の銃火器にはない直線的なデザイン。

 最大の特徴である無薬莢弾の使用は、バーストで毎分2000発という驚異的な発射速度を実現。

 この他、薬莢が無くなることにより、弾丸の携行量が増える、弾薬製造コストが低く抑えられるなど、これでもかというぐらいメリットずくめ。

 まさしく史上最強のライフルに……なるはずだというヘッケラーアンドコッホ社の目論見は見事に外れました。

 目論見が外れてしまったヘッケラーアンドコッホ社。「儚い夢だったな・・・」「なにがダメだったんだ」「結構かっこいいのになぁ」といったコメントが寄せられました。

使い勝手とコストに負けたヘッケラーアンドコッホ社の挑戦

 薬莢には、弾薬を湿度や熱から守るという大事な役割があります。それがないG11のケースレス弾は湿気に弱く、最悪の場合、発射できない事態に陥る危険がありました。また、薬室内の熱を火薬がモロに受けるので、最悪の場合、暴発なんてことも起こりえます。

 G11のこのリロード、こんな悠長なこと、戦場でやってられますか?

 いざ出来てみれば、この信頼性の低さに使い勝手の悪さ。そして、冷戦終結による予算削減もあって、西ドイツ軍は調達数を削減。G11はごく一部の部隊のみの配備にとどまり、残りはG36への更新で間に合わせました。

 ちなみにコスト削減を期待されたケースレス弾ですが、生産量が評価版レベルにとどまったため。コストが非常に高くなりました。

 そのお値段、50発入りマガジン一本分で5万円なり。

 こうしてヘッケラーアンドコッホ社の挑戦は、使い勝手とコストに負け、幕を閉じました。

 いらないと思ったものを無くしたら、自分自身がいらない子になったG11。世の中、やはりいいことずくめのものは、そう簡単に作り出せないのでしょう。

 あれから20年以上たった今でも、ケースレス弾を用いた銃は実用化されていません。

 メリットずくめのはずだったのに、最終的には使い勝手とコストに負けたヘッケラーアンドコッホ社の挑戦。「必ずどっかに落とし穴が・・・」「残念だねぇ」「恰好はいいのに」といったコメントが投稿されました。

G11の野望は夢に終わったが…薬莢処理の技術革新は続く

 空薬莢の処理については、現在でも様々な工夫が行われています。

 たとえば戦車では燃尽薬莢、発射薬の燃焼とともに燃え尽きる素材を使い、薬莢排出の手間を省いています。

 また、FN社の「アサルトライフル F2000」は、空薬莢を銃の前方から排出する機構をつけ、送り出す途中で冷却、そして顔面がら離れたところから重力で落とし、戦闘で極力支障が出ないように工夫してあります。

 20年以上たった今でも、ケースレス弾を用いた銃は作られていないが、問題だった空薬莢の処理については工夫が行われていることに、「技術の進歩は凄いな」「堅実な対処だな」といったコメントが寄せられました。

 ヘッケラーアンドコッホ社のG11の歴史をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画を視聴してみてください。

▼動画はこちらから視聴できます▼

『迷銃で撃て! H&K G11 【迷列車派生シリーズ】』

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