スタジオライフの最高傑作 『死の泉』12年ぶりに再演決定!

この連載で何度か紹介してきた劇団「スタジオライフ」。男優が女性役も演じるという独特の手法をとり、耽美な世界観と美しく繊細な舞台演出で確固たる人気を誇る劇団が12年の時を経てその最高傑作といわれる『死の泉』を再び手掛けます。

時は第二次世界大戦、ナチス支配下のドイツ南部が舞台の幻想的で耽美的なミステリーです。

スタジオライフはこれまでナチスドイツを扱った作品をいくつも上演してきました。『パサジェルカ』(原作:ゾフィア・ポスムイシ/2004年初演)、『アドルフに告ぐ』(原作:手塚治虫/2007年初演)、『エッグスタンド』(原作:萩尾望都/2017年初演)などの一連の上演作品はいずれも好評を博していますが、1999年に初演が行われた本作はその原点といえます。

何度かの再演と、同テーマを扱った他作品の上演を経たいま、スタジオライフは原点にして最高傑作、いわば到達点を見せてくれることでしょう。

皆川博子の長編小説の舞台化

原作はその美しくも衝撃的なストーリーか?話題となり、第32回吉川英治文学賞をはじめ数々の賞を受賞した皆川博子の『死の泉』。文庫本で実に636ページに及ぶ大作です。

未婚のまま身籠った女性たちに安心して子どもを産ませる目的でドイツに作られた組織、レーベンス・ボルン(命の泉)を舞台に、狂気や残虐性を孕んだ世界の悲劇を描く重厚な物語。しかしそんな中にも時に妖しげな美しさが見え隠れします。

この難解な文芸作品をスタジオライフの演出家・倉田淳氏が、原作の持つ世界観を美しく繊細に舞台上に再現します。演じる役者たちは、舞台では再現不可能と思われていた原作の登場人物を、見事なまでに妖しげに生き返らせるのです。

美女、美少年、しかもそれはすべて外国人である登場人物たち。日本人の成年男性が演じると、どんなに工夫してもどんなにイケメンが演じても違和感が残るところですが、圧倒的な美しさと確かな演技力を持つスタジオライフの役者たちの手にかかると、まるで原作の世界からそのまま抜け出してきたような幻想にとらわれます。

原作と劇団、双方の世界観の幸福な一致

本作の重要な登場人物の一人にエーリヒという人物がいます。彼はカストラート(=去勢によって子供の高い音域を保させた男性歌手)であり、永遠の美少年といえる存在です。

普通は最も演じるのが難しい役であるはずですが、スタジオライフにとっては逆に最も得意とする役どころになります。それはもう一つの代表作、萩尾望都原作の『トーマの心臓』の舞台化で証明済みです。「狂気のなかの美しさ」や「重い歴史の中に現出する美」などをいとも簡単に表現できる、いやむしろそれを得意とする劇団は他に類がありません。

まさに今回は原作と劇団、双方の世界観が幸福なことに見事に一致した作品といえます。

2.5次元とは一線を画したステージ

昨今、コミックやアニメを舞台化する2.5次元というジャンルが注目されていますが、スタジオライフは長きにわたり小説やコミックの舞台化を手掛け、その再現度と舞台作品としての完成度で高い評価を得てきました。

スタジオライフの代表作『死の泉』。今だからこそ、こんな時代だからこそ、この作品の価値を再認識するに違いありません。一度だけではなく、何度も見に行って欲しい一作です!


Studio Life×東映ビデオ 舞台プロジェクト
『死の泉』

東京公演 2月27日(木)〜3月8日(日) 紀伊國屋ホール
大阪公演 3月13日(金)〜15日(日)近鉄アート館
原作:皆川博子(ハヤカワ文庫刊)
脚本・演出:倉田 淳

作品の詳細は公式サイトで。

出雲 あきら 出雲 あきら(いずも・あきら)

演劇評論家。ラジオや雑誌等で多くの演劇コーナーを担当。トニー賞授賞式に22回出席している唯一の日本人。広告会社電通に勤務する会社員でもある。

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