奥多摩登山ブーム 81歳ガイドに聞く登山の魅力と危険

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

JR青梅線の最終駅、「奥多摩駅」……、休日の朝、バスを待つ登山客で駅前は溢れています。奥多摩は、日本百名山の雲取山、御前山、三頭山、川苔山など、初心者でも登れる山が多いことから人気になっています。

しかし、登山ブームと比例して、山の遭難も年々増えています。奥多摩観光協会では、初心者でも登山を楽しんでもらおうと『奥多摩友の会』を運営し、会員限定のイベントを開いています。

年間34回のイベントで、四季を通じて奥多摩の山々を、経験豊富なガイドさんが案内してくれます。

ガイドさんは60代が中心で、現在45人が登録しています。最高齢は今年81歳の田中信義さん。お年を聞いて誰もが「え〜、お若いですね!」とビックリ! 日に焼けた頬がツヤツヤと光って、背筋がシャンとしているので、81歳には見えません。「これでも3回腹を切っているんだよ。56歳で胃潰瘍、62歳で腸閉塞、72歳で前立腺癌の手術を受けてね、75歳で『お迎え』が来ると思ったんだけどね」と笑います。

田中さんは昭和12年生まれ……、小学3年生の頃、戦地から復員した担任の先生から「おい田中! キャッチボールやるべ!」と声をかけられます。ビー玉に布を巻き、針で縫ったボールでキャッチボールをしたのがキッカケで、スポーツが大好きになります。中学では卓球、バレー、バスケ……、足が速く、陸上でも活躍。就職した日野自動車では、野球やソフトボールのクラブに入り、休日も汗を流す日が続きました。

病気知らずの田中さんでしたが、55歳のあたりから体調がすぐれない。精密検査で胃潰瘍が見つかり、胃の3分の2を切除します。

「あの夏は、好きな素麺をツルツル食えないのがつらかったな。よく噛んで、口の中で糊みたいにしてから飲み込んでいたからね」

60歳で定年を迎え、毎日が日曜日……、ある日新聞を読んでいると、「奥多摩観光協会で、ガイド募集」という記事に目が止まります。これに応募した田中さん、研修を受けて、第二の人生が始まりました。


「山に登るのが楽しくてね、この楽しさを人と分かち合いたい。それができるのがガイドだったんだよ」

ところが、ガイドをしてみると意外なことも多いそうです。

「中高年のお客さんはね、『若い頃、登山の経験があるから』とか『これから山に登って体を鍛えたい』という人が多くてね、山で鍛えるんじゃなくて、鍛えてから山に登ってほしいんだよね」

田中さんは朝5時に起きて、ヨガとラジオ体操で体をほぐします。ガイドをする時も、お客さんと一緒に時間をかけて体操をします。

「見ていると準備運動もせずに登る人がほとんどだね。最初は元気があるからどんどん登っていくけど、体力を残さないと、下りで足がつって動けなくなる人も中にはいるんだよ」

登山の楽しみは山で食べるお昼ご飯! 田中さんはリュックの中から漬物や佃煮をお客さんに振る舞います。

「おにぎりの上に佃煮を乗せて食べてごらんよ、本当にうまいから!」

田中さんのガイド歴は、今年で19年になります。80歳を過ぎると日一日と体力の低下を感じるそうです。ガイドに定年はなく、自分でその時期を決めないといけません。

「人の命を預かっている仕事だからね。引退はいつも考えているよ。でもね、お客さんから『きょうは楽しかった、ありがとう』って言われると嬉しくてね、また元気になれるんだよね」

夏の奥多摩はどの山がお勧めですか? とうかがうと、

「そうだね、夏の登山はきついから、滝めぐりはどうだい? 奥多摩には『百尋ノ滝(ひゃくひろのたき)』という素晴らしい滝があるよ。マイナスイオンをたっぷり浴びてさ、体力に自信があれば、そこから川苔山へ登るのもいいね。装備をしっかり! 準備運動と、ゆっくり登ることも忘れないでね

田中さんの夢を聞くと、

「富士山も登ったし、そうだな、生きている限り、健康でいたい。それだけだね!

一般社団法人 奥多摩観光協会
〒198-0212
東京都西多摩郡奥多摩町氷川210(奥多摩町観光案内所内)
TEL:0428-83-2152

奥多摩町観光案内所
定休日:年中無休(年末年始を除く)
開所時間:8時30分〜17時00 分

『奥多摩友の会』は随時募集中です。
詳しくは奥多摩観光協会のホームページをご覧ください。
http://www.okutama.gr.jp

上柳昌彦 あさぼらけ
FM93AM1242ニッポン放送 月曜 5:00-6:00 火-金 4:30-6:00

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

関連記事(外部サイト)