剛力彩芽、“トイレ博士”佐藤満春に学ぶ 日本のトイレ事情

女優・剛力彩芽が、“トイレ博士”佐藤満春氏から、日本のトイレ事情を学んだ。

剛力彩芽、佐藤満春氏

剛力彩芽、佐藤満春氏

女優・剛力彩芽と持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」を学ぶニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』。第19回放送はSDGsのゴール6「安全な水とトイレを世界中に」がテーマとなった。お笑いコンビ・どきどきキャンプとしての活動の傍ら、テレビ・ラジオ番組の構成作家としても活躍する“トイレ博士”佐藤満春氏をゲストに招き、日本や世界のトイレ事情に迫った。

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実は、SDGsにもトイレにかかわる目標が存在する。それがゴール6の「安全な水とトイレを世界中に」。ユニセフ(国連児童基金)世界保健機関(WHO)が2019年に発表した水と衛生に関する共同監査プログラム(JMP)による報告書では、世界の42億人が現在も安全に管理された衛生施設(トイレ)を使うことができておらず、6億7300万人がトイレを利用することすらできず屋外排泄をしているという事実が伝えられている。今回は“トイレ月間”を前に、この問題に焦点を当てるため、トイレやトレ文化に造詣が深く「トイレ博士」として、さまざまなメディアで活躍する「サトミツ」こと佐藤満春氏に、剛力が話を聞いた。

剛力 「はじめまして……ですね」

佐藤 「はい、お会いするのは初めてです。ニッポン放送の中で一番出るべきなのは、この番組だと思ってきたので、ようやく出させていただけてうれしいです」

剛力 「こちらこそ、出ていただけてうれしいです。改めてサトミツさんのプロフィールを……と勝手にサトミツさんと呼ばせていただいていますが大丈夫でしょうか」

剛力彩芽

剛力彩芽

佐藤 「ありがとうございます。仲の良いオードリーの若林くんが呼び始めて、それがいつのまにか広まって、そう呼んで読んでいただいております」

佐藤満春

【プロフィール】
佐藤満春(さとう・みつはる)
1978年、東京・町田市生まれ。2001年お笑いコンビ「どきどきキャンプ」を結成し、テレビ・ラジオ番組の構成作家としても「オードリーのオールナイトニッポン」「『ナイツ・ザ・ラジオショー』を担当するなど活躍。トイレやトイレ文化に造詣が深い「トイレ博士」としてもイベントなどに出演。名誉トイレ診断士、日本トイレ協会会員、トイレクリーンマイスター、掃除能力検定士、サトミツ&ザトイレッツ、トイレくんなど活動は多岐にわたる。

佐藤 「何をしているやつなのか、よくわからないですね(笑)。自分は、トイレや掃除が好きなのですが、そちらに深く入り込んでいって、こういう形になりました」

剛力 「トイレ診断士……とかは何となく分かりますが、『トイレくん』というのはどういうことでしょう」

佐藤 「トイレくんは、サカナくんのトイレ版です。頭に便器をかぶりまして、小学校とか、幼稚園とか、保育園にトイレの話をしにいくんです。その時にトイレくんと名乗っております。元々は『戸井廉太郎(といれんたろう)』と名乗っていたのですが、子供たちから『覚えにくい』という声をいただいて、トイレくんでいこうと・・・」

剛力 「シンプルに」

佐藤 「そうです。子供たちにシンプルにメッセージを伝えるべきなのではないかということでやってきました」

剛力 「早速、いろいろうかがいたいのですが、世界的には11月19日が『世界トイレデー』で、日本でも11月10日が『いいトイレの日』ということで、11月はトイレ絡みの日が多い、と」

佐藤 「もう、トイレ月間ですね」

剛力 「正直知らなかった……」

佐藤 「まだ、認知度が足りないのですけども、僕が一番忙しいのが11月なんです」

剛力 「どういうことで忙しくなるんですか」

佐藤 「11月10日から19日にかけてイベントが行われたり、僕が所属する日本トイレ協会という団体がトイレシンポジウムを開催したりですとか、ラジオ番組とか雑誌とかで取材をしていただいたりとかですね」

佐藤満春氏、剛力彩芽

佐藤満春氏、剛力彩芽

剛力 「私はSDGsの番組をずっとやってきましたが、ゴール6にもある、この話題にはまだあまり触れてきていませんでした。でも、何となく世界トイレデーは聞いた覚えがあります」

佐藤 「『ワールド・トイレット・デー』を方を先に耳にされているというのは、アンテナを張っていらっしゃる証拠ですね。歴史としては『いいトイレの日』の方が長いので」

『世界トイレデー』は劣悪な衛生環境のトイレが与える悪影響を世界の人に訴えるべくシンガポールの社会起業家ジャック・シム氏がWTO(世界トイレ機構)を立ち上げ、国連に提言して2013年に制定された日。「ミスター・トイレ」とも称されるシム氏は、22億人が安全に管理された水にアクセスできず、42億人が安全な衛生設備を自宅に備えていないことで、多くの命が失われている世界の現状に危機感を抱き、SDGsのゴール6にも掲げられている問題の解決に尽力する人物だ。

佐藤 「みんなで団結して世界のトイレ事情を考えていった方がいいんじゃないかとシム氏が提言し、動き出したのが『世界トイレデー』です。日本と世界のトイレ事情は全然違いますし、日本だけでトイレのことを考えていても駄目だと思っています」

そんな佐藤氏が、トイレにのめりこむことになった理由は何だったのだろうか。剛力の素朴な疑問に、佐藤氏は「元々めちゃくちゃ暗くて、一人でいる時間が好きだったんです。トイレを部屋みたいに捉えていて、トイレで本を読んだり、勉強したりする思春期を送って来ました」と、トイレを身近に考えるようになったきっかけを明かした。

佐藤 「なぜか、こんなに暗いのにお笑い芸人になろうと思ってしまい、2001年にお笑い芸人になったのですが、芸人さんがみんなでワーッとやっているノリになかなかなじめなくて、お笑いの仕事をしながら、ライブ会場のトイレにずっといるというような生活をしていたんです。その時、2002年に『プロジェクトX』(NHKのドキュメンタリー番組)で、ウォシュレットを開発したTOTOの本宮久さんという方の『革命トイレ、市場を制す』という回がありまして、僕が大好きなトイレ、ウォシュレットにはこんなドラマがあるんだと目の当たりにするんです。技術って、こうして進歩しているんだと。東京・新宿のショールームだったと思うんですけど、番組のエンディングで流れた翌日に行って見て回ったら、僕はトイレが好きなのに全然トイレのことを知らなかったと反省しまして、そこからウォシュレットとか温水洗浄便座の歴史とかを勉強し始めて、止まらなくなってしまって20年弱。トイレと、どう向き合っていけばいいのかということを考え続けています」

剛力 「好きの延長線上!」

剛力彩芽

剛力彩芽

佐藤 「そうなんですよ」

剛力 「でも、トイレって良いですよね。私も小学校、中学校は保健係で、トイレットペーパーの補充とか、そういうのをやっていて」

佐藤 「唯一のプライベート空間じゃないですか。仕事をしていたら、いろいろな方と顔を合わせるし、家にも家族がいる。もちろん、一緒にいて心を許せる仲間ではあるけれど、本当に一人になって自分と向き合う場所って、僕はトイレだったんです。そんなにお世話になっているトイレのことを、僕はこんなにも知らなかったのだとその時に感じたんです」

感動したことの一つには、まさにSDGsにもつながる「節水」の技術革新もあったという。

佐藤 「僕がトイレを好きになったタイミングは、ちょうどタンクレストイレが流通し始めたくらいなんです。タンク式の昔の大きいトイレは一回流すのに20リットルもの水が必要になる。それが、トイレ業界的にも節水の時代になっていくと、メーカーさんが頑張って20リットルだったものが13リットルになったんです。水という資源は、ここからもっと逼迫するから、もっともっと減らさないといけないと。日本はメーカーさんの技術力が高いから、われわれが何とかしなくちゃいけないと頑張って、さらにタンクレストイレ、水道の水に直接圧力をかけて流す水道直結式というものを開発するのですが、これによって13リットルが6リットルになるんです。すごくないでうか」

剛力 「えっ、そんなに減るんですか」

佐藤 「そうなんです。今の最新機種は4リットルまで下がっています。この技術革新が20数年で起きているんです。トイレの中の形状を水が流れやすい形にするとか、表面を釉薬や焼き上げの技術を上げてとにかくつるつるにするなど、どんどん技術が進んでいます」

剛力 「鳥肌が立ちますね。当たり前の存在じゃないですか、トイレって。そこまですごい技術革新が起こっているなんて・・・」

佐藤 「もちろん、ビジネスの目線もあると思うんですけど、各社が地球のこととか、未来のために日本のメーカとしてのプライドをかけて開発していっているというのがドラマチックで、かっこいいなと思います。そこに惚れちゃったんです」

佐藤満春氏、剛力彩芽

佐藤満春氏、剛力彩芽

剛力 「それは惚れますし、毎日感謝して使うようになりますね」

佐藤 「今は4リットルとかになったんですけど、これ以上は無理だと言われています。だからこそ、次はわれわれの意識改革がすごく大事になるんじゃないでしょうか。トイレのハードが良くなっても、みんなの意識が変わっていかないと変わらない。SDGsというワードは最近言われるようになったものですけど、実は『トイレと節水』の問題は、ずっと以前からあるんです。鳥のさえずりなんかが流れるトイレ用の擬音装置『音姫』は1988年に発売されたものなのですが、女性がトイレを2回流すというのが、どうしてもあると。それは仕方ないのですが、水が2倍かかってしまうのも確かです。それをどう防ごうかということで開発されたのが、いわゆる『音姫』なんです。節水というものに対しても、数々のアプローチが既にあるんですよね」

剛力 「私たちが暮らしいやすいとかだけでなく、地球のことなどを本当に考えているというところがすごいですね。そう思うと、トイレを見るたびに私たちも地球のことを考えなきゃという気持ちにたどりつく気がします」

佐藤 「日本は恵まれているし、環境もすごく良いんです。トイレに対する節水制限などを設けている国や地域もたくさんありますし、シビアに水という資源をどう守っていくかは考えていかない問題だと思いますね」

剛力 「SDGsの目標6に入っていますけど、やはり日本は圧倒的に水もトイレも環境的に恵まれているじゃないですか。海外に行って帰ってくると、そこはすごく安心するんです。だから、私もここへの思い、意識がどうしても薄くなってしまう印象があります」

佐藤 「生まれながらに、そういう環境に育っているので、基本的に何も意識せず、知らないのが当たり前だと思います。その中で、こういった番組やメディアで気付きができるなら、それは素晴らしいことだなと思っています」

剛力 「知らないと、本当に知らないままですから」

佐藤 「剛力さんみたいな方が発信してもらえると、すごくうれしいですし、ありがたいですね」

発信の重要性。それは佐藤氏自身、強く意識している部分で、「日本のトイレからこんにちは」なる曲までリリースしている。

剛力 「サトミツさんは、トイレの曲を出されているんですか」

佐藤 「トイレのいろんな問題を解決したいなと思いまして、2015年にトイレのバンドを結成しました。学校でトイレに行けないだとか、特に小学生でトイレに対してネガなイメージを持っている子がいまだに多くて、とにかくトイレって楽しいものなんだとか、明るいものなんだと子供たちに伝えたかったんです。そのために劇をつくったりもしているのですが、音楽もいいツールだなと思い、知り合いのミュージシャンに声を掛けて『サトミツ&ザ・トイレッツ』というバンドを結成して小学校に歌いに行ったりとかしています」

ここまでは、日本のトイレ事情を中心に話が進んだが、SDGsに掲げられているように、トイレの問題は世界規模で存在する。「次に世界のトイレ事情について話を伺いたいのですが」と切り出した剛力に、佐藤氏はよりシビアな実状を説明した。(→『剛力彩芽、“トイレ博士”佐藤満春に学ぶ 世界のトイレ事情』記事へ続く)

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