発酵食品ブームで人気の「かんずり」「黒こうじ」とは

上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)に発酵デザイナー・小倉ヒラクさんがゲスト出演。日本や世界のさまざまな発酵文化をリサーチする小倉さんが、そのおいしさや、ルーツを紹介した。

小倉ヒラクさん・上柳昌彦アナウンサー

早稲田大学で文化人類学を学び、企業のデザイナーとして活躍していた小倉さん。体調を崩したのを機に発酵食品に目覚め、東京農業大学で研究生として発酵学の世界へ。全国の醸造家たちと商品開発、絵本・アニメの制作、ワークショップを開催し、18年〜19年に、47都道府県を旅して日本の超ローカルな発酵文化を発掘。20年には東京・下北沢に「発酵デパートメント」をオープンした。

■唐辛子の発酵調味料「かんずり」

上柳:味噌、醤油、日本酒などこれらは全部発酵食品ですが、小倉さんは日本中旅をして発酵食品をずっと訪ね歩いたそうですね。

小倉:はい、全部で71の地域を行って、その土地ならではの発酵食文化を尋ねるという旅を8か月間ぐらいしていました。

上柳:きっと、各地には僕が知らないような、いろんなものがあると思うんですけど。小倉さんの著書『日本発酵紀行』の表紙からして分からず。

小倉:そうですよね(笑)

上柳:この本の表紙には、寒そうな雪国で、何か赤いものを雪にぱーっとまいているんですよね。畑に種をまくように。この写真は何ですか?

小倉:これは新潟県妙高の雪原地帯で作られている、かんずりという、唐辛子の発酵調味料です。

上柳:唐辛子も発酵するのですか?

小倉:発酵するんですよね。

上柳:何で雪にまいているんですか?

小倉:これは「雪さらし」という作業です。大寒の日(1月)前後に塩漬けにした唐辛子を雪の中に埋めて、熟成させてしんなりしたものを、さらに麹や塩を加え、味噌状に発酵させていくんです。本当に手間がかかっていて、4年くらいかかるんです。

上柳:4年!

小倉:その下処理の、雪の中で唐辛子を熟成させていくというプロセスの写真なんです。地元の女性達が唐辛子をまいているんですよ。

上柳:雪面に唐辛子をまいていますが、この上にまた雪をかぶせるんですね。

小倉:雪がまた降ってくるので、雪の中に埋まっちゃうわけです。

上柳:そうか、放っておけば雪がどんどん降り積もっていくわけですね。

小倉:はい、豪雪地帯なので。

上柳:そこで熟成をさせると。

小倉:そうです。

上柳:この「かんずり」は、最終的にはどんな食感の、どんな見栄えのものができるんですか?

小倉:赤い味噌ですね。唐辛子フレーバーの赤い味噌みたいなものができます。

上柳:唐辛子の辛さはどれぐらい残っているんですか?

小倉:唐辛子は、大きさと辛さがだいたい反比例するのですが……。

上柳:大きいとあまり辛くない、小さいと辛い?

小倉:はい。で、この唐辛子はとても大きいんですよ。人の手の平ぐらいあるんです。だからスパイシーではあるんですが、そんなに辛くないです。見た目は真っ赤だけど思ったより辛くないので、どんな場面でも、うま味と辛味を付けたい時に使える万能調味料です。

上柳:調味料として例えばどんな料理に使っているのですか?

小倉:地元の人は鍋に使ったり、ラーメンに入れたりしています。

上柳:おいしそうですね! かんずりは、誰が作り始めたか分かっているんですか?

小倉:分かってはいないのですが、もともと唐辛子の塩漬けを作っていたらしいんです。保存食として。それがある日、雪の中に埋まったと。埋まっていたものが春になって出てきたと。

上柳:なるほど、雪がとけて。

小倉:それが凄くしんなりしておいしかったと。これは意外にいいんじゃないか? っていうところから発展していったのではないかと。有限会社かんずり、という会社さんがあるんですけど、そんなことを言ってらっしゃいました。所説あるでしょうが、かんずりを商品化しているのはそこしかないので、おそらくはそうだと思います。

上柳:商品化もしているのですね。小倉さんは、東京・下北沢に“発酵デパート”というお店を去年(2020年)の春にオープンさせれていますよね? 別の番組スタッフの話ですが、「あそこは全国の珍しいものが置いてありますよ」と言っていて。そちらに、かんずりも置いてありますか?

小倉:置いてありますよ。しかも普通のかんずりではなく、6年も熟成されたスペシャルかんずりを置いています。

上柳:でも、そういうものって説明がないとなかなか食べてみよう、とは思わないのでは? 何かディスプレイに工夫しているんですか?

小倉:もちろんそういうのもありますけど、実は飲食店も併設しているので、そこでかんずりをちょっと試食できるので。そういう形で買ってもらっています。かんずりは、お店でもベストセラーの1つです。

上柳:ちなみに、ベストセラー上位のものは他にどういうものがあるんですか?

■「黒こうじ」で手作り甘酒

小倉:今すごく人気なのが “黒こうじ”ですね。元々、泡盛や焼酎の“もろみ”を作るときに使う黒いカビなんですけど、それでみんな甘酒を作っているんです。

上柳:甘酒を自分で作っちゃうんですか?

小倉:はい。黒こうじで甘酒を作ると飲むヨーグルトみたいな、酸味がある甘酒ができるんですよ。それがすごく人気です。

上柳:へぇ〜! 体に良さそうな感じですね。

小倉:クエン酸がたっぷり含まれていますからね。

■納豆は世界中にある?

上柳:「酵母」「こうじ」とはそもそもどういうものなのか、簡単に説明していただけますか?

小倉:人間によく懐く、いいことをしてくれる微生物を発酵菌と言うんですけど、その中で日本で代表的なものが、こうじ。世界中でポピュラーというか、多く使われているのが、酵母です。他にも、最近すごく注目されているのがヨーグルトとか漬物に入っている乳酸菌。こういうものも発酵菌の一種ですね。

上柳:日本は発酵食品が多いようなイメージがありますが、世界の中の日本の発酵食品はどうなんですか?

小倉:一言で言うと、とてもバリエーションが多くて。ただ日本が特別と言うより、エリアで捉えてほしく、東アジアは特異的に発酵食品のバリエーションが多いです。韓国、中国、日本、他にもミャンマーとか。この辺りの地域が飛び抜けていろんなタイプの発酵食品が集積されている場所です。

上柳:それはなぜなんですか?

小倉:気候や温度、そしてカビの種類が多いですね。ある程度の湿度があるので、カビが元気で。カビが発酵のスターターになることによって、非常に複雑な発酵食品ができます。ヨーロッパでもチーズにカビ付けをしたりしますが、スターターじゃなくてフレーバー付けなので。

上柳:後に付ける?

小倉:そう。一方、アジアはカビがスタートになるものが多くて、カビの分解作用によって味も複雑になるし、カビの作った物質にまた他の菌が寄ってくるので、バリエーションもどんどん多くなっていくと。

上柳:納豆が大好きでよく食べますが、どこから来たのかなと。以前この番組に納豆の専門家にも来てもらいましたが、東南アジアの方にもやっぱり納豆的なものがあると聞きました。

小倉:そうですね、あとはアフリカにもあります。

上柳:ほう。

小倉:なので、納豆はどこがルーツかというより、大豆的な豆も世界各地にあるし、納豆菌というのが世界中どこにでもいる菌なので。だから、やたらとある材料と、やたらといる菌の組み合わせなので、たぶん同時多発的にできたのではないかと。それで日本や東南アジア、アフリカでは日常食として発達してきたようです。

小倉ヒラクさん

この他にも番組では、小倉さんが発酵デザイナーへ転身したエピソードや、戦国武将が愛した味噌の話なども紹介。健康と美容に効果が期待できると、近年人気の発酵食品。味噌や醤油、納豆はもちろん、この他にも、古くからその土地と深く結びついて育まれたおいしい発酵食品はたくさんある。地元、旅先、気になる地域の発酵食品を試してみてはいかがだろうか。

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