宮崎県・綾町の初代ふるさと大使「おたすけマン トキ」ってどんな人?

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

「結び屋 おたすけマントキ」公式インスタグラムより

宮崎県の中央部に位置する、人口7000人ほどの町・綾町。この町に「おたすけマン トキ」と呼ばれる元気な若者が暮らしています。

レゲエの髪型・ドレッドヘアに甚平を着て、靴を履かず、1年中裸足。ターザンのような野生児です。本名は、森岡朗(とき)さん・26歳。

大阪生まれの森岡さんは、小学3年生から野球を始めたそうで、とにかく肩が強い。中学時代の野球部では、投げたボールを後輩が取れず、それで監督に叱られたのだとか。「何で俺が怒られなあかんねん。お前が取れるようにしろや!」と喧嘩になり、それがきっかけで野球をやめて、不登校になってしまったそうです。

高校は1ヵ月で退学。家庭もいろいろ事情があって、森岡さんは母親と妹の3人で暮らします。

「おかんが体調を崩していたので、僕が生活費を稼ぐために、昼間は工事現場、夜は居酒屋で働いていましたね。まわりは高校生活をエンジョイしているのに、『何で俺だけこんなに働かなあかんのや』と自暴自棄になったことも。『いつか、こいつらのやれないことをやってやる』と反骨心が生まれたのもこの時期でしたね」

「結び屋 おたすけマントキ」公式インスタグラムより

そのうち、母親の体調もよくなり、「いままで苦労をかけてごめんね。これからは好きに生きていいよ」と言われます。

「それなら世界一周してみよう」と思い立ち、旅行資金を稼ぐために18歳のとき、復興作業員として陸前高田や大船渡で集合住宅の建設に携わります。1年半ほど住み込みで働き続け、いよいよ世界一周の旅が始まります。

最初に向かった国は、フランスのパリでした。「バックパッカーはヒッチハイクと野宿をする」と思い込んでいた森岡さんは、野宿していた公園でアフガニスタン人の青年と知り合い、彼がいた難民キャンプに転がり込むと、そこで1ヵ月ほど過ごします。

その青年から「男は戦争に行かされるので、弟と逃げてきた」と聞き、「日本に生まれただけで幸せやなぁ」としみじみ思ったそうです。その後、向かったベルギーで強盗に遭い、パスポートと現金を奪われ、一旦帰国します。パスポートを再発行してもらうと、2週間後にはカナダへ旅立ち、今度はアメリカ大陸縦断。ヒッチハイクの旅が始まります。

中南米の貧困な村では、あどけない子どもからお金をせがまれます。「お金をあげても、貧困問題は何の解決もせぇへんなぁ」と思った森岡さん。「旅をするのが目的の旅ではなく、誰かのためになる旅がしたい。自然とともに生きる術を身につけていたら、この村を豊かにできるのでは?」と思ってネットで調べると、「自然とともに生きる町・綾町」を見つけます。

「結び屋 おたすけマントキ」公式インスタグラムより

「こんな町があったんだ!」と思い、1年半の旅を終えた森岡さんは、すぐに綾町を訪ねます。まずは情報収集してみようと、カフェに入りました。

「あの、いま僕はお金もなく、友達もなく、家も仕事もないんですが、自然とともに生きる術を学ぼうと思って綾町に来ました!」

ドレッドヘアに裸足の見た目ですから、お店の人も驚きますが、偶然にもその店は綾町の森を守った郷田實・元町長のお孫さんがオーナーでした。住む場所や仕事を紹介してもらい、森岡さんが綾町に根を下ろしたのは、2019年12月のことでした。

郷田元町長の著書『結いの心』を読んで、人生が変わったという森岡さん。かつて綾町は、「夜逃げの町」と言われた貧しい過疎の町でした。高度経済成長期、若者は都会へと出ていきました。

そのころ、国の計画で、カシやシイなどの「照葉樹林」が各地で伐採されていました。日本中の山々がスギやヒノキの人工林に変わっていくわけですが、当時の郷田町長は「この森が豊かな日本文化を生んだのだから、残さにゃならん」と伐採を阻止。町をあげて森を守ったのです。

その後は自然豊かな「有機農業の町」に発展し、町民が一体となって町づくりに取り組むなど、50〜60年前に、この町は「SDGs」を実践していたのです。

「結び屋 おたすけマントキ」公式インスタグラムより

この本を読んだ森岡さんは、「これまでたくさんの人に助けてもらったのだから、今度はお返しをしたい」と思い、「おたすけマン トキ」と名乗ります。草刈りや溝に溜まった泥の掻き出しなど、何でも無料で請け負っているそうです。

この町に根を下ろし、2年が経った今年(2022年)1月。森岡さんは、YouTubeで綾町の魅力を発信することが認められ、綾町の「ふるさと大使」に任命されました。それも第1号の大使です。

森岡さんは「ふるさと大使になっても、僕は人と人を結ぶ『結び屋』であって、主人公ではないんです」と話します。改めて、綾町の魅力を伺ってみました。

「綾町に来て驚いたことは、子どもたちの元気がいいこと。東京や大阪を裸足で歩いていたら、みんな『やばいやつ!』と横目で見るか、無視するか……。でも『綾』の人たちは『何で裸足なの?』と、めっちゃ声をかけてきてくれるのが嬉しかったですね。綾町の主人公は、1年中緑あふれる森と、そこに暮らす人々なんですよ」

「結び屋 おたすけマントキ」公式インスタグラムより

■公式YouTubeチャンネル『結び屋 おたすけマントキ』
https://www.youtube.com/channel/UCG4pgu732tlwlyQiyUoBphA

■公式インスタグラム
https://www.instagram.com/otasuke_man.toki/

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