「ヒートショック」はなかった! 医師が解説、入浴中に死亡してしまう本当の理由

11月2日(水)、東京歯科大学市川総合病院の救急科部長・鈴木昌先生が、ジャーナリストの笹井恵里子がパーソナリティを務めるラジオ番組「ドクターズボイス〜根拠ある健康医療情報に迫る!〜」(ニッポン放送・毎週水曜21時~21時20分)にゲスト出演。厚生労働省の入浴関連事故についての調査に加わった鈴木先生に、危ない入浴習慣、入浴中に死亡してしまう本当の理由を聞いた。

寒い時期のお風呂場での事故死の原因として「ヒートショック」という言葉をよく聞くが、実は医学的根拠はない。厚生労働省は入浴関連の事故について大規模な調査を行い、その結果を2019年に発表。調査は東京都、山形県、佐賀県で、脱衣所や浴槽、洗い場など入浴に関係した場所から119番を要請したおよそ4600件を対象に行われ、そのうち亡くなった方は1500人。亡くなった方のほとんどは浴槽内で、男女ともに年齢が上がるほど死亡率が高くなっていた。

笹井:これまでの死因は、いわゆる「ヒートショック」と考えられてきました。ヒートショックというのは、急激な温度変化が血圧の上がったり下がったりを招いて、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすこととされていますが、でも実は、正式な医学用語ではないそうですね?

鈴木先生:そうです、医学用語として調べてみると「ヒートショック」という言葉はありません。おそらく、皆さんが想像しやすいような言葉として使った方々がいるのではないかと思います。なので、ヒートショックの定義ははっきり決まっていないと私は認識しています

笹井:実際に今回の調査で、心臓や脳血管の病気はあまりなかった?

鈴木先生:まず、死因が究明されたわけではありません。

笹井:はい。

鈴木先生:お亡くなりにならなかった軽症の方、中等症の方の病状を拝見すると、心筋梗塞は1%未満、脳卒中も10%はないだろうと見積もったわけです。

笹井:ではなぜ、入浴中に亡くなってしまうのでしょうか? 亡くなった方のほとんどは浴槽内で、そして生存された方は脱力感や意識障害があったということですが。

鈴木先生:私達が実際に患者さんを拝見し、肌身で感じたことですが、お亡くなりにならなかった方々のほとんどが、ちょっと意識がぼーっとしている、体が動かせなくなった、力が入らないという症状でした。非常に悪くなった状態ですぐに集中治療しなくてはいけない、というような患者さんはそんなに多くないんです。

笹井:はい。

鈴木先生:どこか病気が起こったわけではなく、体の調子が悪くなったような状態。そんなイメージです。

笹井:その“体の調子が悪くなった”というのは、どういう状態だったのでしょうか?

鈴木先生:状況が悪くなっている方々の体温は、非常に高かったんです。お湯の中に入っているから体温が高くなりやすいのだろうと。実際に40度ぐらいの熱の方もいて、そういう人達は意識が悪い状態、呼びかけても反応がすごく鈍い状態でした。

笹井:はい。

鈴木先生:ただ、体温が下がってくると回復されたので、「体温」がキーポイントになるだろうと。

笹井:なるほど。

鈴木先生:例えば、沸騰した湯の中に卵を入れれば、ゆで卵ができるのと同じように、体も湯の中に入れば温められます。だから、40度のお湯に入ったら体温が40度になってもおかしくないわけです。

笹井:そうですね。

鈴木先生:結局、「熱中症」ということに行き着くんじゃないか、と考えたわけです。

笹井:夏の季節の熱中症は分かりますが、湯の中で熱中症というのはイメージがしづらいですね。

鈴木先生:例えば、明日の気温は40度を超えるので外出を控えてくださいと言われたら、皆さん明日はものすごく暑い日だ! とイメージされますが、「40度の湯の中に入ることを、なんで危険だと思わないの?」という話です。

笹井:言われてみたら確かにそうですね。

これまで、入浴中の事故死は急激な温度変化によって血圧の乱高下を招き、心筋梗塞や脳卒中が引き起こされると考えられてきたが、本当の原因は「浴槽内での熱中症」の発症だと説明した。

また、番組では「危ない入浴習慣」として、

(1)寒い日は、熱々のお湯に浸かる

(2)大抵長湯をする

(3)食事の直後に入浴する

(4)飲酒後の入浴、もしくは風呂上がりにビールを一杯

(5)習慣ではないが、一人暮らしの高齢者、寒い家に住む人

の5つを挙げ、危険な理由、健康的な入浴方法についても解説した。

 

関連記事(外部サイト)

  • 記事にコメントを書いてみませんか?