中国と日本の硯はどこが違うのか

黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、製硯師の青柳貴史が出演。中国と日本の硯の違いについて語った。


黒木)今週のゲストは浅草の書道用品専門店、宝研堂の4代目でいらっしゃいます、製硯師の青柳貴史さんです。浅草に宝研堂という青柳さんのお店があるのですが、ロケに行ったことがあります。

青柳)ありがとうございます。

黒木)そのときの台詞が「いちばん黒い硯をください」という台詞だったと覚えていますけれども、黒い墨が出る硯があるのですよね?

青柳)はい。黒い墨を作れる硯が、実はあります。

黒木)あるのですね。

青柳)墨は煤でできています。植物性の菜種とかゴマとか、そういうものの油を焚いて灰が出ます。その煤を固めてできます。さらに、それが黒々と見える為には、硯にかなりの影響がありまして、その硯で擦ると、墨が黒々と見えるという石でできた硯があります。

黒木)ほう。

青柳)黒々とするには、きょうお持ちしているなかの「老坑」という硯。

黒木)端渓老坑の材で作った硯ということですね。

青柳)はい。硯史上、地球で生み出されている硯材のなかの最高級硯材で、これよりも墨を擦る性能の優秀な石はありません。

黒木)硯のイメージよりも小さいですね。手のひらサイズというか、墨が溜まるところがあまり無い。

青柳)硯と言えば本場は中国です。中国の職人さんが大体この硯の縮尺、大きさ、そして擦るところと溜めるところのバランス、8:2くらいなのですね。日本の硯は大体6:4です。

黒木)そうですよね。

青柳)中国の伝統的な作り方は8:2くらい。この方が硯のたたずまいが凛として見えるのです。美しく見えるたたずまいの黄金比があるのですね。擦るところが沢山あることが重要なのです。これは墨を擦り下ろすのに向いた石なので溜めるところが少なく、擦るところが多い。硯の定義は墨を擦り下ろすための道具です。溜める道具ではない。

黒木)なるほど。擦るものなのですね。

青柳)そうです。擦るものなので、石が大事なのです。そこに仕事のほとんどを掛けているのが製硯師の仕事です。

黒木)いまは毛筆で書くということもなくなって来ました。そういうなかで青柳さんが製硯師としてお仕事をなさっているということは、余程の熱いものをずっと持っていらっしゃるのではないかと思います。端渓老坑で作ったこの硯を見せていただきました。美しい形です。

青柳)製硯師というものは芸術家ではない。当時の硯職人さんもそうでしたけれど、僕は自分の作った硯に名前を彫りません。硯に名前を掘ってしまうと、作家性が強く出過ぎてしまうので。この硯を作るのにいちばん重要なのは、墨を擦る部分です。墨を擦る部分に良い材をあててあげる。材料を調理するだけの調理人なので、僕は名前を彫らない。こういう彫刻や形は、石を活かすためにあった当時のトラディショナルなデザインからヒントを得てお作りしました。


青柳貴史/製硯師

■大学在学中に、病床に伏せていた祖父より「教えるから硯を彫れ」と言われ製硯師の道に進む事を決心、21歳で大学を中退して父親に弟子入り。
■1939年創業の書道用具専門店「宝研堂」4代目となる。“製硯の貴公子”と呼ばれ世界的にも認められる製硯師。祖父、青蝠ロ男氏は中国で修行をして現地伝来の彫りを学び、父、彰男氏は雄勝(宮城県石巻市の雄勝硯は伝統工芸)に丁稚奉公をし、和硯の彫りも学んだ。
■製硯師として以外にも、大東文化大学文学部 書道学科非常勤講師といった教育者としての一面もあり、また定期的に自身の硯で個展をひらいている。
■オーダーメイドの硯製作だけではなく、修理・復元まで全てを手掛けている。そのため山に自ら採石に行くこともあり、どんな石が採れるのか知りたい、その石の特性を理解したいという硯への強いこだわりがある。
■硯づくりのなかで曲げてはいけないと思う精神は、山々や自然の表情を殺さないつくりを徹底すること。自分たちが石に刃物を入れるとき、自然に対する敬意を忘れないようにしている。
■2018年2月に著書『製硯師』を出版。

ENEOSプレゼンツ あさナビ
FM93AM1242 ニッポン放送 月-金 6:43-6:49

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