森永卓郎が世代別に厳選〜これからの人生設計を考える3冊

「垣花正 あなたとハッピー!」(9月11日放送)に経済アナリストの森永卓郎が出演。読書の秋。これからの世の中をどう生きるか、そのヒントが隠されている本を3冊紹介する。

文春文庫『機会不平等 』著:斎藤 貴男(※画像はAmazonより)

(1)若者にお勧め〜斎藤貴男著『機会不平等』

まずは、お子さん世代に読んで欲しい1冊、斎藤貴男さんの『機会不平等』。この本は名著中の名著です。2000年、小泉内閣が発足する前に、彼はこの本を書いています。これは、いかに日本のエリート層というものが庶民をバカにしていて、「こいつらなんかどうでもいい」と思っているかということを明かしたものです。みんな表面的には「これからは結果の平等ではなくて、機会の平等だ」と言うのですが、実はその機会さえ、まったく平等になっていない。「弱肉強食社会になると、一般庶民がどんなに頑張っても這い上がれない世の中になってしまう」ということを書いています。機会平等といえばスタートラインには立てるはずですが、スタートラインにすら立っていないということを、斎藤さんは鋭く指摘している。小泉内閣がやっていた構造改革策、市場原理をどんどん使って、強い人はより強くなる。それに引っ張られてみんな上がって行くというのは嘘で、庶民には這い上がる隙もない社会になって行くということを、明確に描いた本です。

若いうちから世の中の仕組みを知った上で人生設計をすべき

いま、小学校の子どもたちにどういう仕事に就きたいかを聞くと、野球選手やパティシエなど、夢を語るわけです。そして高校生に聞くと、いきなり公務員になりたいと言います。それはそれでいいのですが、この世の中でどうやって生きて行けばいいのか、その仕組みをまず知った上で、自分の人生戦略を考えるべきです。どういう世の中かわからないけれど、公務員は安定していそうだから選ぶということではなく、もっとしっかりと現実を見て、変わって行く世の中でどう生きて行くかを自分で考えるべきです。『機会不平等』は文春文庫、岩波現代文庫などから出版されています。ちなみに、文庫版は私が解説を書いています。

KKベストセラーズ『ユダヤの商法(新装版)』著:藤田 田(※画像はAmazonより)

(2)契約の重要さがわかる〜藤田田著『ユダヤの商法』

2冊目は『ユダヤの商法』、藤田田さんという日本マクドナルドの創業者の著書です。この本は、仕事をしている人向けに選びました。1972年ですから、大昔の本なのですが、復刻版が最近出ました。久しぶりに読んだら、びっくりしました。もちろん、昔の価値観というものではじまって、例えば「男が稼いで、女は使うのだ」というようなことが書いてある。時代遅れかなと思ったのですが、内容を見たら、まさに現代に対する痛烈な批判なのです。ユダヤ人は世界でいちばんビジネスの上手い民族だと言われますが、彼らは「契約の民」と呼ばれています。とにかく契約をきちんと守る。契約するまではすったもんだで、ガチに交渉するのですが、決まったらビシッとやるのがユダヤ人です。藤田田さんはアメリカへ輸出するときに、日本の製造が追いつかなかったそうです。それでも契約を守らなければいけないと言うので、大赤字覚悟で飛行機に載せて空輸して、納期に間に合わせた。それで信頼を得て、いまのマクドナルド帝国につながる大成功を収めたわけです。

ユダヤ人と反対の価値を持つ日本人

逆に言うと日本は、契約の民の反対だという指摘をしています。例えば、私がテレビに出演するときに、ギャラをいくら払うかということは後回しなのです。後でタダになるかもしれないのですね。私は、それはおかしいと昔から言っているのですが……。報酬を貰えなかったこともありますし、未だに日本はその辺りがすごく曖昧なのです。出てくれと頼まれて、いろいろとスケジュールを調整した後で、5分前になって「ごめんなさい、いらないです」なんて言われる場合もあります。契約をきちんと守らないと、グローバルなビジネスの世界ではやって行けないと思います。

時間も商品

それと、時間も商品なのです。人の時間を盗むなということです。打ち合わせが好きな会社の人は、会議ばかりやっている。私は、雑誌の取材は1分単位で料金を取っています。すごく評判は悪いのですが、そうしないと単なるネタ拾いで、「何か面白いネタはないですか?」とずっと粘られてしまうのです。人の時間を貰っておいて、一銭も払わないのはあり得ないことです。タクシーだって、信号が止まっている間もメーターは上がります。それと同じだと思うのです。

宝島社『アイドル、やめました。 AKB48のセカンドキャリア』著:大木 亜希子(※画像はAmazonより)

(3)これからの時代どう生きるか〜大木亜希子著『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』

そして3冊目、最後に勧めたい本は、高齢者はもちろん、これからを生きるすべての人に読んで欲しい本です。『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』。最近出た本です。AKB48では、“大ブレイクしなかった子”が9割以上を占めるのです。ブレイクしなかった彼女たちが卒業して行って、卒業後にどういう仕事をしているのかを追いかけたドキュメンタリーです。この本を書いた女性(大木亜希子さん)も元AKBなのですが、その後はライターやクリエイターになったり、創造性が発揮できる楽しい仕事を彼女たちはしています。例えば、プロ野球選手を辞めた人は、その後で辛い仕事についている人も多いのですが、この本に登場する子たちを見る限りは、みんなとてもハッピーなセカンドキャリアを実現しているのです。

2010年7月1日、ノキアシアター公演(AKB48-Wikipediaより)

本当はとても辛いアイドルの仕事

全員がほぼ共通して言っていることは、AKB時代の経験がいまに活きているということです。アイドルはものすごく辛い仕事なのですよ。レッスン、レッスンで、新曲が出るとなったら1日中拘束されて、ダンスや歌のレッスンをした後も、家に帰って自主練をしなければいけない。もっと辛い修行が握手会です。握手会には、私はオタクなのでよくわかるのですが、私みたいな気持ち悪い人がいっぱい来るのですよ。それでも、にこやかに「ありがとうございます」と言って握手をしないといけない。それを積み重ねて行くのです。肉体的にもしんどい、精神的にもしんどいことを乗り越えて、アイドルとして頑張った。そこで花開かなかったけれど、彼女たちには精神力が培われているわけです。

クリエイティブな仕事には「我慢と忍耐」が必要

我慢と忍耐は、クリエイティビティを発揮する仕事には絶対に不可欠だと思います。子どもたち、お父さんやお母さんも含めて、今後必要なことは忍耐と努力です。これから先、人工知能が人間の仕事を奪って行くなかで、クリエイティブなことは人間にしかできません。そのクリエイティブな仕事を取るためにも、歯を食いしばって頑張る。人工知能に握手会はできないわけです。これを読むと1冊目につながるかもしれませんが、どのようにこの時代を生きるかのヒントが隠されています。

垣花正 あなたとハッピー!
FM93AM1242 ニッポン放送 月-金 8:00-11:30

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