地域猫のエサ場に子ダヌキが! 野生動物を見た小学生の気持ちの変化

【ペットと一緒に vol.165】by 臼井京音

今回は、2ヵ月前に紹介した「タヌキの赤ちゃんが自宅前に!」というエピソードの続編をお届けします。筆者が娘とともにタヌキについて調べてみると、保護したタヌキをほんのひとときのペットとして育て、里山に返す活動をしている人々がいることも知りました。

 

マンション敷地内で再びタヌキに遭遇

自宅マンションの階段にうずくまっていた子ダヌキを発見してから、筆者はタヌキのことが気になって仕方がありませんでした。「子ダヌキは元気になったかな? 兄弟姉妹と合流しているのかな?」と、いつも気になって、マンション裏口に通じる緑地に目をやる日々が続いています。

すると、子ダヌキ騒動から20日後、ついにタヌキに遭遇しました。

急いで撮影したのでピンボケですが、タヌキです

マンション内に造られた小さな公園のような緑地スペースを、ふわふわのタヌキが平然と歩いていました。20mほど離れていましたが、被毛は生えそろっていて疥癬ではなさそうです。

筆者は階段の踊り場で写真を撮り終えて、スマホをポケットにしまおうと下を向いたところ、5mほどしか離れていないところにも、何とタヌキがいるではありませんか。階段横の柵越しに、筆者の顔をじーっと見つめています。2頭は先日遭遇した子ダヌキの両親でしょうか?

すぐ近くのフェンス越しに筆者と対面

筆者は目の前のタヌキの動画を撮るためにスマホを向け始めましたが、とくに慌てて逃げようとはしません。10秒位スマホを見つめると、トコトコと歩きながら緑地の斜面を上り、フェンスをくぐると隣接する緑地へと姿を消しました。

 

子ダヌキを保護した人々のエピソードに触れて

先日の子ダヌキ騒動を記事にしたあと、筆者の友人から、千葉県での子ダヌキ保護のエピソードが寄せられました。筆者と同時期に友人の知人が子ダヌキを保護したそうで、抱っこをしてマイカーに載せて動物病院に運んだものの、疥癬に感染していて脱毛がひどく、かなり衰弱していて感染症への罹患が疑われたため、安楽死をすすめられたとのこと。

さらに、子ダヌキを抱っこした人にも疥癬がうつってしまい、その治療や自動車内の消毒などに予想外の時間と手間を要したそうです。「野生動物との共存は、なかなかむずかしい問題ですよね。知人から相談された私も何とか力になってあげたいと思いましたが……」と、トリマーである筆者のその友人は肩を落とします。

2019年7月に筆者が暮らすマンションの階段にいた子ダヌキ

そのエピソードを聞いて、切ない気持ちになり落ち込んでしまった筆者は、タヌキを保護した人のSNSや動画投稿がないかを、インターネットで調べ始めました。すると、子ダヌキを自宅で育てた人の投稿をいくつか見つけました。

ちょうど筆者の小学生の娘も「ねぇ、他に子ダヌキを保護した人はいないの? 野生の子ダヌキは飼えないの?」と、筆者に質問の嵐を浴びせかけていた時期。適切に答えられる知識を持ち合わせていなかった筆者は、娘と一緒に、まだ目も開かない子ダヌキに哺乳瓶でミルクをあげる様子の動画などを夢中で見ました。

動画は何篇も、長期にわたって撮られていました。疥癬の治療をするため動物病院に通い、感染症を予防するための混合ワクチン接種などを行い……。そうして育て上げた子ダヌキを、野生に戻すために裏山に放すものの帰って来てしまい……。「なるほど、こんなふうになるんだね」と、娘と動画を見ながら多くのことを学びました。

放す場所は水が近くにあるところが最良とのこと(写真:photoACより)

さらに調べていると、ちょうど小学生向けの『すくすく育て! 子ダヌキ ポンタ 小さな命が教えてくれたこと』(2017年/学研)という書籍の存在を知りました。

自宅に届いた本を、娘は熱心に読み進めていました。最終章は夕食を作る私に朗読をしてくれたのですが、筆者も思わず涙してしまい、娘も終盤は涙声になっていました。「ポンタ、野生に戻れたんだ。でも、赤ちゃんのころから育ててずっと一緒にいたのに、いなくなったらさびしいよね」と。

福岡県で保護された子ダヌキのノンフィクション

ネコのエサを食べる子ダヌキ!

動画を見たり、ポンタのノンフィクションを読んだりしたことで、筆者の娘の意識も変わって行ったようです。

「私、子ダヌキのうんちにいた寄生虫をナマで見ちゃってびっくりしたよ。マンションにいた子ダヌキちゃんは毛も薄くて、見るからに病気って感じだったでしょ? うちの犬たちに寄生虫や病気がうつったら怖いし、タヌキが近くにいるのが不安だった。でも、犬や猫と暮らしている家でも、工夫しながら育てたりしているんだね」と。

寒くなると冬毛に生え変わるそうです(写真:photoACより)

そしてつい最近、筆者と娘は、2匹の子ダヌキを偶然見かけました。筆者がタヌキを目撃していたのはいずれも夕方や夜だったのですが、それは14時ごろのこと。駅から徒歩5分の、住宅が立ち並ぶエリアの一軒家の庭で、野良猫のために用意されたエサを子ダヌキが食べていたのです。すぐ近くで、半年前に生まれた子猫3匹が子ダヌキの様子を見守っていました。

「わっ! タヌキだよ!」と、筆者が声を挙げてしまったせいか、筆者や娘のほうを一瞬チラッと見たのち、子ダヌキたちは一軒家の裏手に走り去りました。被毛はふさふさしていたので、疥癬には感染してないようです。

猫にエサをあげている一軒家の住人は、タヌキが来ることに気づいているのでしょうか。「『子猫たち、よく食べるなぁ』と思ってるだけかもよ」と、娘は笑います。

いずれにしても、この地域がまだ宅地として拓かれる前から、ここで生きて来た身近な野生動物であるホンドダヌキの存在を身近に感じながら、そっと見守って行きたいと思います。筆者が2ヵ月ほど前に遭遇した子ダヌキが元気になっていることも、願い、信じながら。

ペットと一緒に

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