京アニ放火事件、裁判以外に必要なこと〜青葉容疑者が大阪から京都の病院へ転院

ニッポン放送「ザ・フォーカス」(11月14日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。京アニ放火事件に関して必要な捜査について解説した。

京アニ放火殺人事件・青葉真司容疑者が転院 転院先の京都市内の病院に到着した青葉真司容疑者。青いタオルケットに包まれ、表情は見えなかった =2019年11月14日午前10時17分、京都市内の病院  写真提供:産経新聞社

未逮捕は、決して警察が生ぬるいからではない

京都アニメーションの放火殺人事件で殺人などの疑いで逮捕状が出ている容疑者の男が14日、大阪府内の病院から京都市内の病院に移った。病院を移ったのは、殺人などの疑いで逮捕状が出ている青葉真司容疑者(41)。

森田耕次解説委員)京都アニメーション放火殺人事件。7月18日、午前10時半ごろでした。宇治市のアニメ制作会社、京都アニメーションの第1スタジオから火が出て、建物のなかにいた社員70人のうち36人が死亡、33人が重軽傷を負いました。京都府警はさいたま市の青葉真司容疑者41歳の身柄を確保しました。ガソリンを撒いて放火したとして、殺人や現住建造物等放火などの疑いで逮捕状を取りましたが、その青葉容疑者は大阪府の病院から京都市内の病院へ転院しました。青葉容疑者は全身にやけどを負って京都市内の病院に当初搬送されたのですが、高度な治療が必要ということで事件から2日後にヘリコプターで大阪府内の病院に移送され、皮膚移植などの主な治療を終えたということで、京都市の病院に戻りました。青葉容疑者は皮膚移植の手術を重ね、8月上旬にはほぼ命に別状がない状態になっていました。食事や会話、体を動かすリハビリも始まっています。今月の8日、京都府警の任意の事情聴取を受け、そのときには「いちばん多くの人が働いている第1スタジオを狙った。多くの負傷者を出せそうだと思ったからだ」と話しています。ハンマーや複数の包丁を持っていたのですが、包丁については「犯行を邪魔する人がいたら襲うつもりだった」としています。青葉容疑者は「道に外れることをしてしまった」と述べている一方で、容疑をだいたい認めて「どうせ死刑になる」とも話しています。そして「小説を京アニに盗まれた」という供述もしています。聴取は病院でということで、勾留に耐えられるようになる程度まで回復するのを待たなければいけません。

佐藤)私自身も逮捕歴、裁判で有罪になった経緯がありますから、「無罪推定の原則」はよくわかっています。すなわち、裁判で最終的に刑が確定しない限りは無罪が推定されるということなのですが、これは本当に酷い話です。まだ逮捕しないのは、決して警察が生ぬるいからではありません。逮捕すると23日間しか勾留の時間がないので、そのときにきちんと調べて立証する必要があります。そのためには、その前の段階で任意で十分な事情聴取をしてどういう供述をするかということを捉えようとしています。

森田)被害者も多いですしね。

白煙を上げて燃える京都アニメーションのスタジオ=2019年7月18日午後0時12分、京都市伏見区 写真提供:産経新聞社

責任追及とは別の調査チームが必要

佐藤)それから、裁判で日本には「永山基準」がありまして、永山則夫という死刑囚(永山則夫連続射殺事件)が一審で死刑、二審で無期懲役になったのですが、最高裁で差し戻しになりました。そのときの基準は3人以上殺害した場合に原則として死刑というものです。青葉容疑者が「どうせ死刑になる」と言っているというのは、客観的な根拠のある話です。しかし、裏を返すと刑事裁判というのは刑事責任を負わせる範囲で立証するものですから、3人の立証ができればこれは死刑になります。そうすると、本当の心の闇は何で、「小説を盗まれた」と妄想に近いようなことを言っているのですが、どういう経緯で行ったのかという真相究明は、捜査機関ではできないと思うのです。こういうことの再発を防止し、テロ対策の観点でもこの事件から教訓を得なければいけません。責任追及とは別の調査チームをきちんとつくって、精神科医や犯罪心理学の専門家、テロの専門家を用意し徹底的に容疑者から事情を聴取して、それを分析し、今後の再発防止に活かす必要があると思います。

森田)裁判だけではなく、そういったところも必要になってくるのですね。

ザ・フォーカス
FM93AM1242ニッポン放送 月-木 18:00-20:20

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