ざわつきやまない日産の周辺

「報道部畑中デスクの独り言」(第171回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、2020年も波乱の幕開けとなった日産の新体制について—

日産は2020年も波乱の幕開けとなった(横浜の日産本社)

日産自動車周辺のざわつきが止まりません。内田誠社長の新体制が発足したのは昨年(2019年)12月1日のことでしたが、それもつかの間、トロイカ体制の一角を担うはずだった関潤副COOが退任、新体制に早くも暗雲が立ち込めました。

年末には前会長カルロス・ゴーン被告の“国外逃亡”、記者会見では日産による「陰謀説」を唱え、西川広人前社長ら元幹部などを名指しで批判。あわせて日本の司法制度にも批判の矛先を向けました。

そして、イギリスの新聞「フィナンシャル・タイムズ」は1月13日、複数の日産幹部がルノーとの企業連合解消の事態に備えていると報じました。これについて日産は「アライアンスの解散は検討していない」と否定する声明を出しましたが、「火のないところに煙は立たず」…社内で「独立派」の不満がたまっていることを示したものと言えましょう。

昨年12月には新体制が発表されたばかり(2019年12月2日撮影)

以前お伝えしましたが、20年以上にわたって続いて来た提携関係の解消…いわば「熟年離婚」は困難と考えます(統合していないのですから、いわば「同棲解消」でしょうか)。これまでの「研究開発」「生産技術・物流」「購買」「人事」の提携を白紙にした場合の損失を天秤にかけると、およそ割が合わないと思うからです。

自動車業界では販売台数について、いつしか「1000万台クラブ」が生き残りの条件のように言われるようになりました。この「1000万」という数字は、2016年に三菱UFJモルガン・スタンレー証券が発表したレポートがきっかけとされています(ただ、この見方は時代の流れとは言え、クルマの個性が失われることにつながると感じるため、懐疑的ではあるのですが)。

日産とルノー、三菱自動車を含めた年間の世界販売は、確かに1000万台を超えています(2018年は計1075万6875台)。しかし、日産単体だと年間560万台ほど(2018年)。もし、日産が提携を解消したらどうなるのか。

現代では500万台〜600万台の企業は、1000万台規模のグループに比べてスケールメリットで不利であるだけでなく、100〜200万台の規模のメーカーに比べると、きらりと光る個性を出しにくいという中途半端な位置にあり、利益率でもあまり振るわない状況にあります。それゆえ次世代車両の開発費用がかさむなか、一気に競争力を落とし、新たな買収の対象として漂流する可能性があります。

日産・内田誠社長

一方で日産は自動運転、電動化など、技術はいまだ確かなものがあります。その技術を目当てにする勢力も現れて来るでしょう。あくまでもケーススタディですが、その勢力はかつてのような銀行団なのか、新たな自動車メーカーになるのか?

国内の自動車市場では、トヨタ自動車がダイハツ、日野、マツダ、スバル、スズキとあらゆる形で手を結び、“オール・ジャパン”のような体制をつくり上げつつあります。ホンダは日立製作所とともに傘下の部品メーカーを統合しましたが、日産と日立はその出自から、かつては深い関わりがありました。

そうしたグループの一角と組むような事態となるのか? あるいは中国資本が手を差し伸べる可能性もあるでしょう。いや、自動車業界だけではなく、IT企業が食指を伸ばすことも考えられます。

そのときはおそらく「IT企業が自動車産業を飲み込んだ」…その象徴として歴史に刻まれることになるでしょう。100年に1度の大変革の時代、どんなことが起きても不思議ではありません。

ARIYAコンセプト 日産は2020年度には新車攻勢に出るという

いずれにしても、20世紀末に1度は瀕死の状態に陥った企業。「独立派」とされる人々が、もしもトヨタと並ぶ「ビッグ2」の一角を謳歌していたころを夢見ているとしたら、それは厳しいと言わざるを得ません。

ユーザーの立場から言えば、魅力的なクルマをつくってくれれば、会社の形態などどうだっていいというのが多くの声でしょう。2020年度には5車種の新型車を投入すると言われていますが、まずはそれに注目です。これまでもお伝えした通り、日産は数々の名車を輩出して来ました。

実はルノーとの提携後も、当初はフェアレディZやGT-Rの復活、初代ティアナ、2代目キューブ、3代目マーチなど、挑戦的なデザインで人気を博したのは事実。そこはゴーン時代の「功」の部分と言えます。そうした時代がまたよみがえることになるのか。多くのユーザーがその行方を見守っています。(了)

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