新型コロナウイルス感染拡大で変わるメディアの取材

「報道部畑中デスクの独り言」(第180回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、新型コロナウイルスの影響によるメディア取材の変化について—

春闘の集中回答日 金属労協の記者会見はインターネットで中継された(3月11日撮影)

新型コロナウイルスによる感染拡大は、私どもメディアの取材にも少なからず影響を与えています。記者会見が、資料配布(個別取材)に変更になったり、会見が実施される場合でも会場によってマスク着用や出席者の限定、記者の間隔を空けるなどの対策がとられるようになりました。

また、インターネット中継による記者会見も行われています。2月に小欄でお伝えした日産自動車の新車発表会も、インターネットによる試みでした。

「本日の会見は初めての試みとして、Webでの同時中継を実施しています」

3月19日に開かれた日本自動車工業会の記者会見でも、司会の広報担当から冒頭にこのようなアナウンスがされ、例年行っている国内四輪車の需要見通しの公表は見合わせとなりました。

日本自動車工業会によると、この日の参加者は約50名で通常の半分ほど。会見者席のバックには、プロジェクターでWebによる出席者とのやり取りが映し出されました。会場にいた私は、やり取りそのものに違和感はありませんでしたが、主催者側は「うまくいったか」と気にしている様子でした。

春闘の集中回答日 妥結額を示すホワイトボードもインターネットで映し出された(3月11日撮影)

さて、会見の内容です。豊田章男会長(トヨタ自動車社長)からは終始、厳しい言葉が並びました。

「生産・販売面に大きな影響が及んでいる。お客様への納車は遅れており、ご迷惑をおかけしている」

販売状況について、特に中国では各社軒並み、1月は20%、2月は80%(前年同月比)という大幅な減少をみせています。日本国内においても1月〜2月は10%減少にとどまっているものの、3月の減少幅は見通せず、生産調整が始まった段階だということです。その後、トヨタ自動車は国内の5つの工場を、4月3日から最長15日まで稼働停止することを発表しています。

また、2008年の「リーマン・ショック」との違いについても言及しました。それは、世界のクルマ市場のけん引役がいないこと…「リーマン・ショックのときは中国が全世界をけん引していた。今回それが期待できない」。もはや中国市場を抜きにして語れない、自動車業界の実態が改めて浮き彫りになりました。

日本自動車工業会の記者会見 記者はマスク着用、1社1名に限定された(3月19日撮影)

今後については「現時点で具体的な影響を見通すことは難しい」としながら、「受注販売が下がって行く傾向のなかで、今後、生産にも影響が出ることは間違いない」と厳しい認識を示しました。そこには75%以上が外注部品に頼っているという産業構造も背景にあります。登録についても今期より来期の影響が大きいとみられ、新年度以降もかなりの時期、尾を引きそうです。

一方、今回の事態は、昨年(2019年)から始まった働き方改革にも一石を投じる形になりました。感染拡大の対策として、各業界ではテレワークや時差出勤などが推奨されていますが、自動車産業は生産現場を抱えるため、厳しい部署も多々あります。

自ずと事務や開発分野などで展開されることになりますが、やはり従業員が世界で万単位に及ぶ自動車メーカー。関係者によると、テレワークを進めるにも通信容量が不足していたり、会社のパソコンがモバイル用途として機能するかなど、実態は難しいということです。

豊田会長も「今回、より課題がわかって来た」と話します。逆に、こうしたところに新たなビジネスチャンスがあるのかもしれません。

記者会見に臨む日本自動車工業会・豊田章男会長(トヨタ自動車社長)

そして、CASEと呼ばれる次世代自動車開発に遅れが出るのではないかという懸念も指摘されていますが、これについて豊田会長は「時間軸が違う」と述べ、方向性に大きな影響はないという認識を示しました。裏を返せば、こうした状況のなかでも開発競争は水面下で進んで行くことになります。

「こういう状況だから仕方がない」ではなく、逆境だからこそ、ここで踏ん張ったところが頭1つ抜け出す可能性がある…「100年に1度の大変革」のなかでの大きなチャンスでもあり、変わらない厳しさでもあります。(了)

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