自動車と通信の融合……オールジャパン体制完成か?

「報道部畑中デスクの独り言」(第181回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、24日に発表されたトヨタ自動車とNTTの資本提携について—

都内のホテルで開かれたトヨタ・NTTの提携会見 インターネットでも中継された

新型コロナウイルスの感染拡大が世間を賑わせているなか、3月24日、日本を代表する企業であるトヨタ自動車とNTTの資本提携が発表されました。

トヨタ自動車の豊田章男社長は19日の日本自動車工業会の記者会見で、新型コロナウイルスがCASEと呼ばれる次世代自動車開発に与える影響について「時間軸が違う」と述べ、方向性に大きな影響はないという認識を示していました。今回の発表はそれを裏付けるもので、開発にいささかの遅滞も許されないという強い意志が感じられました。

今回の提携、キーワードとなるのは「スマートシティ」です。スマートシティとは、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)技術をエネルギーや生活インフラの管理に用いることで、生活の質の向上などを目指す都市のこと。

トヨタは今年(2020年)1月、モノやサービスがつながる街「WovenCity(ウーブンシティ)」を静岡県裾野市につくると表明しましたが、これがまさにスマートシティにあたります。

年末に閉鎖される予定のトヨタ自動車東日本・東富士工場の跡地を利用するもので、世界の企業や研究者などに実証への参加を呼びかけていますが、こうしたなか、NTTという通信業界の国内最大手とタッグを組むことになりました。

「トヨタとNTTがスマートシティの社会基盤を一緒につくり上げて行く。これを東富士から世界に広げたい」

NTTの澤田純社長は、提携の意義をこのように強調しました。NTTとトヨタはすでに3年前からコネクテッドカー=つながる車の分野で提携を始めていますが、これを街づくりにまで広げ、約2000億円という相互出資も行います。

韓国のサムスン電子や、中国のファーウェイなどとの国際競争が激しくなるなかで、トヨタの目指す街づくりは、NTTにとっても競争力を高める絶好のフィールドというわけです。

トヨタの豊田社長はNTTとの提携について、「未来を創造するための投資」と位置づけ、「社会システムに組み込まれたクルマを最も上手に活用いただけるパートナーがNTT。提携は必要不可欠であり、必然であったとすら思っている」と語りました。

NTT・澤田純社長

一方、会見ではこうも語っています。

「従来の商品開発は、ハードとソフトの一体開発が基本だった。しかし、ソフトの進化のスピードがハードを上回る状況が出て来ると、一体開発では商品の性能や価値向上が、進化の遅いハードの制約を受けるという課題が顕在化して来た」

この発言はトヨタでさえも、自動車単体で生き残って行くには限界があるということを、改めて感じさせるものです。IT企業、特に海外勢に飲み込まれてしまう危機感から、悩み抜いた上で出した答えが「街づくり」というプラットフォーム=社会基盤だったと言えます。

「クルマや住宅が先にあって、それをつなげて行くという従来の発想から、上位概念は人々が暮らす街であり、そこにクルマや住宅をつなげて行くという発想に転換する」…豊田社長はクルマがプラットフォームの一部になって行くことを認めました。“上位概念”のプラットフォームを手に入れることが、生き残りへの道と判断したようです。

トヨタはこれでNTT・KDDI・ソフトバンクという、日本の大手通信3社と手を組んだことになります。KDDIは源流の1つである日本高速通信の時代からトヨタが出資し、現在も主要株主です。

また、ソフトバンクとはおととし(2018年)、モビリティ・サービスを開発する「モネ・テクノロジーズ」を共同出資で設立。2023年の商品化を目指しています。2018年10月の発表は両社の副社長の会見の後、豊田章男社長と孫正義社長のトークセッションという形でした。

一方、今回はオーソドックスな会見形式。「いろいろやって来た結果、いままさにこのときが来た」という豊田社長の発言は、今回の提携が「本命」であり、満を持したものであることを印象付けました。

そして、アメリカのGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)について、澤田社長が「対抗という意識はある」と述べると、豊田社長は「日本もなかなかやるなという対抗はウェルカムだ」と応じ、世界基準構築への意欲を示しています。

トヨタ自動車・豊田章男社長

自動車業界からの視点では、いよいよ次世代自動車開発で“オールジャパン体制”が確立されたように見えます。

豊田社長は「NTTは“国家”そのもの」と持ち上げた上で、「トヨタ1社ではNTTはこうして動いてくれなかったのでは。多分、私のバックに連合軍が見えているのではないか」と語ります。これまで国内の自動車メーカー(提携の形には差はあるものの)などに仕掛けた“仲間づくり”への自信がにじんでいます。

今回の提携に関して、日本の大手通信3社と手を組んだ“巨艦”の前には、「この指止ーまれーぃ」(豊田社長)の指にとまるか、海外に活路を見出す以外に手はないことを意味しているのではないかと思います。とりわけ、ホンダ、日産&三菱自動車連合にとっては脅威であり、今後どう動くのか注目されます。

握手するトヨタ自動車・豊田章男社長とNTT・澤田純社長

いや、もはや自動車業界は業界内だけでなく、プラットフォームを舞台に他業種も巻き込んで、再編のステージに入っていると言えるでしょう。将来、自動車業界……いや、日本、世界の勢力図をみるとき、トヨタとNTTの資本提携が1つの分水嶺であった……そう感じる日が来るのかもしれません。(了)

関連記事(外部サイト)