いまこそ正しく知るべき、ウイルスの恐怖

【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第817回】

ニッポン放送「Tokyo cinema cloud X」

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

世界中で猛威を振るい、パンデミックを巻き起こしている新型コロナウイルス。映画の世界では、感染症やウイルスの恐怖を描いた作品が数多く存在します。

そこで今回は、学ぶべき要素が隠されている!? パンデミック映画をご紹介します。

※写真はAmazonより

医療崩壊、買い占め、ロックダウン…映画はすでに、この“最悪の状況”を予見していた

まずは『コンテイジョン』。スティーブン・ソダーバーグ監督が豪華キャストで描いたパニック・スリラーの超大作。日本国内での感染が拡がり始めたころから、「まるで新型コロナによる惨状を予言していたような映画」と騒がれている1作です。

香港出張から戻って来たアメリカ人女性が体調不良を訴え、2日後に死亡。時を同じくして、香港、ロンドン、東京でも同様のケースが起こっていた。

接触感染により数日で命を落とすという謎の新型ウイルスは、驚異的なスピードで世界中に拡大。見えないウイルスの脅威に、人々はパニックに陥り、その恐怖のなかで生き残るための道を探って行く…。

コロンビア大学感染症専門医チームが医療監修を務め、科学的な考証とシミュレーションに基づいて医療現場の現実をリアルに描いた本作。現在、世界が直面している危機と重ね合わせながら観ると、「いま、私たちはどう行動すべきか」というヒントが随所に散りばめられています。

マット・デイモンをはじめとした出演陣が新型コロナウイルス対策を呼びかけるメッセージビデオがYouTube上で公開されたり、スティーブン・ソダーバーグ監督が、ハリウッドでの経済活動再開に向けた陣頭指揮を執ることが発表されたりしている動きを見ても、いかにタイムリーな映画か、理解できるでしょう。

マット・デイモンはビデオメッセージで、私たちに語りかけています。「『コンテイジョン』は映画ですが、新型コロナウイルスは現実です」。

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続いては、韓国映画から『FLU 運命の36時間』。鳥インフルエンザH5N1をモデルに、突然巻き起こった感染症の恐怖と、それに立ち向かう救急隊員の姿を描いたパンデミック・アクションです。

ある日、鳥インフルエンザH5N1の変種ウイルスが猛威をふるい、その拡散を阻止するため、町が封鎖される。致死率100%と言われるウイルス感染の恐怖を目の前にして、人々は次第に暴徒化。まるでゾンビのように理性を失って行く。

正義感あふれる救急隊員のジグは、愛する人の娘を守るため、たった1人、町に取り残されたすべての人を救おうと立ち上がるが…。

36時間で感染者を死に至らせるという設定だけに、展開が残酷かつスピーディー。それだけに、ウイルスの恐ろしさがリアルに伝わって来ます。

同時に、自分勝手な行動がいかに他人を巻き込み、不要な争いや死を拡大させるか…という、教訓とも取れるメッセージが込められている1作です。

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1匹のサルが持ち込んだウイルスにより、全米が滅亡の危機にさらされて行く恐怖を描いたパニック・スリラー『アウトブレイク』。本作もまた、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、再注目されている映画です。

アフリカ奥地で、無数の住民たちが正体不明のウイルスに感染。皮膚が爛れ、身体中の穴という穴から出血して死んで行った。現地調査に赴いたアメリカ軍医学研究所のリーダー、サム・ダニエルズは、ウイルスの謎を懸命に解き明かそうとする。

しかしその後、同じ症状の患者がカリフォルニアにも出現。爆発的な速度で蔓延する殺人ウイルスは、一気に全米をパニックに陥れる…。

ウィルスの潜伏期間と発症後の致死との時間差による、いわゆる“封じ込め”の難しさや、接触感染と飛沫・空気感染の違い。そして、発病者のウイルス検査やワクチン精製のための抗体確保の困難さ。

映画を通じて、パンデミック対策や感染症についての科学的知識を得ることができるでしょう。

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日本でも、ウイルス感染をテーマにしたパニック映画が、10年以上前に制作されていました。それが、主演に妻夫木聡と檀れいを迎え、瀬々敬久監督が手がけた『感染列島』。

市立病院で働く救命救急医の松岡剛のもとに、新型インフルエンザに感染したと思われる急患が運び込まれて来た。しかし、あらゆる治療を施しても効果は出ず、患者は死亡。やがて医療スタッフや入院患者にも感染が発覚し、病院内はパニック状態に。

医師や看護師らはWHO(世界保健機関)から派遣された感染症の専門家・小林栄子とともに“悪魔のウイルス”と対峙するが、打つ手がないまま、医療崩壊が現実のものとなり、やがて感染は日本列島全土に拡がって行く…。

治療の順番を待つ人々の長い列。人工呼吸器が足りなくなり、救える命にさえも手を尽くせない状況。そして自らの感染の恐怖を抑え込み、職責を果たそうとする医療従事者たちの姿。どこを切り取っても、いまメディアで叫ばれている「医療崩壊危機」を垣間見ているような錯覚に陥ってしまいそうになります。

ちなみに、劇中に登場するウイルスは“Blame”と呼ばれていますが、これは「神の責め苦」という意味があるとのこと。

果たして「ウイルスと闘い、打ち勝つ」ことだけが、解決策なのだろうか。感染症に対する価値観さえ根こそぎ覆すメッセージが含まれていることにも注目してほしい作品です。

 

<作品情報>

■コンテイジョン(2011年日本公開)
Blu-ray&DVDリリース中
Netflix、Amazon Prime、U-NEXTなどで配信中
監督:スティーブン・ソダーバーグ
脚本:スコット・Z・バーンズ
音楽:クリフ・マルティネス
出演:マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウ、ケイト・ウィンスレット、ブライアン・クランストン、ジェニファー・イーリー、サナ・レイサン、エリオット・グールド
原題:Contagion

■FLU 運命の36時間(2013年日本公開)
Blu-ray&DVDリリース中
Amazon Prime、U-NEXT、Huluなどで配信中
監督:キム・ソンス
出演:チャン・ヒョク、スエ、パク・ミナ、ユ・ヘジン、マ・ドンソク
原題:?? THE FLU

■アウトブレイク(1995年日本公開)
Blu-ray&DVDリリース中
Amazon Prime、U-NEXTなどで配信中
監督:ウォルフガング・ペーターゼン
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演:ダスティン・ホフマン、レネ・ルッソ、モーガン・フリーマン、ケヴィン・スペイシー、キューバ・グッディング・Jr.、ドナルド・サザーランド、パトリック・デンプシー
原題:Outbreak

■感染列島(2009年公開)
Blu-ray&DVDリリース中
Amazon Prime、U-NEXTなどで配信中
監督・脚本:瀬々敬久
音楽:安川午朗
主題歌:レミオロメン「夢の蕾」
出演:妻夫木聡、檀れい、国仲涼子、田中裕二(爆笑問題)、池脇千鶴、カンニング竹山、金田明夫、光石研、キムラ緑子、嶋田久作、正名僕蔵、ダンテ・カーヴァー、馬渕英俚可、小松彩夏、三浦アキフミ 、夏緒 、太賀、佐藤浩市(友情出演)、藤竜也

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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