看護師・僧侶 玉置妙憂〜僧侶になるきっかけとなったのはご主人の美しい“死にざま”見て

黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に看護師・僧侶の玉置妙憂が出演。看護師、また僧侶になった経緯について語った。

玉置妙憂

黒木)毎日さまざまなジャンルのプロフェッショナルにお話を伺う「あさナビ」、今週のゲストは看護師であり僧侶の玉置妙憂さんです。現在は看護師であり僧侶でいらっしゃるのですが、もともとは法律事務所で働いていらしたのですよね? 何をきっかけに看護師免許を取られ、そのあと僧侶になられたのかをお話しいただけますでしょうか?

玉置)その都度のライフイベントに応じてやってしまったという感じです。最初は子供ができたのですけれども、その子が重いアレルギーでした。素人なものですから、このままでは大きくできないなと思っていました。この子を20歳にするために知識を得ようと思って、看護師になりました。

黒木)息子さん専属の看護師になろうと。

玉置)そうです。彼を成人させるためには、私に知識と技術が必要だと思って勉強しました。

黒木)お子さんにとっては、とても心強いですね。

玉置)心強いのか迷惑なのかわかりませんが。でも、子供の病気は体が大きくなると段々よくなり、私自身も落ち着いて対応できるようになりましたので、専属ではなく、働けるようになりました。

黒木)いまも看護師としてやっていらっしゃるということですけれども、そこからまた僧侶に。

玉置)看護師になって30数年になりますが、そうこうしているうちに主人が癌になって、亡くなったのです。彼を在宅で看取ったのですけれども、いままで自分が大学病院の外科病棟で見ていた亡くなり方と違いました。それで私のなかで価値観が変わったのです。

黒木)玉置さんのお書きになった本を読ませていただくと、ご主人の死にざまが美しかったということ、それが1つのきっかけになったと書かれてあったのですけれども、それは具体的にどういうことだったのでしょうか?

玉置)現代医学というのは、最後の最後まで治療して頑張る方向に軸足があるのです。体のなかに最後まで点滴がつながっているということは、よくご覧になる風景だと思います。点滴によって大抵は浮腫(むく)んでいるのです。主人が「家で」と決めたときに、「飲めなくなったら飲まない。食べられなくなったら食べない」と決めました。もちろん、在宅の医者はついていましたけれど、点滴もしなかったのです。ですから浮腫みは1つもなくて、その姿は綺麗だったのですよね。潔いというか、あっぱれというか。それを見たときに、選択肢を持つべきだなと思ったのです。

黒木)そこから出家しようということに。

玉置)ただ、そのときに「何もしないで見ている」ということは、すごく大変なことなのです。私たちは「やるだけやってダメだった」と思えるので、何かする方が楽なのです。やらないでずっとそれを見守るということは、心の面できついわけです。「では、それは何が支えるのだろう」と考えたときに、私は仏教というものの考え方が支えになったのです。

黒木)仏教に出会われたきっかけはあったのですか?

玉置)遥か昔のことです。私が大学生のころですので、30年も40年も前の話です。当時、喜多郎さんの音楽と『シルクロード』が流行っていて、感化されたときに、「多分、私の前世は中国のお坊さんだったのだろうな」なんて思ったときがあったのです。若気の至りで。そのことはもう忘れていたのですけれど、主人を看取って、その死にざまを見た途端に、その想いが戻って来て、「俗世での仕事は終わったので、原点回帰で出家しよう」と思ったのです。

黒木)お子さんたちはどういう反応でしたか?

玉置)後日談なのですが、「あのときは反対もしないでわかってくれて」と言ったら、「何を言ってもやる人だから、諦めていたんだよ」と言われました。

黒木)なにせ看護師になったくらいですからね。よくお母さんのことをわかっていらっしゃいますね。

玉置妙憂

玉置妙憂(たまおき・みょうゆう)/看護師・僧侶

■東京都中野区出身。看護師であり僧侶。一般社団法人介護デザインラボ代表。
■専修大学法学部を卒業後、法律事務所に勤務。
■長男が重度のアレルギー症状をもっていたことをきっかけに「息子専属の看護師になろう」と決意。看護学校で学び、看護師、看護教員の免許を取得。
■看護師として働き始め、その後、看護学校で教鞭をとっているころ、カメラマンだった夫の癌が再発。
■夫は「がんを積極的に治療しない」方針をかため、自宅での介護生活をスタート。夫の自然死を看取ることになるが、その死にざまがあまりに美しかったことから開眼。家族と職場に出家を宣言し、高野山真言宗にて修業をつみ僧侶となる。
■現在は現役の看護師としてクリニックに勤めるかたわら、一般社団法人「大慈学苑」を設立し、患者本人や家族、医療と介護にかかわる多くの人々の心を穏やかにするべく、院外でのスピリチュアルケアに力を注いでいる。
■また子世代が親の介護と看取りについて学ぶ「養老指南塾」や、在宅での看取りとスピリチュアルケアについて学ぶ「訪問スピリチュアルケア専門講座」を展開しながら、講演会やシンポジウムを開催。
■2020年4月からはニッポン放送「テレフォン人生相談」のパーソナリティも担当。
■著書・最新刊『頑張りすぎない練習-無理せず、ほどよく、上手に休む』(3/19発売)

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