老犬は愛おしい! 急な病気発覚を受け入れながら過ごす大切な日々

【ペットと一緒に vol.202】by 臼井京音

ニッポン放送「ペットと一緒に」

筆者の愛犬は15歳3ヵ月。元気そうに見えていましたが、たまたま行った血液検査でいくつもの病気が発覚して驚くと同時に、愛犬と過ごす時間が残り少なくなって来たかもしれないと心の準備を始めました。

今回は、老犬ならではの愛おしさを感じながら過ごす、筆者と愛犬の日々を紹介します。

フィラリアの抗原検査のついでに血液検査

蚊が媒介する寄生虫のフィラリアによって起こるフィラリア感染症は、最終的には心不全により死亡する病気です。

人間や猫がフィラリア感染症にかかることはほとんどありません。けれども、犬はフィラリア感染症が重症化しやすい動物なので、蚊のシーズンには予防をするのが重要です。

もしフィラリアにすでに感染していた場合、予防薬の投与がかえって犬の体の負担になり危険を伴うことがあります。そのため、フィラリア感染症の予防薬を飲ませる前には、血液を採取してのフィラリア抗原検査が必要です。

めったに同じベッドで寝ない娘犬ミィミィと(左がリンリン)

首都圏在住の筆者は、シーズン初の蚊を見たら、数週間以内に動物病院に行くようにしています。そしてフィラリア抗原検査で愛犬の血液を採取するついでに、健康診断として血液検査を依頼しています。

桜の季節に15歳になった愛犬リンリンを連れて動物病院に行き、獣医師からも「15歳には見えないねぇ〜。元気そうだね」と言われて血液を採取し、「数日後の検査結果で異常がなかったら来院しないで大丈夫です」と言われて帰宅しました。

「靱帯の部分断裂もあったし、もうチョビチョビ歩きになっちゃったね」と、声をかけながら……。

チョビチョビ歩きですが、相変わらず散歩は大好き!

心臓病と膵炎が発覚

数日後、獣医師から電話がかかって来ました。「リンリンちゃんの血液検査の結果なんだけど、心臓、膵臓、腎臓の数値が悪いんですよ。超音波検査などをしたいので、来院してください」と。

電話口で筆者は「ええっ!?」と、思わず声を挙げました。リンリンはその半年前にも血液検査をしていて、異常がなかったからです。

成犬は人間の4〜5倍のスピードで、肉体年齢を重ねて行きます。飼い主からすれば急激な変化に感じますが、小型犬であるリンリンの半年は、人間の肉体年齢で言えば2年分の加齢に相当するので、この半年間でじわじわと病気が進行していたのかもしれません。

急に暑くなった5月のある日のリンリン

レントゲン検査、超音波検査などの結果、リンリンは心臓の僧帽弁閉鎖不全症と、膵炎、初期の腎臓病であることがわかりました。元気そうに見えるリンリンがこんなにいくつもの病気を抱えていたなんて……。と、しばし唖然とせずにはいられませんでした。

獣医師も、「膵炎だと、吐いたり下痢したりするんですけどね。食欲も旺盛みたいだし、これじゃぁ気づけないですよ」と言ってくれましたが、リンリンの病気に早期に気づいてあげられなかった自分を責める気持ちは小さくなりません。

「ごちそうさま。開けて〜」と、食べる速度が落ちたリンリン。先に食べ終えたミィミィにごはんを奪われるので数年前から別室で食事

処方された薬を眺めながら、「これって、ピモベンダンですか? 去年(2019年)取材した、僧帽弁閉鎖不全症の外科手術ができる横浜市の“JASMINEどうぶつ循環器病センター”で聞いた、2008年以降に使用されるようになった僧帽弁閉鎖不全症の薬かと思いまして」と、か細い声で尋ねる筆者に獣医師は、「そうそう。近年はこうした新しい薬でリンリンちゃんの総合寿命を延ばすこともできるから、そこまで落胆しないで」と励ましてくれました。

確かに、20年以上前、僧帽弁閉鎖不全症で12歳で旅立った筆者の最初の愛犬(ヨークシャー・テリア)が闘病していた時代からは、獣医療も進歩しています。「よし、これを飲んで一緒にがんばろうね、リンリン」と診察台の下を見ると、リンリンは尻尾を少し振りながら、動物看護師に甘えていました。

「昔は、獣医さんにも看護師さんにもニコニコ笑顔でお腹を見せていたんですけど、人に対しての反応も薄くなりましたね」

筆者は思わぬところでリンリンの老いを感じ、再び小声でつぶやいていました。

リンリンを抱っこして、写真のさくらんぼなど季節の香りを楽しむのも日課のひとつ

飼い主が明るく元気でいよう

膵炎の管理のため、脂肪分がさらに低いドッグフードに切り替えて投薬も続けたところ、2週間後の血液検査ではリンリンの膵炎の数値はだいぶ落ち着きました。けれども、心臓と腎臓の病気は完治させられないので、付き合い続けなければなりません。

愛犬が病気だと思うと、つい「大丈夫?」「苦しいの?」と声をかけてしまいます。そんな筆者を、リンリンは強い目力で見つめ返して来ます。

すると筆者は「そうだ。以前のグリーフケアセミナーで学んだとおり、リンリンの変化に対する“グリーフ”を抱えて、私のなかには自責の念や不安な気持ちがあるんだ」と、気づきました。自分を客観視することで、筆者の心は少し落ち着きました。

以前は上れたところにも前足をかけるだけ。でも、困って訴えかけるようなお茶目な表情が愛らしい

飼い主の感情を敏感にくみ取る犬たちは、飼い主と同様のテンションになりがちです。目の前のリンリンと過ごせる時間がたとえ想像していたより短くなったとしても、悲しそうな表情や不安げな様子でリンリンに接するのはやめようと思いました。

最近は「リンリーン、ごはんだよー」と明るく呼びかけると、リンリンは笑顔になり廊下を走って来ます。散歩中は心臓が苦しいのか、よく立ち止まりますが、半分以上抱っこをしてでもこれまでと同程度の距離を散歩するようにしています。

ずっと抱っこしながら歩いていると、子犬時代のリンリンを抱っこで散歩した思い出がよみがえって来ます。老犬は老犬なりに、穏やかで動きがゆっくりで愛おしいと感じることも増えました。

リンリンは寝ている時間が長くなりましたが、その寝息を聞いていると幸せな気持ちに包まれます。

リンリンとの日常のささいなことも大切にしながら、リンリンが少しでも笑顔になれるように、筆者も毎日を笑顔で過ごして行きたいと感じています。

冷感ケットの上で寝息を立てるリンリン

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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007〜2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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